ウラジオストクの街は日本車天国。ウラジオストク駅前の駐車場にて  (Photo:©Alt Invest Com)

写真拡大

 ウラジオストクを訪れた日本人が最初に気づくのは日本車の氾濫だ。トヨタ、日産、ホンダ……その大半が右ハンドル(ロシアは右側通行)で、輸出用の新車ではなく日本から中古車を輸入したものだということがひと目でわかる。

 中古車といっても、中古のバスや会社名の入ったままのトラック(いまでもミャンマーでよく見る)が走っているわけではない。目立つのはレクサスなどの高級車で、新車同様の車も多い。

 いったいどういう経緯で、こんな「日本車天国」が生まれたのだろう?

トラベラーズチェックを利用した「不審な取引」

 日本とロシアのあいだの中古車ビジネスの一端が垣間見えたのは、2012年7月、米上院国土安全保障・政府問題委員会の常設調査委員会が公開した、イギリスの大手銀行HSBCのマネーロンダリング疑惑に対する報告書だ。

 この報告書のなかで、日本の北陸銀行の「不審な取引」が取り上げられている。北陸銀行は米国のHSBCを通じて、05〜08年の4年間で総額2億9000万ドル(290億円)もの巨額のトラベラーズチェック(TC)を換金していた。しかもその多くは500ドルや1000ドルの高額な額面の連番で、サインからは持ち込んだ人間の名前を判読することができなかった。

 TCはもともと旅行者が海外旅行の際に支払いに利用する手段で、商店やレストランで現金同様に使うため、50ドルや100ドル額面のものを複数枚所持するのが一般的だ。TCは所持人がサインとカウンターサイン(最初のサインと同じもの)をすることで効力を発揮し、カウンターサインのない状態で紛失した場合は払い戻しが可能だから、「セキュリティを強化した現金」でもある。

 TCをふつうに利用するなら、1000ドル額面のものを連番で何十枚も換金することはあり得ない。ところが北陸銀行は、1日あたり平均して50万ドル(5000万円)〜60万ドル(6000万円)のTCを決済していたのだ。米上院調査委員会はこれを、マネーロンダリングの疑いのある不正常な取引だと見なした。

 マネーロンダリングとは、税務当局や司法当局に知られることなく多額の資金を海外に移転することだ。匿名性がもっとも高い決済手段は現金で、キャッシュをカバンにつめて飛行機に乗り、海外の金融機関の口座に入金してしまえば、この「送金」を外部から確認するのはきわめて難しい。

 TCもまた、使い方次第では匿名の資金移動手段になる。

 日本も含め世界のほとんどの金融機関は、TCの購入・売却が一定額(日本では200万円)を超える場合、運転免許証などで本人確認をしている。だがこれだけでは、TCを所持した人間が資金の所有者であるかどうかはわからない。ベネフィシャリーオーナー(真の受益者)が特定されている銀行口座から海外送金するよりも、はるかに不透明な取引なのだ。

 もともとHSBCのマネーロンダリング疑惑の焦点は、アメリカとメキシコとのあいだのドラッグマネーだった。

 2002年にHSBCは、65億ペソ(400億円)もの赤字に陥って経営が立ち行かなくなったメキシコ第5位の銀行ビタルを買収した。

 ビタルの支店と資産を引き継いだHSBCメキシコ(HBMX)は、大胆なリストラと事業再編で翌年には黒字に転じ、2007年には総資産が3500億ペソ(2兆1000億円)と倍増、純利益は46億ペソ(280億円)に達した。

 だがこの圧倒的な成功の影で、HSBCはビタルの負の遺産に苦しめられることになる。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)