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「黒いラーメン」というと思いつくのは、富山のブラックラーメン。しかし、名古屋にも地元民が愛してやまない漆黒のラーメンが存在するのだ! その名も(一体誰が名づけたか)“重油ラーメン”。どんなラーメンなのか、まずは名古屋の「今池 呑助飯店」を訪れてみることにした。

○“重油ラーメン”は「油少なめ」も可

ここ、名古屋市千種区の今池エリアは名古屋有数の繁華街だ。昔ながらの名古屋下町の味を提供する店も多く残っている。「呑助」もそのひとつ。創業は昭和25年(1950)という中華料理の老舗だ。いわゆる“重油ラーメン”の正式名は「伝統の油こってり濃い口ラーメン」というらしい。

ややこしいことにこの「濃い口」はかなり強烈なため、「油少なめ」にもできる。それとは別に、「あっさりしょうゆ系薄口ラーメン」も存在しており、ベースからすべて違うシロモノなのでお間違えのないように! しかし、どちらも価格は一緒。スタンダードは550円でチャーシューメンは700円。懐に優しい。

○伝説「開業以来煮込み続けている」は本当?

この“重油ラーメン”のスープ、名古屋では半ば伝説化している。それは、「開業以来ずっと火を絶やさずに煮込み続けている」というもの。本当かどうか店主の花村武彦さんに尋ねたところ、あっさり「そうですよ。昭和25年の創業からずっと継ぎ足しです」とのこと。さらっと言うけれど、もう60年以上なのである。

当然、定休日(火曜日)も継ぎ足し作業は休めない。「誰かが火の番をする必要があるから、家族旅行に行けないのが辛いですよね」。そう言いながら花村さんは鍋を見せてくれたのだが、黒々とした液体がグツグツと沸騰している。

ここでトンコツ、野菜、玉ねぎ、しょうが、そして重油ならぬ豚の脂を24時間、とろ火のガスで煮込んでいる。「血の池地獄」ならぬ「油の沼地獄」を想像してしまう見かけだ。

しかし、厨房を見ると重油ラーメンのスープはひとつの鍋しかなかった。これで一体どうやって、「濃い口」と「油少なめ」を作り分けるのだろうか。

「それはこうやるんです」と、花村さんはおもむろに沸騰している中心ポイントからスープをすくった。「沸騰している部分は表面の油が拡散して油少なめになるんです。逆に鍋の周辺部分からすくうと濃い口になるんですよ」。なるほど! そして、この長年のエキスが凝縮されたスープに醤油ダレを加えると、呑助伝統の“重油ラーメン”の完成となる。

○見かけ通りのどっしりとしたスープ

完成品をまじまじと見ると、スープの色は真っ黒というよりもかなり濃い系の焦げ茶色。そう、厳密に言うと「ブラック」ではない。だからこそ余計「重油」っぽいと言える。

まずはレンゲを持つ。ふっと深呼吸してスープを一口すする。「ゲゲゲッ。アヅイアヅイアヅイ!!」当然だ。スープの表面には豚の油がびっしり浮いていた。いや、スープをコーティングしているといってもいい。そりゃあ熱いわけだ。

オイルで熱を閉じ込め、冷めにくくするのは札幌ラーメンの専売特許だが、この一品はそれ以上の油であることは言うまでもない。当然、唇はテッカテカ。すさまじい熱さを我慢してスープを1口飲み干す。感想として「実は意外とあっさり!」などと言いたいところだが、到底そんなことは言えない。見かけ通りの強烈な濃さである。

○中毒性に要注意!

ちなみに麺は、「ちぢれているとスープが乗りすぎる」という理由で長年、中太のストレート麺を使用している。確かにスープをがっしり受け止めている。スープの味に疲れたらメンマやチャーシューで箸休め。そうして、なんとか完食できましたというレベルといってもいい。

この一品。“重油ラーメン”という名前そのままの味と食感。女性にもお子様にもオススメの一品とは、なかなかいいづらい。勇気のある方は挑戦してみてほしい、と言うにとどめたい。

しかしである! 実際に店舗へ行き取材をし、周囲を見渡すと開店と同時に常連が集まってくるのだ。ネットで検索してみても、この味にとりつかれた人々による掲示板書き込みが絶えることはない。

しかも、中毒性もあるとのこと。「常連さんも年を取ってくると、油少なめを注文するんですよ。でもやっぱり物足りないみたいで、結局この濃い口に再び戻っていくんです!」そう、花村店主は柔らかい笑顔で語ってくださった。

●information

今池 呑助飯店

愛知県名古屋市千種区今池5-14-8

(OFFICE-SANGA)