米国の金融緩和縮小は投資家にとって歓迎か
この6月、米国金融緩和の出口戦略をめぐって、金融マーケットでは興味深い動きが起こりました。なぜ、経済学通りに動かなかったのでしょうか? それは、マーケットを動かしているのがヒトだからなのです。


原則、金融マーケットは、当該国の景気動向に左右されます。景気が改善し、その国の金利も上昇すると考えられれば、通貨や株式は買われやすくなります。しかし、短期的に見れば、マーケットが景気動向通りに動かないことも珍しくありません。特に6月は、米国の金融緩和の出口戦略をめぐって、マーケットが右往左往しました。

6月上旬のマーケットでは、「金融緩和縮小が早すぎると、せっかく景気が回復しつつある米国経済を失速させてしまうのでは」という考えが支配的でした。金融緩和縮小の可能性が取りざたされると、米国株も米ドルも売られていたのです。

そして6月中旬のFOMC(連邦公開市場委員会)では、FRB(連邦準備理事会)のバーナンキ議長が米国景気は回復しているとの考えを示し、ついに金融緩和縮小の可能性が高いことを表明したのです。

通常ならば、景気に強気の姿勢が示されたのですから、米国株も米ドルも買われるはずです。しかし結果は、米国株は売られ、米ドルは買われるという「ねじれ現象」が起こったのです。

それまではネガティブ材料だった金融緩和縮小ですが、「米国経済回復の証し」というオーソドックスな考えが台頭してくると、不安と期待が入り交じったマーケットは、「米国株売り、米ドル買い」という投資行動に走ったのです。

この背景には、FOMCメンバーが各自の景気認識を自由に公で発言していたことも影響したと考えられます。以前のグリーンスパン議長の時代には、FOMCメンバーの発言は統率される傾向にあり、これほどマーケットが混乱することもありませんでした。

そして、6月下旬時点では、金融緩和縮小は、「米国株高・ドル高」として歓迎されるようになり、通常通りの動きに戻り始めています。

マーケットを動かしているのは常に人間の心理。短期的には学校で教わった経済学の常識よりも、多くの投資家が考えている方向に相場は動くのです。そして、マーケットの考えや気持ちは移り気です。常識ばかりにとらわれていると、トレードは苦戦するかもしれません。

短期投資は、まさに?空気読みゲーム〞です。私のように普段から空気を読むのが苦手な方は、中長期投資で経済動向をじっくり読み解くのがオススメですね。



崔 真淑(MASUMI SAI)
Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。



この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。