猛暑続きの夏に、スッキリ爽やかな飲み応えの炭酸飲料はクセになる。だが、昨年に一大ブームを巻き起こした“トクホ炭酸”の勢いは、少し陰りが見え出した。

 今さら説明する必要もなかろうが、トクホとは「特定保健用食品」の略称。特定の健康機能を維持できるとして、国がその表示を許可した食品のことである。いまや商品数は1000点を超え、市場規模は3362億円(富士経済調べ・2013年予測)に及ぶ。

 飲料でトクホ市場を牽引してきたのは、2003年に『ヘルシア緑茶』を発売した花王。「脂っこい食事とともに飲むと、脂肪の消化・吸収を抑える効果がある」との触れ込みが、メタボ解消に励む中年男性の心を掴んだ。

 ヘルシアブランドは年間300億円規模の売り上げを誇り、最近ではコーヒーにまでそのジャンルを広げている。

 そして、2012年4月。キリンビバレッジが発売したトクホ初のコーラ系飲料『メッツ コーラ』が、消費者に大きなインパクトを与えた。

「不健康なイメージのコーラが健康訴求のトクホ商品になったため、我慢せずに飲めると多くの消費者が飛びついた」(食品アナリスト)。発売からわずか2週間で、年間販売目標の100万ケース(1ケース24本)を突破するほど、まさにバカ売れ状態だった。

 その後、同年11月にサントリー食品インターナショナルがトクホの『ペプシ スペシャル』を投入して、トクホコーラ戦争はますますヒートアップするかに見えた。ところが、「今年に入り、売れ行きは失速ぎみ」と話すのは、飲料総研取締役の宮下和浩氏だ。

「メッツは今年の4月以降、前年割れの販売数量に落ち込んでいます。後発のペプシもリニューアルで巻き返しを図ろうと意気込んでいますが、低迷するメッツを追い抜かすことすらできていない状況です」(宮下氏)

 生活習慣病などへの恐れから、健康志向は相変わらず高まっている。なのに、なぜトクホ炭酸の人気はしぼんでいるのか。会社のメタボ検診で毎回イエローカードをもらっているという40代後半の男性がいう。

「トクホ飲料はお茶や烏龍茶、もちろんコーラも試しましたが、いろいろな商品がありすぎることと、どれを飲んでもあまり効果が感じられずに長続きしないんです。また、最近のトクホは表示のない商品とあまり値段が変わらないために、有り難みがうすいというか……」

 競合するトクホ商品増加によるシェアの食い合い、低価格化など健康訴求インパクトの希薄さなどが相まって、“トクホ疲れ”する消費者が出ているというわけだ。

 しかし、このままトクホブームの灯は消すまいと、9月に新商品のトクホで勝負に出るのがアサヒ飲料である。その名は『三ツ矢サイダー プラス』。言わずと知れた炭酸の老舗ブランドである。

「三ツ矢サイダーのルーツは1884年で、現存する日本最古の飲料ブランドです。その売り上げ規模はいまだに8年連続でプラス成長を遂げるほどで、コカ・コーラ以外ではダントツ。もともと透明な炭酸はコーラに比べて健康的なイメージがあったのに、さらにトクホ商品で健康色を高めようというのですから、話題性は十分だと思います」(前出・宮下氏)

<食物繊維の働きにより、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血糖値が気になる方の食生活の改善に役立ちます>(アサヒ飲料)

 この機能性と、3つのゼロ(カロリー・糖質・保存料)を謳い、長年にわたり愛飲する三ツ矢ファンだけでなく、分散するお茶やコーラのトクホ需要を取り込みたい考えだ。

 近年、日本各地で特産品を原料に取り入れた「ご当地サイダー」がブームとなるなど、懐かしのラムネから続く透明サイダーの人気は根強い。

 コーラVSサイダーのトクホ対決――。夏が終わっても熱い火花を散らしそうだ。