[其ノ四 注目商品 教育資金贈与対決編 暦年贈与 VS. 教育資金一括贈与]融通が利く暦年贈与に軍配
今年4月からスタートした教育資金一括贈与の非課税制度。相続税対策にもなり、祖父母世代の話題となっているが、祖父母の援助に期待したい世代にはどうか。


一括贈与の効果は暦年贈与でも同じように得られる

祖父母が孫に教育資金をまとめて贈与しても贈与税が課されない制度が、今年4月から始まりました。お役所の言葉で言えば、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。

2015年12月31日までは、30歳未満の実の孫1人当たり1500万円までを教育資金として金融機関に預ける場合、贈与税がかからないというものです。

教育資金を支出するごとに領収書を金融機関に提出すれば、お金の支払いを受けることができます。

この場合の教育資金とは、?学校に直接支払われる入学金や授業料、入園料、保育料、受験料や検定料、学用品費、修学旅行費、給食費などと、?学校以外の学習塾や、そろばん・水泳・野球・ピアノ・絵画教室などに支払われる費用に分けられます。そして、?の場合は1500万円まで、?の場合は500万円までが非課税枠です。

これまでは、大学4年分などのまとまった学費を一括で贈与する場合は贈与税が課されました。しかし、孫の年齢が低い場合、祖父母は自分の年齢を考えると、いつまで援助できるかわからないので、あらかじめまとめて渡しておきたいということがあります。

また、2015年1月から相続税の増税が予定されているため、早めに相続税の節税対策をしたい祖父母がこの制度を使って一括で贈与したいというケースもあります。実際、こうしたニーズを捉えた信託銀行などの商品が話題となっています。

「しかし、1年に110万円までは贈与税が非課税で申告不要な暦年贈与を数年間行なうことでも、同じ効果の相続税の節税は可能です」と言うのはファイナンシャル・プランナーの中村宏さん。

「たとえば、子供夫婦に孫が1人いる場合、教育資金の一括贈与を使うと、孫1人につき1500万円まで非課税ですが、金融機関に孫名義の専用口座を作り、教育費の支出ごとに領収書を金融機関に提出して支払いを受けるのが一般的。また、教育費以外の支出は贈与税の課税対象となります。さらに、孫が30歳までに使い切れなかったお金も贈与税の対象になります。つまり、用途が厳密に限られているうえ、手続きに手間がかかり、面倒くさい仕組みになっているのです」

いったん金融機関に預け入れると、その時点で贈与が成立して孫の財産となるので、祖父母からの払い戻しには応じられない、つまり祖父母の将来のライフプランや資金計画に配慮し、無理のない範囲で預け入れる必要があるのも制約になります。

暦年贈与なら教育資金に限らずどんな用途にも使える

一方、暦年贈与の仕組みを使うと、子供夫婦2人と孫1人の合計3人に対して、1年間で1人110万円の非課税贈与ができるため、3人では1年で合計330万円、5年使えば1500万円を超える贈与が非課税でできます。

子供夫婦と孫はもらったお金を個々の名義の銀行口座に預金しておき、用途を問わず必要のつど、そこから支出すればいいのです。孫の教育資金に用途を細かく限定されずに、何に使っても非課税となるのです。

また、これまでも親子や祖父母・孫といった親族同士では、通常必要と認められる生活費や教育費に充てるお金は非課税です。生活の面倒を見る扶養義務の範囲内と考えられ、贈与にはなりません。ただそれは必要な金額を必要なときに渡す場合のみ。大学4年分をまとめて先渡しするようなケースは贈与となります。

「したがって、贈与されるのが小さい子供であれば、その時々に発生する学費や生活費などはそのつど渡すか、暦年贈与。大学の入学金や授業料など、遠い将来発生する教育費については、教育資金を一括贈与して資金をプールしておくのも手でしょう」(中村さん)

暦年贈与と一括贈与の併用も可能ですが、限られた資金の場合、融通が利き手続きが面倒でない暦年贈与に軍配!




【今月の対決立会人】
中村 宏(HIROSHI NAKAMURA)
ファイナンシャル・プランナー

大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。2003年、FPオフィスワーク・ワークスを設立し、個人相談、セミナー講師、執筆などで活躍中。



この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。