参院選後、株式や為替はどう動くのか。政官財の各方面に極秘取材したところ、大幅円安論が飛び出した。年末株価対策には秘策も。


裏目標は為替180円。政官財に円安の誘惑、首相は株高効果を熟知

「異次元緩和の本領発揮は今年後半でしょう」。自民党関係者はこう言い、円安を予想してみせた。

米国FRB(連邦準備制度理事会)は、日銀よりひと足早く量的緩和縮小の検討に入った。一方、日銀の資金供給が本番を迎えるのはこれから。市中からドルが回収されるとともに円は増えるので、円安圧力が高まる。米国の景気回復もドル買いの流れを強めるというシナリオだ。



財務省内では、為替の先行きに2つの見方があるようだ。ある中堅官僚は「1ドル=120円までが許容範囲」とし、これ以上の円安は輸入物価上昇などの副作用が大きくなりすぎると指摘する。

為替が1ドル=100円の壁を突破した5月、甘利明経済再生担当相は「新しい天井をつくらないと」と漏らしたという。円高是正は必要だが、円相場の急落までは期待していないということで、円安にブレーキをかける口先介入を考えていたフシがある。

ただ、120円が表面上の許容レート上限とすれば、裏の目標レートもある。

別のキャリア官僚は「1ドル=180円なら日経平均は軽く2万円だ」と話す。東証で最も売買シェアが高いのは外国人投資家。彼らはドル換算で投資案件を評価するので、1ドル=90円から180円に円の価値が半減すれば、日経平均は2倍高で適正と考え、それ以下は割安とみて買いを入れる公算が大きい。

このとき、大方の日本人の目には株価が大幅高したように映り、安倍政権の評価が高まる。円安は輸出採算を劇的に向上させ、財界も歓迎する。円安によるインフレで政府債務が相対的に軽くなる。国民も自民党も財務省も喜ぶ一石三鳥だ。さすがに1ドル=180円は実現性に乏しいが、日銀が通貨価値維持の観点から円高志向があるのに対して、財務省の一部には円安誘導論がくすぶっているようだ。

景気の分かれ目は参院選後。上場企業の売上高は株価上昇に3カ月ほど遅れて増加する傾向が知られている。4〜6月期業績がおおむね判明するのは参院選後の7月末。

業績回復が進んでいなければ、株価は底値を試しに動く。逆に好業績を確認できれば、設備投資や増配の確度が増し、株式市場は急騰第2幕に。安倍政権が財界に求める賃金アップには否定的な企業は多いが、企業収益が上向けばリストラも減り、皮膚感覚での景況感はかなり改善する。「心配は秋以降」と日銀幹部は漏らす。米国の金融緩和打ち切りの議論が本格化し、ドル資金の引き揚げ懸念から世界株安に進むリスクだ。任期切れを迎えるFRBのバーナンキ議長は続投に否定的とされ、後任が固まるまで株式も為替も不安定になりやすい。

ただ、予定された懸念材料には日本は対応力を発揮する。先の自民党関係者によれば、「秋発表予定の追加成長戦略に、年末で打ち切られる投資優遇税制の延長など株価対策を盛り込んで、不安を一掃する」案も浮上しているという。全国紙政治記者は「安倍首相の顔色で直前の株価がわかる」というほど首相は株高の威力を実感しており、経済対策=株価対策の色合いが一段と濃くなりそうだ。






この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。