【第3話】NISAの特徴を活かす投資アドバイス(その1・基本編)

前回でお話しした「一人に1口座」のNISAを使って、どのように投資するのが良いのでしょうか。今回は、その基本的な考え方を整理してみましょう。

NISA口座を使って投資をする場合、その制度の特徴から考えておかなければならない要点がいくつかあります。

その制度上の特徴──言い換えると、制度を利用する上での条件や限度といった「制約」は、以下の点です。

  一人1口座、100万円を上限とした投資しかできない。
  非課税枠は、一旦証券を売却してしまうと再利用はできない。
   また、未使用分を翌年以降へ繰り越すことはできない。
  他の口座と損益通算はできない。また、損失の繰越控除もできない。

これらの「制約」への対処法を考えてみましょう。

まず、金額の制限に関してですが、5年後には合計して最大500万円になるものの、1年に100万円ずつの投資ですから、金融商品あるいは銘柄などの選択余地は、そんなにありません。

数多くの種類の金融商品を買ったり、銘柄を分散したりということが難しいので、投資対象をしっかり吟味し、絞り込む必要があるのです。ただし、投資資金が潤沢で、いくつかの家族口座を設定できる人は、バランスを考えながら、複数の口座によるポートフォリオを構成することができます。

次に、非課税枠の利用期間の問題です。NISA口座では、投資収益が最長5年間非課税となりますが、その途中でいったん売却してしまうと、その売却代金を同じ「非課税投資枠」に再投資することはできません。ということは、短期で頻繁に売買するのではなく、長期にわたって証券を保有して、分配金や配当金などを非課税で受け取りながら、長期的な元本部分の値上がりを期待するという形が望ましいわけです。

そうは言っても、株式や投資信託などの証券に投資して、いつも順調に値上がりするとは限りませんね。5年間保有して、十分な利益が出たら「めでたし、めでたし」です。でも、不幸にして値下がりしていたら、他の口座との間の損益通算はできないわけですし、どうすれば良いのでしょうか?

──この場合は、翌年の非課税枠にロール(乗換え)することが可能です。

第1回のコラムでも解説しましたが、NISAの制度は10年間有効です。毎年の非課税枠に5年間という有効期限があるとはいえ、その期限が切れた翌年にも新しい非課税枠を利用可能です。ですから、値下がりしている場合には、その翌年の「枠」を使って、投資を引き継ぎ、再び値上がりするのを待ちましょう。長期戦に持ち込めば、いずれ浮かび上がることも期待できるでしょう。

これらの対処法に加えて、注意しなければならない大切なポイントは、どのような商品を投資対象とすべきかというポイントです。

繰り返しになりますが、NISAによる非課税とは「本来、投資収益に課せられる20%の税金がかからない」ということです。例えば、0.5%の利回りの債券と、期待収益率10%の株式があった場合、その収益を非課税にするのであれば、どちらを選ぶべきでしょう?――当然、収益率10%の株式ですよね。0.5%の利息の20%部分の税金(0.1%相当額ですね)を免除されても、あまり嬉しくはありません。つまり、投資収益が大きいものほど非課税による恩恵を受けることになるわけです。これを念頭に投資対象の証券を選ばないと、せっかくのNISAを上手に活用できません。

以上をまとめると、NISAでの基本方針は、配当プラス値上がりによる「期待収益率が大きいもの」を「絞り込んで」、じっくりとした「長期投資」を行なう、ということになりますね。ここは、しっかり押さえておきましょう。

あらためて、NISA口座利用のこの他の注意点についても、まとめておきましょう。 

『NISA口座を利用する時の注意点』

 特定口座や一般口座で保有している上場株式等を、NISA口座へ移管することはできない。
 NISA口座で保有している上場株式等を他の金融機関へ移管することはできない。
 NISA口座と他の口座との損益通算は不可。また、損失の繰越控除もできない。
 非課税期間の途中に売却した場合、売却部分にあたる非課税投資枠を再利用することはできない。
 非課税投資枠の利用せずに残った枠を翌年以降へ繰り越すことはできない。
 NISA口座から払い出された上場株式等の取得価額は、払出日の時価となる。
 上場株式等の配当金等は、証券会社で配当金等を受領する「株式数比例配分方式」をあらかじめ選択しておく必要がある。

(文/村形 聡)

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1995年独立、2007年に税理士法人ゼニックス・コンサルティングを設立しCEOに就任。税務顧問のみならず、経営コンサルタントとしても活躍し、これまでにかかわってきた中小企業は800社を超える。また、現在、光世証券株式会社(http://www.kosei.co.jp/)の非常勤監査役も務める。著書は「会社の数字を読みこなすための基本とルール」、「小さな会社の税金と節税」、「スラスラ読める個人事業の経理」(いずれも新星出版社)、「ポイント図解式会計 財務諸表と経営分析」(アスキーメディアワークス)、「日本一やさしい会社の設立と運営の学校」(ナツメ社)など多数。近著として「社長のための非常識な会計のルール」(日本実業出版社)がある。趣味はベースを弾くこと。常時3〜4つのバンドを掛け持ちしており、そちらも多忙の様子である。 http://www.xenix.com