【第4話(最終回)】NISAの特徴を活かす投資アドバイス(その2・実践編)

NISAの基本は、「期待収益率が大きいもの」、「金融商品の絞り込み」そして「長期投資」。この3つがキーワード、というのが前回までのお話でした。

では、そのような条件に合う投資対象には何があるのか──今回は、これについて考えます。

高収益が期待できるものとして、すぐに思い浮かぶのが株式です。買った株式がうまく見込み通りに値上がりすれば、債券や投資信託の分配金などよりも大きな利益が得られる可能性があります。アベノミクスで経済が右肩上がりとなりつつある現在の環境は、株式投資が有効となる可能性は高いでしょう。

しかし、株式には、業績の悪化や事故、不祥事などといった個別リスクが付きものです。そこで、複数の銘柄に分散して投資することによって、そのリスクを低減させるという投資テクニックがあります。

ところが、NISAでは1年に100万円までの投資に限られますので、まず、株価の高い銘柄は買えません。例えば、1,000株が取引の単位である銘柄の場合、株価は1,000円未満の銘柄しか買えないことになります(1,000円×1000株=100万円)。

株価の安い銘柄なら買えますが、分散投資するために複数の銘柄を買おうとしても、総額100万円の上限内で銘柄選択するのは、かなり難しいことと言えますね。

投資信託はNISA対応の切り札か?

そんな株式投資の難しさから、投資信託に目が向きます。そもそも少ない資金で株式の分散投資ができるようにした金融商品が投資信託ですから、確かに、個別リスクを気にすることもなく、100万円以下でも買え、中長期投資にも向いています。そういう意味で、投資信託は、NISA向けの運用商品のひとつと言えるでしょう。

投資信託の運用会社も、NISAの非課税効果を高めるために、途中で分配金を支払わないタイプの投資信託を新商品として売り出そうとしており、銀行などが販売に力を入れています。

このような投資信託は、銀行にとってNISA口座の争奪戦のための主力商品ですから、NISA対応の切り札のように広告されていますが、ちょっと待った!

これらの投資信託の最大の問題点は、運用パフォーマンスの悪い投資信託が多過ぎるという点です。7月5日付の日本経済新聞の記事によると、日本の投資信託は世界各国の投資信託の中で極めて低い評価となっており、その主たる原因は運用コストの高さにあるようです。

運用コストというのは、投資信託の運用会社が手にする運用手数料などですが、この運用コストは、最終的に収益率の低さという形で投資家の負担となります。これでは、「期待収益率が大きいもの」を基本とするNISAの投資方針から外れてしまいますね。

以上のように、株式と投資信託には、一長一短があるわけです。

この株式と投資信託の「良いところ取り」をしたのが、上場投資信託(ETF)です。ETFは株価指数などの指標と連動する投信ですので、株式相場全体が値上がりすれば、それに合わせて収益を得ることができ、しかも単一銘柄の株式のような個別リスクがなく、投資コストが安く、品揃えも豊富です。

小口資金でも投資できますから、100万円という範囲で自分の投資スタンスに合った各種のETFの組み合わせも可能です。まさにNISAに打ってつけの投資対象だと思います。

さて、投資する商品は前述のような形でお考えいただければいいのですが、もう一つの問題──どこでNISA口座を開設するか──というのも、運用戦略上の大きな課題です。

投資対象として考えられる金融商品の種類には、ETF、株式、投資信託があったわけですが、すべての金融機関で、あらゆる商品を取り扱っているというわけではありません。 

特に銀行は、そもそもETFと株式を取り扱うことができませんから、銀行にNISA口座を開設してしまったら、これはもう、黙って投資信託を買うしか選択の余地はないのです。後々ETFを買いたいと思っても、NISAは「一人に1口座」ですから、別の口座を証券会社に作ることもできず、最初から投資戦略が破綻していくことになりかねません。

●銀行・証券のNISA対象金融商品
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 NISA口座の開設にあたっては、まず、自分に合う投資方針を立て、その方針に合った商品の品揃えをしている金融機関を見つけることが大事です。来年1月のNISAのスタートまで時間はたっぷりあるのですから、投資方針が決まるまでは「口座を作らないこと」です。そんなに慌てることはないのです。

最後になりましたが、もう一言つけ加えさせていただきますと、NISAというのは、証券投資における節税の第一歩に過ぎません。第2回で多少触れましたが、わが国の国民の保有金融商品は、欧米諸国と比べると、異常なまでに預貯金が好まれる傾向にあり、そのことが、わが国経済のさらなる成長の足枷になっているという面は否定できません。

今回のNISAという制度は、債権やデリバティブなどを含め、幅広い投資のあり方を考え直すいい機会でもあります。ぜひとも、信頼できる証券会社とのお付き合いをスタートさせていただき、窓口でじっくりと相談し、十分納得したうえで投資を決断していただきたいと思いますし、証券投資の入り口として資産運用の新しい扉を開いていただくことをお薦めいたします。

(文/村形 聡)

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1995年独立、2007年に税理士法人ゼニックス・コンサルティングを設立しCEOに就任。税務顧問のみならず、経営コンサルタントとしても活躍し、これまでにかかわってきた中小企業は800社を超える。また、現在、光世証券株式会社(http://www.kosei.co.jp/)の非常勤監査役も務める。著書は「会社の数字を読みこなすための基本とルール」、「小さな会社の税金と節税」、「スラスラ読める個人事業の経理」(いずれも新星出版社)、「ポイント図解式会計 財務諸表と経営分析」(アスキーメディアワークス)、「日本一やさしい会社の設立と運営の学校」(ナツメ社)など多数。近著として「社長のための非常識な会計のルール」(日本実業出版社)がある。趣味はベースを弾くこと。常時3〜4つのバンドを掛け持ちしており、そちらも多忙の様子である。 http://www.xenix.com