証券優遇税制の再延長なしは「一体課税」への布石
スタートは来年1月で、正式な口座開設の申し込みは今年10月からであるにもかかわらず、すでに初夏を迎えたころから多くの金融機関が日本版ISAこと「NISA」の口座開設予約を受け付け始めた。このフライング的な動きは、「1つの金融機関でしか口座を開設できず、いったん選ぶと4年間は他の金融機関に移せない」との制約を意識したものであろう。結論から述べておくと、私たち投資家としては、口座開設を急ぐメリットは皆無で、むしろ性急に選ぶと後悔を招きかねない。今回は大手証券の取り組みにスポットを当てながら、NISAにおけるベストの選択とは何かについて探ってみたい。


誰もがムダな税金は1円たりとも納めたくないだろうし、手元のお金は増えるに越したことがないはずである。ほぼ万人にこうした心理が働くなら、知名度の向上次第で本格的に普及する可能性を秘めているのが「日本版ISA(少額投資非課税制度)」だ。

かねてから国は「貯蓄から投資へ」とのスローガンを掲げて、預貯金偏重となっている日本人の金融資産構造を変えようとしてきた。要するに、国民がもっと株式などのリスク資産に対して積極的に投資するように仕向けてきたのだ。

より効率的な資産運用を国民に推進させるというのが表向きの狙いだが、株式市場の活況が日本経済に好影響を及ぼすからこその国策。盛り上がり次第では、第1次安倍政権が挫折した金融立国構想も荒唐無稽なものではなくなる。

最初に「貯蓄から投資へ」の国策を打ち出したのは小泉政権。2001年6月に発表した「骨太の方針」にもその旨を明記したうえで、03年には株式や株式投資信託の売却益や配当・分配金に対する税率を20%から10%に引き下げる証券優遇税制を導入した。

くしくも、日経平均株価は03年春を底に上昇へと転じた。だが、07年のサブプライム・ショック、08年のリーマン・ショックによって再び流れが大変化。その後も長く低迷し、「貯蓄から投資へ」を実践する国民は増えなかった。

そして今年末の大みそかで、小泉政権時代から続いてきた証券優遇税制がついに終了となる。?呼び水〞としての効果が確認できなかったこともさることながら、税務当局が「金融所得一体課税」の導入を検討していることを踏まえれば、さらなる延長は考えがたかった。預貯金や債券、株式や投信などへ課す税率を一律20%に統一したうえで、金融所得全体で損益を通算できるようにするのが当局の狙いだ。

当然、それは国民にとってもメリットのある制度変更だが、今まで得られていた税制上の優遇がなくなることは、株式市場に少なからず悪影響を及ぼしうる。そこで、新たな税制上の特典として設けられたのが日本版ISAだ。

前置きが長くなったが、同制度の概要をおさらいしておこう。英国の制度が手本で、愛称は「NISA」。年間100万円までの投資で得た利益が最長5年間非課税となる。




SMBC日興証券は独自サービスで他社との差別化を図る

英国では国民の約4割がISA口座を利用しており、日本でも同様の普及が期待されているが、果たしてそれは現実のものとなるのか?まだ多くの人に認知されたとは言いがたいが、少なくとも金融機関側はNISA導入が大きなビジネスチャンスになると捉えているようだ。

「単純ながらも奥の深い制度で、今まで投資を行なってこなかったお客さまが投資に関心を示す、最初で最後のチャンスだと考えています」

こう語るのは、SMBC日興証券リテール事業推進部長の中田太治さんだ。NISA口座は投信を販売している銀行やゆうちょ銀行などでも開設でき、証券会社はそれらとも顧客獲得競争を繰り広げることになる。