優勝した西堀健実(右)と溝江明香(左)。準決勝でも1セットを落としたが、それも織り込み済みと視線は世界へ。

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今年の女子日本一を決める全日本ビーチバレー女子選手権大会(ジャパンレディース)が、せんなん里海公園潮騒ビバレー(大阪府岬町)にて開催された。都道府県代表を含む42チームが参加し、最終日の25日は準決勝、決勝などが行われた。

決勝は草野歩・尾崎睦組(ミキハウス)と、西堀健実(フリー)・溝江明香(アットホーム)組の対戦。試合は西堀・溝江組が終始リードし、草野・尾崎組にストレート勝ち。西堀と溝江はペアとして初優勝を飾った。溝江は個人として、この大会は三連覇。

3位には、保立沙織・宮川紗麻亜組(フリー)が入った。

シード1とシード2の決勝。JBVツアー第2戦で優勝、先週のビーチバレージャパン決勝も危なげなく勝ち優勝、実力の差を見せつけた草野・尾崎。国内では、まだ結果を残していないが、ワールドツアー・ロシア大会では9位に入り調子を上げてきた西堀・溝江。実力的にも日本のトップ2の対決となったが、意外にも初顔合わせのカードだった。

「やるべきことをやるだけ」(西堀)、「自分たちのプレイをするだけ」(草野)と双方ともに、敵に対応するのではなく、自らの持ち味を出すことで勝機があると睨んだゲーム。実力伯仲、接戦の好試合が予想されたが、序盤から一方的な展開となった。

▼ 溝江明香(左)のブロックも好調でディフェンスシステムは、ほぼ完璧だった。サーブも効果的で技術のある尾崎を封じ込めた。



立ち上がりから、西堀・溝江は集中的に尾崎へボールを集める。ポイントで先行すると早くも試合の主導権を握った。今季は草野が日本代表候補に選ばれ、チームとしての練習時間が少なく、コンビネーションに一抹の不安の残る草野・尾崎。いつもなら、先行されても慌てず着実にポイントを重ね、逆転するのだが、今日は尾崎がサイドアウトを切れない。「どうすることもできなかった。カバーできず、尾崎を生かすことができなかった」(草野)と追いつくことさえできない。天候も影響を及ぼした。「ボールが重くて、サーブで(ドライブ)回転が掛けられなかった」と草野は話す。大きな武器である草野のジャンピングサーブの威力は半減。このサーブを軸に攻撃を組み立てるチームの持ち味は削がれた。

攻撃的な草野・尾崎のスパイクもほぼ完璧なディフェンスで、西堀・溝江がことごとく拾い、反撃の糸口さえも掴ませなかった。

作戦が成功したと思われた西堀・溝江だが「相手が勝手に崩れた感じ。自分たちがトライしていたことができただけ」と話す。ともにブロックにつく2ブロック体制を敷く優勝チーム。元来ブロッカーの西堀がレシーバーにも挑戦し、溝江も積極的にブロックに跳ぶ。さらにブロックフェイク(相手の攻撃時にブロックに跳ぶと見せかけてレシーブポジションへ下がる)で軟攻に対応するのではなく、ブロックにしっかり跳んでスパイクに対応する割合が増えている。「ブロックに跳ぶことで、コースを限定したり、相手にプレッシャーを与えることが大事」(溝江)

▼ 準優勝の草野歩。天候などの要因もあったが、実力ナンバーワンのペアが為す術なく敗れた。試合後「今は(西堀・溝江組への)対応策が見つからない」と話した



海外で結果を残し始めた理由は、そこだと言う。強打を中心に攻めてくる海外のチームに対しては、ブロックを積極的に跳ぶことでレシーバーを含めたディフェンスシステムが機能する。溝江のワールドツアーでのブロックポイントも増えていると話す。ただ、国内ではショット(軟攻)で攻めてくるチームが多く、裏をかかれてしまう。JBVツアー第2戦5位、ビーチバレージャパン1回戦負けと国内で結果が出ない理由である。

しかし、それも解決したと溝江は話す。「海外と国内の違いへの対応で混乱していた部分があった。だけど、今は海外でも国内でも私たちのやるべきことをやる。たとえ国内でセットを落として圧勝でなくても、ワールドツアーで勝っていこうとしているスタイルで国内でも勝っていく」

女子でも強打をひたすら打ってくるワールドツアーと、ショットでボールをコートに落としてくる日本ツアー。海外と国内のビーチバレーボールの違いに、海外を転戦する多くチームが頭を悩ませてきた(当たり前だが根本的に違いは何もない)。海外と国内で戦い方を変えるのか、国内の試合を、ある意味捨ててしまうのか。海外で戦っているチームには、国内では負けられないというプレッシャーもかかってくる。

西堀健実と溝江明香は、その問いに、技術的にも精神的にも整理がついたようである。海外でも結果を残し、国内でもようやく優勝を果たした。次の試合が楽しみになってきた。

(取材・文=小崎仁久)

結果は次の通り
□ 準決勝
草野・尾崎 2(21-18,17-21,15-11)1 田中・石田
溝江・西堀 2(21-17,20-22,15-12)1 保立・宮川

□ 3位決定戦
田中・石田 1(21-18,20-22,17-19)2 保立・宮川

□女子決勝
草野・尾崎 0(13-21,12-21)2 溝江・西堀