人気3モデルで検証!アンプ内蔵トラベルギターはどこまで遊べる? 人気3モデルで検証!アンプ内蔵トラベルギターはどこまで遊べる?

 この夏、アウトドアで遊ぶ予定がまだまだある方だけでなく、逆に冷房の効いた部屋から一歩も出たくないインドア派の方にもぜひオススメしたいホビーが、今回紹介するアンプ内蔵トラベルギターだ。アコースティックギターよりコンパクトで、エレキギターなのに外部電源いらず。そんな、手軽さと本格的な音を両立した「ギター型ガジェット」のポテンシャルを探ってみた。

■そもそも、トラベルギターとは?

 今回は、数あるアンプ内蔵トラベルギターの中から「定番」といえる3モデルをピックアップした。それぞれの特徴を、実際に触って、弾いて、確かめていく。まず、各ギターの説明に入る前に、「トラベルギターとは何か」について確認しておこう。

 一般的には、通常の製品より小ぶりなボディとショートスケールのネックが特徴の、持ち運びに優れたギターのことをさす(近年ではサイズはほぼ通常のギターと同じながら、ネックの部分がパキッと折りたためてコンパクトに持ち運べる製品も出てきている)。

 中でも、アコースティックギタータイプと、エレキギタータイプというふたつに大別されるが、今回紹介する3モデルは、エレキギターをコンパクトにしたタイプで、ボディに内蔵された小型アンプから音を出力できる。別個にアンプやシールドを必要としないので「トラベルギター」という名の通り、場所を選ばずエレキサウンドが楽しめる汎用性の高さが魅力となっている。

 また、エレキタイプはアコースティックタイプのトラベルギターと異なり、カラーバリエーションが豊富な点や、エレキならではのサウンド(音色のバリエーション)、そして夜間練習に嬉しいヘッドホン出力や、機種によっては外部入力も可能などといった多機能性も特徴である。

 では、ここから、各モデルのスペックと概要を紹介しよう。

●フェルナンデス『ZO-3』

フェルナンデス『ZO-3』

<スペック>
ネックスケール:609mm
フレット数:22
ピックアップ:ハムバッキング×1
出力端子:アンプ出力端子×1、ヘッドフォンミニ出力端子×1
電源:9V形乾電池×1
定価:37,800円

<概要>

プロ・ミュージシャンからの信頼も厚く、多くのアーティスト・モデルを製作しているフェルナンデス社が、1990年にリリースしたのがこの「ZO-3」。発売から5年間で累計20万本を売り上げたヒット商品で、シンプルな基本設計はそのままに、今なおマイナーチェンジを施されながら、トラベルギターの「定番中の定番」としての地位を確立している。愛くるしいデザインは、その名の通り「ゾウ」をモチーフにしており、電源を入れるとゾウの目にあたる赤いライトが光るという仕掛けも、もはやお馴染み。

●ピグノーズ『ピグノーズ PGG-200』

ピグノーズ『ピグノーズ PGG-200』

<スペック>
ネックスケール:610mm
フレット数:22
ピックアップ:ハムバッキング×1
出力端子:アンプ出力端子×1、ヘッドフォンミニ出力端子×1
電源:9V形乾電池×1
定価:29,400円

<概要>

コンパクトネスと高音質を両立させて名を馳せた「ピグノーズ・アンプ」。そこから派生した姉妹機種といえるのが「ピグノーズ・ギター」だ。同アンプで培われた良質なサウンドのエッセンスがそのままギターに移植され、誰でも手軽に、エッジの効いたロックトーンを再現できる。3機種の中ではもっとも「エレキギターらしい」造形のボディを持つが、電源スイッチとボリュームを兼ねるノブにトレードマークの「豚の鼻」があしらわれるなど、トラベルギターらしい遊び心も忘れていない。

●VOX『Apache(アパッチ)』

VOX『Apache(アパッチ)』

<スペック>
ネックスケール:610mm
フレット数:22
ピックアップ:シングルコイル×1
入出力端子:AUX IN端子×1、アンプ出力端子×1、ヘッドフォンミニ出力端子×1
電源:単3形乾電池×6
リズムパターン数:66
テンポ設定範囲:40〜240bpm
定価:29,400円

<概要>

1957年創業の老舗アンプ/ギターブランド〈VOX〉が、2011年に送り出した「Apache」。ティアドロップ型の「?」と、よりスクエアで精悍な佇まいの「?」はそれぞれ、1960年代に人気を博した同社のビザール・ギター「Teardrop」と「Phantom」のデザインを再現したもの。ボディにはアンプのみならずリズムマシンまで内蔵し、これ一台で「ひとりバンド遊び」もできてしまうという、ガジェット好きにはたまらない多機能ぶりが売りだ。

 というわけで、ここからは、個性的な3モデルについて、ここからは「サイズ」「重量」「音」の各項目にフォーカスし比較・レビューしていきたい。なお、読み進んでいただく上でご参考までに、筆者のギターの腕前を告白しておこう。

 一言でいえば「中の中」。アマチュアバンドでライブ経験はあるものの、テクニックにはてんで自信がない。せいぜい聴いた曲のコード進行を耳コピできるくらいである。決して初心者ではないが上級者でもないということで、読者の最大公約数に合致していればいいのだが……そんなことを祈りつつ、早速レビューに移ろう。

【比較ポイント1:サイズ】 

まずは、トラベルギターの命である「ポータビリティ」を比較するため、3モデルの背比べをしてみた。実のところ3本とも、公式サイトではネックスケールしか公表されていないので、全長をひと目で比較できるのは『@DIME』だけ、かも。

比較ポイント1:サイズ

 ご覧の通り、コンパクトさを絶対正義とするなら「ピグノーズ」がやや優勢ということになるだろう。いかんせん「Apache」はその多機能性ゆえか大柄なボディサイズとなっている。ちなみにここで、筆者宅にてインテリアと化している「フェンダー ジャグスタング」も並べて、実際のエレキギターとのサイズ比較もしてみる。

比較ポイント1:サイズ

 こうしてあらためて通常のエレキギターと並べてみると、トラベルギターのコンパクトさを担保しているのは、ネックの長短ではなく、ボディサイズということが分かる。ほぼヘッド一つ分(約20センチ)のミニマイズのために、たとえば「ピグノーズ」なら、ブリッジ(弦を固定しているシルバーのパーツ)を限りなくボディ下端にセットしたり、ヘッド部分のペグ構成を左右3つずつに分けてみたり(「ZO-3」と「Apache」は6つのペグが片側一列に並んでいる)して、徹底した省サイズ化が試みられている。

 持ち運びや重量のことを考えれば、もっと小さいに越したことはないのだが、弦楽器の性質上、ネックを極端に短くすることはできない。つまり、サウンド的にギターとしてのアイデンティティを保ったままダウンサイジングしていくと、現状の「ZO-3」や「ピグノーズ」のサイズが期待できる最小値といえるのではないだろうか。

比較ポイント1:サイズ

 他の2本と比較するとやや大きさが目立つ「Apache」。確かに「ジャグスタング」と並べてみると、体格はそっくりなのにルックスが異なる二卵性双生児のような状態に(カラーもたまたま被ってしまいました)。

 とはいえ「ジャグスタング」は、ネックがショートスケールでボディも細身なので、エレキギターの中ではコンパクトな部類に入る。おそらく、普段「ストラト」や「レスポール」などの一般的なエレキギターを弾いている方からすれば、「Apache」でも十分コンパクトに感じるはずである。なお重量的には、アンプ内蔵にも関わらず「Apache」の方が「ジャグスタング」よりも軽く仕上がっている印象だった。

【比較ポイント2:重量感】

少し「Apache」の重量について触れたので、そのまま3本の重量比較に移りたい。そこで各ギターを筆者が愛用しているIKEAのアナログ体重計に乗せてみた。

<測定結果>

「ZO-3」3kg弱、「ピグノーズ」3kg弱、「Apache」3kg強となった。アナログ秤ゆえ、曖昧な数値を公表するはめになってしまった。しかし、ソリッドボディのギターにも関わらず、「ZO-3」と「ピグノーズ」にいたっては3kgを切りさえする重量というのは、わざわざ詳述するまでもなく、軽い。ここではむしろ、明確な数値としての重量というより、持ったとき、弾いたときの「重量感」のほうに重きを置いて比較したい。

 まず「ZO-3」だが、ネック部分を握って持ち上げると、普段「ジャグスタング」を“よっこらせ”と移動させている身からすると、別の楽器かと言いたいくらいの軽さだ。

ただ、イスに腰掛けて構えればそう気にならないが、ストラップを付けて立って弾いてみると、ボディの小ささゆえのネックヘヴィーが強調されて、下の写真でお分かりのように、左手でネックを握っていないと、ヘッド側がダラーンと垂れ下がってしまう。

 よって、ネックを握る(弦を押さえる)圧力が一瞬弱まるコードチェンジの瞬間などに、どうしても不安定な感じになる。同様のことは「ピグノーズ」にも言えるのだが、「これはこれ」と割り切って慣れていくしかないのだろう。

比較ポイント2:重量感比較ポイント2:重量感
「ZO-3」を弾いているとき手を離したとき。こんな感じになります
比較ポイント2:重量感比較ポイント2:重量感
「ピグノーズ」も同様です。

「Apache」は、サイズ同様、重量の比較という点でも、やはり前述の2機種と同じ土俵で比べると劣勢を強いられる(「Apache」のみ単三電池6本で駆動というのも重量増の原因)。ただ、驚くほどの軽さを享受できるギターでは決してないが、重量バランスの点では最も優れていて弾きやすい。とはいえ、このボディ形状である。

 通常のギターなら当たり前のようにあるボディ側面の凹みがないので、座って弾く際に太ももがホールドされないのは辛い。筆者自身、座った状態で安定して弾けるポイントを探ってみたが、どう構えてもしっくり来ず、結局、短くしたストラップを肩から掛けて弾く格好に収まった。

比較ポイント2:重量感

「Apache」はこの通り。立って弾いたときの安定感は通常のギター並み

 ちなみに、冒頭で曖昧な数値を紹介してしまったが、個人的な実感として言わせてもらえば、立って弾いた状態で一番軽く感じられたのは「ピグノーズ」、次に僅差で「ZO-3」、最後に「Apache」という順だったことを付記しておく。

【比較ポイント3:サウンド】

いよいよ肝心のサウンド比較に入る前に、まず各ギターの音の出し方から。

1.電池をセットする
2.スイッチを入れる
3.ゆっくりボリュームを上げる

3機種ともステップはこれだけである。電池ボックスは各ギターのボディ裏に埋め込まれているおり、フタはワンタッチで開閉できるので、電池交換も工具なしで可能だ。

比較ポイント3:サウンド

「ZO-3」はトグル式の電源スイッチにボリュームノブが一つという分かりやすい設計

比較ポイント3:サウンド

「ピグノーズ」は“豚の鼻”を引っ張るとONに。その状態で右に回すとボリュームが大きくなる

比較ポイント3:サウンド

「Apache」の電源スイッチは右下のトグル。その左は歪みのON/OFFスイッチ。上段黒ワク内はリズムマシンのコントロール部で、下段のノブは音質調整用

■『ZO-3』を弾いてみて感じたこと……最もピュアで実直なトラベルギター

〈音質・弾き心地〉

 電源を入れてコードを鳴らしてみると、その音色は、ナチュラルなクリーントーンとほのかな歪みのバランスが絶妙で、なかなか品が良い音という印象。シンプルなピックアップとアンプのコンビが、弦の振動を素直に、そして確実に拾い、雑味のないトーンに仕立ててくれる。

 たしかに強力な歪みや音圧を期待すると拍子抜けかもしれないが、ひとつひとつの音の粒が立ったクリアな音質は、弾き語りの伴奏にはピッタリだろう。また独特のフォルムのおかげで、ハイポジションが弾きやすいのも特徴。音質的に、ロックマナーに則ったゴリゴリのソロを弾くにはやや迫力不足だが、ロング・サステインが期待できない分、ジャズっぽい軽妙なフレーズやアルペジオなどにはむしろ向いているように思う。

<雑感>

 ネットで「ZO-3」の口コミやレビューなどを見ると、この大人しめの音質に対する物足りなさを表明する意見も目にする。たしかに、ボリュームをMAXにしたときの絶対音量は、他の2本に比べると若干小さい。また、音量を上げれば上げるほど、せっかくのクリアな音質より、ピッキング時のアタック音が耳につく感じもする。

 ただ、実際に今回弾き比べた中で、アンプの電源をOFFにした生音の鳴りが一番良かったのが、この「ZO-3」だったである。おそらくギターとしての素性はすかなり高いレベルにあるのではないだろうか。個人的には、屋外でジャラジャラとかき鳴らすのもいいが、適度なボリュームで爪弾くように鳴らしたときのトーンが気に入ったので、案外、インドア派にもオススメできる機種かもしれない。

■「ピグノーズ」を弾いてみた〜その凶暴さがまたかわいい〜

<音質・弾き心地>

「ピグノーズ」の魅力は、何と言ってもその歪みだ。ボリュームノブを90度ほどひねれば、いきなりヘヴィな音がアンプから放たれる。それも、丸みのある歪みではなく、直アンプでフルボリューム状態にしたときのような暴力的な歪みだ。すごくプリミティブで、レトロと言えばレトロなサウンドだが、それが本来の「ピグノーズ・アンプ」のアイデンティティでもある。

 ゆえに本機は、ギターにアンプが内蔵されているというより、ピグノーズ・アンプの筐体がギターボディになった、と考えた方が自然かもしれない。また、その強い音圧を活かした、演奏のバラエティの広さも特徴といえる。スピーカーから放たれる音の振動と弦の振動が共鳴しあう「フィードバック(音のサステイン)」が簡単に得られたり、ボディ裏側のパンチングホールを自分の体や手で開閉させることで、簡易的なワウやボリュームペダルのような効果も得られたりと、かなり「遊べる」ギターに仕上がっている。

<雑感>

 弦を押さえた瞬間、弦高が若干高く感じられたこと(個体差かも。調整も可能です)や、先述のようにブリッジがボディの端にセットされているためにブリッジミュートがしづらいなど、弾き始めの段階で気になる点はあったが、どちらも慣れれば問題ないレベル。華奢なルックスに秘めたピグノーズの凶暴性を、どう手なずけて遊び倒すか……おそらく何時間弾いても飽きずに楽しめる希有なギターだ。

■「Apache」を弾いてみた〜ギター弾きにとって革命的プロダクト〜

<音質・弾き心地>

 何と言っても、このギター最大の売りは、その多芸多才ぶりである。アンプだけでなく、リズムマシン、チューナー、AUX INジャックを搭載し、いつでもどこでも誰とでも(一人でも)、多彩な演奏を楽しむことができる。弾いてみた音の雰囲気としては、シングルコイルピックアップ特有の、歯切れの良い乾いたトーンが特徴的。

 ただ、おそらく構造上の理由でピックアップがフロント(ネック)寄りに搭載されているため、その響きはマイルドでエッジが足りない印象。それでも、オーバードライブのON/OFFに加え、トーンやゲインのコントロールも可能なので、自分好みの音色を目指す「音作り」も楽しめる。リズムマシンは、基本の8ビートはもちろん、ダンス、ブルースなど計66ものリズム・パターンを内蔵しているが、嬉しいのはそれらをボタンではなくノブで直感的にコントロールできる点。

 扱いやすいのはもちろん、「Apache」を貫く“レトロフューチャー”なデザインコンセプトにも、このアナログな操作系統がマッチしている。

〈雑感〉

「Apache」があれば、《チューニングする》《アンプから音を出す》《音色を変えて弾いてみる》《メトロノームに合わせてリズム感を鍛える》《実際の曲に合わせて演奏する》《オリジナルのフレーズをリズムマシンに合わせて弾く》……といった、ギタープレイヤーの“日常的行為”がすべて、丸々、これ1本で可能になってしまう。この究極の自己完結性は「トラベルギター」の枠を越え、ギター入門者のエントリーモデル、あるいは中〜上級者のトレーニング用ギターとしてのニーズにも応えられるはずだ。

【まとめ】

 それぞれに個性と強みがある3本だけに、ベストな1本を絞ることは難しい。が、各ギターの特質から大雑把ながら以下のように選り分けてみた。

■屋上の宴会やパーティーの余興など、みんなで曲を歌ったり盛り上がったりをする際の伴奏楽器としてなら「ZO-3」

■外出先や普段の空き時間で遊んだり、たまに弾いて聞かせたりするのなら「ピグノーズ」

■少しサイズが大柄でも、その両方の特性を享受したいのなら「Apache」

 ギターは、人前で演奏するのも、一人で弾きながら悦に入るのも楽しい楽器だが、「ZO-3」は前者に、「ピグノーズ」は後者に寄ったエンターテイメントツールというのが筆者の印象だ。そして「Apache」は、その両方の“娯楽性”を強引に詰め込んだ、高性能の「おもちゃ」である。ぜひ、本記事を参考に「アンプ内蔵トラベルギター」の愛らしく奥深い世界に足を踏み入れてもらいたい。

【カラーバリエーション】

「ZO-3」

ピンクブラックブルーレッドイエロー

左から、ピンク、ブラック、ブルー、レッド、イエロー

「ピグノーズ」

ブラックブラウン・サンバーストキャンディ・アップル・レッドチェリー・サンバーストメタリック・ブルーオレンジ

左から、ブラック、ブラウン・サンバースト、キャンディ・アップル・レッド、チェリー・サンバースト、メタリック・ブルー、オレンジ

「Apache ?」(ティアドロップタイプ)

レッドサンバーストシーフォームホワイト

左から、レッド、サンバースト、シーフォーム、ホワイト

「Apache ?」(ファントムタイプ)

ブラック レッド シーフォーム ホワイト

左から、ブラック、レッド、シーフォーム、ホワイト

【製品情報】
●フェルナンデス「ZO-3」
http://www.fernandes.co.jp/products/zo/zo-3.html

●ピグノーズ「ピグノーズ PGG-200」
http://www.ariaguitars.com/jp/02prod/04pignose/pgg200.html

●VOX「Apache(アパッチ)」
http://www.voxamps.jp/products/Guitars/apache/

文/タカヤマタロウ

編プロ、音楽系出版社を経て独立。編集者の嫁に頭が上がらないライター。