日本一のトロフィーを手にした、高橋巧 (撮影は全てフォート・キシモト)

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今年のビーチバレーボールの日本一を決める第27回ビーチバレージャパンは18日、鵠沼海岸(神奈川県藤沢市)にて最終日を迎えた。本大会は全国47の都道府県代表を含む56チームが集まり16日から予選、決勝トーナメントが行われた。

決勝へ進出したのは、高橋巧(了徳寺大)・村上斉(フリー)組と仲矢靖央(フリー)・畑信也(ペボニア・ボタニカ)組。高橋・村上組は、準決勝で優勝候補と目された西村晃一・日高裕次郎組(WINDS)を破った勢いをそのままに、決勝も仲矢・畑組を一蹴、初優勝を果たした。高橋は21歳。ビーチバレージャパンの最年少優勝記録を更新した。

8チームで優勝を争った女子は、尾崎睦・草野歩組(ミキハウス)が保立沙織・宮川紗麻亜組(フリー)に勝ち優勝した。

「実感がわきませんが…」と言葉に詰まる優勝インタビュー。メディアへの対応の段取りを真剣な顔で聞き、TVのスポーツニュースに出ることに無邪気に喜んでいる。

村上は24歳、高橋は21歳。ともに次世代を担うプレイヤーとして日本代表候補に選ばれているものの、シニアの大きな大会での優勝は初めて。ましてや日本一。国内では近年、ベテランが幅を利かせる中、初々しいチャンピオンとなった。

▼ 頂点にのぼりつめた高橋巧/村上斉ペア



この日の鵠沼海岸は風速13m/sを超える海風。コートに横から吹きつける風への対応は、やはり経験が物を言う。

経験が少ないはずの高橋・村上だが、決勝でも経験豊かな仲矢・畑を相手に主導権を握った。準決勝で対戦した日高は語る。「彼らはシンプルなプレイをしていた。確実に風下から風上へサーブを打ち、確実に風上へスパイクを打ってくる。勝つためのビーチバレーをしていた」ビーチバレーボールでは横風の場合、自陣の風下側から敵陣の風上側へ、コートの対角線を中心に攻撃していく。風下側へスパイクを打つと、風に流されボールを落とすエリアが狭くなること、風の強弱をよりシビアに計算してなくてはいけないことなど、攻撃が難しくなる。

高橋の大きな武器は強烈なジャンピングサーブだが、そのサーブを風上側の対角線に確実に決めていった。村上のブロックも同様。相手が攻撃しやすいであろう風上側のスパイクコースをシンプルに閉め、高橋のもうひとつの武器、レシーブでのアジリティ、スピードを引き出した。村上は話す。「僕は基本的なことだけをして、あとは高橋に任せていた」

高橋と村上は、実は調子が良くなかったという。「決勝は爆発しましたが(笑)、それまでは、どの試合もギリギリだった。その分、油断できなくて良かったのかも知れない。決勝に来るまでは、こんなところで終われないと思っていた」と村上は話す。

強風下では基本的な技術と経験が試される。しかし技術と経験があると、何か仕掛けてやろうと欲が出てくるのも事実。ほかの日本代表候補、ベテラン勢が消えていく中、無欲で、オーソドックスに基本的なプレイを確実にこなし、優勝を呼び込んだ高橋と村上。スキルだけではなく「ここでやらないと先はない」と気概も見せた。

朝日健太郎、白鳥勝浩の引退で大きな柱が抜けた日本のビーチバレーボール。そこにこのヤングガンが、新しい風を吹き込むことになるのか。

○本命視されたが準決勝で敗れた日高裕次郎
「故障(準々決勝で足首をケガ)もあり、西村さんもコンディションが良くなかった中、ここまでできたのは良かったが、戦える身体がつくれなかったということ。強風には対応できていた」

○女子優勝の草野歩・尾崎睦
「決勝はサーブが良かった。強風の中、良いプレイができたと思う。久しぶりにペアを組んで準決勝まではもたついた試合ばかりだったが、徐々にコンビネーションはよくなった」

▼ 女子の優勝は、草野歩/尾崎睦ペア



(取材・文=小崎仁久)

結果は次の通り
□男子準決勝
西村・日高 1(18-21,21-10,11-15)2 高橋・村上
井上・長谷川 0(18-21,16-21)2 仲矢・畑

□男子決勝
高橋・村上 2(22-20,21-14)0 仲矢・畑

□女子準決勝
尾崎・草野 2(15-21,21-10,15-8)1 大山・幅口
小野田・永田 0(18-21,16-21)2 保立・宮川

□女子決勝
尾崎・草野 2(21-16,21-17)0 保立・宮川