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川をまたぎ、トンネルを抜ける鉄道。車窓から眺める風景だけでも風情が感じられるが、そんな風景を自転車で楽しむことができる場所が岡山県にある。廃線跡を整備して、自転車と歩行者専用道路にした「片鉄ロマン街道」は、沿線に昔の駅舎などが残る、まさに“ロマン”あふれる道である。

○鉱山閉山後、1991年に廃線へ

元々は、大正12年(1923)から60年余りにわたって、瀬戸内海に面する備前市と中国山地中にあった柵原鉱山を結んでいた片上鉄道の線路だった。鉱山で掘り出された硫化鉄鉱や沿線に住む住民を運ぶ、地域の脚として親しまれていた鉄道だったが、鉱山が閉山されたことなどから利用者が減り、平成3年(1991)6月に廃線となった。

片上鉄道が営業していた時の総延長は約34km。その中で、美咲町柵原(やなはら)から備前市片上までが自転車道として整備されている。和気(わけ)町産業振興課の永宗宣之さんは、「線路は清流の吉井川に沿うようにありましたから、自転車道を走れば季節ごと彩を変える川や山の表情をじっくり楽しむことができます」と言う。

「片鉄ロマン街道」は道路と横切る数カ所を除けば、基本的に自転車と人専用の道。車の心配はなく、排気ガスや騒音に悩まされずに、豊かな自然が残る和気町の風景などを自転車で楽しめる。「鉄道跡を走れる数少ないスポットということで、全国からファンが訪れます」と永宗さんは言う。

サイクリングのファンでマイ自転車を持ち込む人もいるが、一般の人でも気軽に自転車を楽しめるように、入り口になっているJR和気駅前はもちろん、途中にある「鵜飼谷交通公園」などではレンタサイクルも行っている。「レンタルしているのはママチャリですが、身体ひとつで来られる方も多いですね」(永宗さん)。

○鉄橋もトンネルも自転車で

片上鉄道が走っている当時から、線路両脇には多数の桜が植えられていた。今なお残るその桜は、春になると豪快に咲き誇るため、通行人はピンク色のトンネルをくぐり抜けているかのような気分に浸れる。「知る人ぞ知る桜の名所ですね。でも、初夏の緑の美しさや、コスモスが咲き誇る秋の風情もあなどれないですよ」と永宗さん。

しかし、やはりマニアの心をくすぐるのは、昔のままに残されている鉄道跡だろう。実際にJR和気駅から北に走り出すとすぐに鉄橋があり、また5kmほど走れば天瀬(あませ)駅の駅舎が当時の姿を現す。その先には「天神山トンネル」があるが、トンネル内部などは列車が走っていた当時のまま残されている。

○終点には在りし日の列車も

道の途中には、在りし日に使われていた信号機や距離標(=キロポスト。道路管理のための延長を表示した標識)などが設置されたままだったり、かつての駅のプラットホームが残されていたりするため、まるで運転席からの車窓を眺めているような気分がタップリ味わえる。傾斜もほとんどないので、鉄道の遺構を楽しみながら徐行運転でゆっくりサイクリングを楽しむ観光客もたくさんいるという。

更に終点にあった吉ケ原駅舎と操車場は現在、「柵原ふれあい鉱山公園」に整備されている。そこには、片上鉄道で使われていた鉱石輸送列車も動態保存(動作・運用可能な状態で保存されていること)されている。毎月第1日曜日には車両の展示運転をしており、その際には客車の中に入ることもできる。

和木町には、「いちじくで作ったワイン」や「手作りようかん」、「祭り寿司」といった名産品もいろいろあるので、ノスタルジックな気分に浸りながらサイクリングを楽しんだ後は、グルメを満喫する旅もおすすめである。

●information

和気町観光ガイド

(OFFICE-SANGA)