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ヴィレヴァン通販:おとなのための、もう一度ジブリ特集



後輩「先輩、ジブリの新しいの、結局見に行ったんですか」
先輩「うーん。まあな。」
 
後輩「あれ、いまいちでした?」
先輩「いや、けして、そんな、ことは、ない。」
後輩「へー。でも、なんか煮え切らないすね。」

先輩「あのさ、AK-47って知ってる?」
後輩「そりゃ知ってますよ。あれでしょ。」
 
先輩「違うよ。踊る集団アイドル的なやつではない。」
後輩「まだなにも」
 
先輩「な。知ってるよな。ソ連のライフルのAK-47。」
後輩「はあ。木製のパーツが印象的なやつですよね。」
 
先輩「まあ、ボケるタイミングはまだあるから。」
後輩「映画とかゲームにもたくさん出てくるんで、見た目くらいは知ってますね。」
 
先輩「そうだね。開発が1947年のソ連。ソ連軍に採用されたのと、いわゆる東側諸国でライセンス生産されてそれらの軍の制式採用を受けたり、西側諸国の共産主義過激派やゲリラに供与されてたりしたんだ。それで、総生産数は7000万とも1億とも言われてる、人類史上最も多く生産された銃だ。だもんで、アメリカの敵方の兵器の代名詞になったわけ。だから、映画だと特に敵方が持ってることが多かったな。」
 
後輩「へー。そういえばそうかも。僕は、子どもの頃ニュースでみた、〇〇○がロシアとやり取りして、◇◇で△△しようとしてた、って話が印象的です。」
先輩「あったなー、思い出したくないなー、それはー」
 
後輩「サテ・・・」
先輩「こらこらー。」
 
後輩「しかし、開発1947年って60年以上前ですよ。まだ現役ですよね。」
先輩「まあ、後継機も出てるしさすがに軍隊の制式銃としては退いてると思うけどね。中国で大量にコピーが作られたり、ゲリラやテロリストへの無償供与みたいなのもあってかなり安く出回ったから、ごく最近まで途上国の軍隊や民兵では最前線で使われてたみたいだね。今でも流れ流れて、アフリカあたりの少年兵とかが持ってるかもな。」
 
後輩「うーむ。」
先輩「まあ、兵器だからな。あまり積極的に考えたくなるような話題はないよ。」
 
後輩「じゃあ、なんでこんな話を。」
先輩「まあね。このAK-47、正しくはカラシニコフっていうんだ。47年式カラシニコフ自動小銃。Aが自動小銃、Kがカラシニコフ。」
 
後輩「まさかのサンドイッチ伯爵的な?」
先輩「当たり。ミハイル・カラシニコフさんの設計でカラシニコフ。で、このAK-47がここまで生産されたのは、時代的政治的な背景はあるにせよ、とにかく作りやすく壊れにくく扱いやすかったことにあるんだ。」
 
後輩「教育テレビのお兄さんみたいになってきましたね。」
先輩「中国、北朝鮮から東欧、イラン、イラク、エジプトまで、幅広く生産されたってことは、決して技術力の高いと言えない国でも生産可能だったわけで。」
 
後輩「なるほど」
 
先輩「また、高温多湿のベトナムから乾燥した中東まで。もちろん極寒のロシアでも。どんな環境でも、不十分なメンテナンスでも問題なく作動するというタフさ。それこそ、泥水につけた直後でも撃てたっていう逸話もあるくらいの。」
後輩「だからこそ、たくさん作られ世界中にばらまかれたと。」
 
先輩「そうだね。それと設計思想に新兵でもすぐ扱えるように、ってのがあったらしくて、すごく簡単に」
後輩「ちょ、ちょ、この話長くなります?」
 
先輩「いや、まあ、結論はすげーライフルつくったカラシニコフすげーって話だな。」
後輩「一行で終わる話です。」
 
先輩「それでさ、銃を作るっていったいどういう感じなんだろうな、って思うんだよね。」
後輩「はあ」
 
先輩「俺は、アクション映画も好きだし、戦争映画も見るし、銃器とか兵器とか特殊部隊とかやっぱりかっこいいと思っちゃうんだよ。戦争関係、調べたりするの好きだし。雑な言い方すれば戦争ってコンテンツ結構好き。」
後輩「まあわからなくはないです。女の子からはひかれちゃうでしょうけど。」
 
先輩「でも、戦争やら戦闘やらは自分の周りでも世界のどこかでもないほうがいいとは思うんだよね。」
後輩「なければないほうが。矛盾ですけどね。」
 
先輩「なければないほうがね。それでも、どんなに願っても明日すぐ戦争や兵器はなくならないし。
で、そういう感覚ってカラシニコフも同じじゃなかったかと思うんだ。戦争はなければないほうがいいけど、自分が祖国のためにできることはより素晴らしい銃を作ること。でも、その“より素晴らしい”はイコール“より人を殺せること”なんだよな。」
 
後輩「そうなりますね。会社員が会議で、『こうしたらもっと良くなる。』と意見を闘わせて企画を磨くのと同じように、工夫して改良して技術を磨くことは、“いかに人をうまく殺すか”ってことですもんね。」
 
先輩「たぶん、みんなで協力して苦労して試した改良がうまくいったその瞬間ってたぶんニッコリ笑顔になっちゃうと思うんだよね。殺すための改良がうまくいった時。」
後輩「そう聞くと、すごいマッドサイエンティスト。というかマッドエンジニアですね。」
 
先輩「マッドエンジニア!“改良がうまくいって喜ぶ”ってエンジニアとしては普通なんだけどな。
敵より先に作動して、いざというときも壊れにくいってのは、こっちの身を守るっていう意味あいもあるし、たぶんそっちを考えてたとは思うんだけど、どこまでいっても人殺しの道具なわけだし、それって言い訳みたいなんだよな。そう思ってないとやってられない、というか。」
 
後輩「そうですよね。時代が違うんでまったく同じ感覚ではないと思いますけど。銃口から出た弾丸がどう進んで、どう人体に突き刺さり人体組織をどう破壊するのか、ってのは分かってたはずですから。」
 
先輩「怖ええよ。」
後輩「怖すぎです。」
 
先輩「いや、それでさ、カラシニコフはやっぱりその功績で勲章もらったりして名誉を受けてる。でも、世界で一番作られたってことは世界で一番人を撃ちぬいた銃で、世界の評価ってそういうマッドエンジニア的な見方もされたんじゃないかなあ、と思うわけ。
技術を高めるほどに、その技術の先には戦闘と人殺しがある。たぶん俺なんかが感じてる矛盾より、はるかにでかい矛盾を抱えてたんじゃないかって思っちゃうんだよ。」
 
後輩「(どうすれば先に相手を殺せるか)という本来の目的を常に隠さざるをえない、というか隠しておきたい。そこをぼかして、技術のみに焦点を合わせて、技術のみを思考する、と。
どこか切ないですね。」
 
先輩「そう、なんだか切なくて哀しいんだよ。そうしてないと、まともな感覚を維持できないんじゃないか、っていうのは大袈裟かなあ。もしくは突き抜けてマッドエンジニアになるか。クツクツと薄く笑いながら図面をひくような。
っていうのを、カラシニコフが2009年に勲章もらったってニュース見てからずっと考えてた。」
 
後輩「ちょっとフィクション的すぎる気もしますけどね。ああ、それが、『風立ちぬ』とつながるんですね。」
先輩「そうなんだ。主役の堀越二郎も戦闘機を作ってて、戦闘機ってことは敵の飛行機を撃ち落とすのが主目的なわけで、技術の向上による、より凄い機体ってのは、“敵を殺す”ってのと直結してるんだよね。」
 
後輩「二郎が求めたであろう、より速いスピード、より小さい旋回っていう運動性能は、つねに敵機より上回って、敵機を撃ち落とすため、ですからね。」
 
先輩「軍の要求はあったにせよ、な。」
後輩「美しい飛行機をつくりたかった。時代が求めたのは戦闘機で、だから、戦闘機をつくった。予告編はそんな感じでしたよね。」
 
先輩「だから見にいったんだ。銃器や兵器のかっこ良さにひかれることと戦争はないほうがいいっていう矛盾を、宮崎御大はどう語るのか。二郎の葛藤はどう描かれるのか。が見たかったんだ。」
 
後輩「で」
先輩「で、見に行ったんだが」
 
後輩「が」
先輩「そのへんはあんまり描いてなかった。」
 
後輩「え」
先輩「そのへんはあんまり描いてなかった。」
 
後輩「えっと」
先輩「そのへんはあんまり描いてなかったんだよなあ。」
 
後輩「つまり、それとは違うテーマを描いてた映画だったと。」
先輩「そういうことになるなあ。すごい映画ではあった。」
 
後輩「つまり、今先輩は『風立ちぬ』はこういう映画じゃなかったよ、ということを、長々と語っていたと。」
先輩「そういうことになるかなあ。」
 
後輩「『風立ちぬ』はこういう映画じゃなかったよ、ということを、ロシアの技術将校の話を出しつつ、長々と語っていたと。」
先輩「あの、飯をおごりたいんだが・・・どうだろうか」


『風立ちぬ』大ヒットおめでとうございます。



◆執筆  ヴィレッジヴァンガードイオンタウン千種店 西村店長
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