期間限定で購入コストをゼロにするキャンペーンも
スタートは来年1月で、正式な口座開設の申し込みは今年10月からであるにもかかわらず、すでに初夏を迎えたころから多くの金融機関が日本版ISAこと「NISA」の口座開設予約を受け付け始めた。このフライング的な動きは、「1つの金融機関でしか口座を開設できず、いったん選ぶと4年間は他の金融機関に移せない」との制約を意識したものであろう。結論から述べておくと、私たち投資家としては、口座開設を急ぐメリットは皆無で、むしろ性急に選ぶと後悔を招きかねない。今回は大手証券の取り組みにスポットを当てながら、NISAにおけるベストの選択とは何かについて探ってみたい。


単に多数の口座獲得を目指すだけではなく、NISAを通じて投資になじんでもらうことが証券会社の社会的使命だと中田さん。そのうえで、他社と差別化を図る策も練っている。

「まず、口座開設で2000円のキャッシュバックや、ご家族やご友人の紹介で3000円を進呈するキャンペーンについては、他社も類似の内容のものを打ち出すでしょう。併せて当社では、NISA口座でキンカブを買う際のスプレッドや株式投信の購入手数料を14 年1月6日から12月30日までゼロにします」

キンカブなら月々数万円ずつの積立投資も可能だが、その場合に軽視できないのがコスト(手数料)。期間限定ながら、無料になった分だけ投資効率は向上する。もちろん、最も有利になるのは、期限内に100万円分をすべて買い付けるパターンだ。

NISAこそコンサルティングが重要な意味を持つ

SMBCグループ一丸で口座獲得を目指すのに対し、証券業界最大手で独立系の野村證券は、同業他社のみならずメガバンクやゆうちょ銀行などの銀行もにらんだ戦略を練ることになりそうだが……。同社商品企画部長の山本泰正さんは次のように答える。

「当社の投信のラインアップは700以上に及ぶうえ、当社では株式も取引できます。また、投信積立やるいとう(株式累積投資制度)も選択可能ですし、足りないアセットクラス(投資対象)が出てくれば、随時拡充してコンテンツの充実を図ってまいります」

やはり野村證券も、NISA口座のターゲットの中心は投資の初心者になると想定しているようだ。そして、そういった顧客はコンサルティングに対するニーズも高いとみている。手数料面にフォーカスを当てるとネット証券が明らかに有利だが、NISAを通じて新たに入ってくる顧客の多くは対面営業の証券会社を選ぶとにらんでいるわけだ。

「NISA口座を利用されるお客さまの場合は、まずコンサルティングを必要とするケースが多くなってくると思われます。一方で、自己判断で投資をされるお客様も多数いらっしゃいます。そのようなお客様には、インターネットと電話に特化し、手数料も安い野村ネット&コールをご案内しています。当社は、対面、ネットの両面で幅広い顧客ニーズに対応できる体制を整えております。

自分ですべてを判断できる投資家はネット証券に流れ、少しでも相談したいことがある投資家は対面営業の証券会社に向かうという流れは揺るぎないと捉えているわけだ。

ただ、コンサルティングが不可欠な顧客の場合もコストは安いに越したことがないのも確か。そこで、野村證券はNISAのスタートに先駆けて今年1月から口座管理手数料を廃止しており、SMBC日興証券も6月からこれに追随。大和証券は基本的に有料だが、NISA用は無料。大手3社はいずれも無料ということになる。

また、前出の中田さんが指摘したように、野村證券、大和証券もNISA口座開設キャンペーンを実施している。口座開設者へのキャッシュバックの金額は3社とも同じで、家族や友人の紹介キャンペーンについても、現金3000円の進呈という内容は共通。ただし、SMBC日興証券では被紹介者が30万円以上の買い付け、野村證券では50万円以上の買い付け、大和証券では100万円以上の入金を行なうことが前提となっている。

証券会社として、NISAの口座管理コストはもちろんかかる。ただ、コストを度外視して、キャンペーンを推進する理由がある。NISA口座を開設することによって、株やFX、そのほか債券など、総合的に投資を始めてもらいたいという思いだ。

山本泰正(YASUMASA YAMAMOTO)
野村證券 商品企画部長




この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。