2年に一度開催される「世界陸上」。14回目となる今回の開催地はロシア・モスクワ。
8月10日〜19日の大会期間中、毎日実況を担当するTBS初田啓介アナと土井敏之アナ。

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また人類が進化してしまう───。
8月10日(土)、「世界陸上モスクワ」がいよいよ開幕。メインキャスターは今回もおなじみの織田裕二&中井美穂のコンビだ。そして、各競技の生のドラマを伝えてくれるのが、TBSが誇るスポーツアナの面々。そこで、TBSの初田啓介アナ、土井敏之アナに開幕直前インタビューを敢行。セリク初心者はコレを読めば、大会9日間の楽しみ方がわかります。


《跳躍系〜注目は山本聖途》

─── 今週土曜日から始まる世界陸上。ボルトの100Mをはじめ、ハンマー投げなどの「投擲」、走り高跳びなどの「跳躍」種目など、陸上競技の全てを楽しめるのが世界陸上の……

初田 今、「走り高跳び」って言いましたね! 今回、大注目な種目のひとつが「男子ハイジャン」ですよ。1993年、キューバのソトマイヨールが作った2m45cmという世界記録。20年間更新されてないこの世界記録更新に向けて、今年「走り高跳び」のレベルが非常に高い!

土井 記録って、止まるとピタ!っと何年も出なくなるんですよね。「停滞期」と「伸びる期」があるんですけど、今、走り高跳びは久々に「伸びる期」が来ましたね。

初田 今年は、ウクライナのボンダレンコ、カタールのバーシム、アメリカのカイナードが三つ巴状態で。先日ロンドンで行われたダイヤモンドリーグでも、ボンダレンコが記録を伸ばしてきてですね、2m41cmとソトマイヨールの記録にあと4cmにまで迫った。本番でも一発ハマってですね、45cm、あるいは46cmという期待が持たれるな、と思います。

土井 フィールドの種目って、記録が出始めるとドンドンドン!と立て続けに出る時がありますよね。

初田 やっぱり競い合いだから。「土井選手がここまで来た! 初田選手も負けじと……」と競い合っていくと、それによってお互いの力が引き出される。

土井 その例外なのが、過去であればセルゲイ・ブブカであり、現代であれば同じく棒高跳びのエレーナ・イシンバエワ。一人が抜けすぎてしまう。棒高飛びはそういう傾向がありますね。

初田 個人的にはその「棒高跳び」にも期待しています。特に男子。フランスのラビエニというロンドン五輪のチャンピオンが、この間も自己ベストの6m2cmを跳んで好調をキープ。棒高跳びの世界記録といえば、1994年にブブカがマークした6m14cmなんですが、先日の試合でラビエニは一気に6m16cmにまでバーを上げたんです。残念ながらクリアできなかったんですが、自信があるからこそ挑んだんだと思うんです。ぜひ今大会でブブカの記録に近づいて欲しいですね。

土井 「棒高跳び」は、日本人選手も3人出場しますね。

初田 そうなんですよ。これは世界陸上の歴史において初。まずは今回が6大会連続出場というベテラン・澤野大地。もう一人がミズノ所属の荻田大樹。そして大学3年生の山本聖途。この山本が、練習では5m90cmくらいにまで高さを伸ばしている。自身の記録は6月にマークした5m75cmなんですが、そのときも5m85cmに3回トライして、3回ともものすごく惜しかった! 

土井 「山本聖途」という名前はぜひ覚えて欲しいですね。

初田 お父さんも、国体で優勝したことがある陸上選手だったんですよ。お父さんは五輪に出たかったけど出ることができなかった。それで、その夢を息子に託し、聖火の「聖」に途中の「途」。聖火への道を歩んで欲しい、と。もし今回、5m85cmを記録したら日本記録。そしてメダル争いにも絡んでくる。はじめての世界陸上で、思いきった大ジャンプを期待したいと思います。


《短距離〜ボルトと桐生と山縣亮太》

土井 私が注目しているのは、去年のロンドン五輪で男女とも世界記録が生まれた「4×100Mリレー」。ところが今回、ジャマイカのブレイクという、ボルトに次ぐ2番手の選手が出られない。ジャマイカはそれでも強いのか? という点で注目です。そして日本にとっても、4年前の北京五輪でメダルを取り、去年のロンドン五輪でも5位入賞と非常に楽しみな種目です。

初田 特に今回は、18歳の桐生祥秀選手、大学生の山縣亮太選手に期待が集まりますね。

土井 世代交代をしたチームがまた上位に入ってメダル争いをしてくれたら、これほど面白いことはないですよ。トップが世界記録。日本も日本記録を作った上でメダルか!? っていうね。

初田 先日、インターハイでも勝ちまして、100Mの準決が10秒32、決勝が10秒19。この流れがいいよね。前回の世界陸上テグ大会の100Mでは、準決勝で一番遅かったタイムが10秒16なんです。桐生選手のベストは10秒01ですけども、今回のインターハイで残した10秒19という数字を残せると、決勝進出の可能性も出てくるのかな、と。

土井 準決勝進出でも大ニュースなんですが、決勝にも期待が持てる、ってスゴいことですよね。

初田 先ほど名前が出たブレイクを始め、欠場選手が何名かいる今大会。でも、日本人選手の立場から考えれば、決勝に進める可能性が高まったという、前向きな「追い風」と捉えることもできると思います。

土井 そして、ボルトです。

初田 前大回はフライングでしたが、あれはねぇ、ショックでしたよ。私、実況担当していたんですけども、その瞬間、「あれ!? やっちゃった!」って。私見えました。見えてしまった! もう、世界中が溜め息。あれだけは繰り返して欲しくないですねぇ。

土井 でも、今回はキチンと仕上げて来ていますからね。もう大丈夫ですよ。

初田 さすがボルトというか、いい時の走りに形が近づいてきました。先日、9秒85を出したんですけども、41歩で走っていました。9秒58の世界記録をマークしたときも41歩。ボルトがボルトらしさを取り戻して、いよいよあわせて来たな、という感じです。


《長距離〜チーム・ジャパンで複数入賞》

土井 長距離では、注目の川内優輝選手が、これまでにない「経験」を身につけてモスクワに向かいます。経験というのは、レースをどう組み立てていくかという経験。そして、どうやってレースまで持っていくのか。仕上げるという意味での経験が全部違うと。

初田 実際、いろんな大会に出まくってますからね。

土井 川内選手も「こんなにレースの経験を積んでいる選手は日本には他にいない。僕の武器はそこです!」と言っていました。あらゆるパターンに対応できるだけの経験値は身につけている。やたらめったらレースに出ていることに批判もあったりしますが、実はそういうところに狙いがあって、どんなレースパターンでも対応できるようにしている、とうのが強みになったんです。

初田 最高で何位くらい?

土井 本人は「6位」という数字を上げていました。なぜ6位かというと、「自分が上位に入れば、僕よりも素質があってスピードのあるランナーが、僕のような経験や育ち方、いろんなやり方を積めばここまでいけるんじゃないの?」ということが示せると。自分の成功だけじゃなく、陸上界のことを考えた上で、今後に向けたメソッドを作るために僕は6位以内に入りたい、と言っていましたね。
一匹狼なんてイメージを持たれがちな川内ですが、全然そんなことないんです。「チーム・ジャパン」として、複数の入賞を目指したいとも言っています。先々の陸上界のことまで考えていろんな計画を立てている。それが川内選手です。


《新星〜オカクバレと鈴木雄介》

─── まだまだ世間では知られていないけど、注目した方がいい選手はいますか?

初田 ナイジェリアのね、オカグバレ。「女子100M」「200M」「走り幅跳び」全部出ます。カール・ルイスを彷彿とさせるダイナミックな走りと跳躍が魅力ですね。今年好調! 長身でストライドも大きい。問題は日程で、3種目に出るとほとんど毎日何かに出ている状況になるので、体力的消耗が心配ではありますが、何かやってくれそうな雰囲気、タフさも有しているんですよ。

土井 陸上好きな人は知っているだろうけど、世界陸上で久しぶりに競技を見るなんて人は「オカグバレ」聞いたことないと思います。でも、今回、たくさん名前を聞くかもしれない。注目して欲しいですね。私は、得意の競歩から。「男子20km」鈴木雄介! 大会が始まる前から「男子20k競歩、なんかいいよね」と言っておくと、大会終わった後に「ほらな!」と自慢できるかもしれない。そのくらい、本気でメダル候補です。今、世界ランキング2位。

初田 今回、日本選手団の主将も男子50km競歩の森岡紘一朗ですからね。競歩、注目ですね。だって、男子50kmの世界記録が3時間34分14秒。走ったって3時間なんて無理ですよ! 

土井 開催国であるロシアって、競歩がすごい人気なんです。ロシアで競歩のW杯が開催された時も、始まる3時間前からスタンドが埋まり、街を歩いているとサインを求められたとか。競歩選手の顔と名前が一致するってだけでスゴい(笑)。モスクワにも競歩ファンは必ず集まるだろうと言われています。

初田 日本人選手も、そういう大観戦の中で試合をしたことがあまりないと思うんです。だから、今回はいい記録を出すかもしれないですね。歓声によって力が引き出されることってありますから。ひとつの例で言うと、2007年の世界陸上・大阪で、室伏広治選手のおかげでものすごくハンマー種目が盛り上がったんですよ。

─── ホームの利ですね。

初田 そう思うでしょ? ところが、大歓声の中で競技をした外国の選手が軒並み好記録を出してしまい、その結果、室伏選手は6位に終わってしまった。「こんないい雰囲気の中で試合をしたのは初めてだ!」とコメントを残した選手がいたくらい、みんなどんどん力を引き出された。今回の競歩は、その逆のパターンになるかもしれないですよね。
(後編に続く)

「世界陸上モスクワ」
2013年8月10日(土)〜18日(日)TBS系列独占放送。
※主な競技スケジュール
8月10日(土)女子マラソン/男子100m予選/男子ハンマー投げ予選
8月11日(日)男子100m決勝/女子10000m決勝/女子棒高跳び予選
8月12日(月)女子100m決勝/男子110mH決勝/男子ハンマー投げ決勝
8月13日(火)男子400m決勝/男子800m決勝/女子棒高跳び決勝
8月15日(木)男子400mH決勝/女子1500m決勝/男子走り高跳び決勝
8月16日(金)女子200m決勝/男子走り幅跳び決勝/男子4×400m決勝
8月17日(土)男子マラソン/男子200m決勝/男子やり投げ決勝
8月18日(日)男女4×100m決勝/女子やり投げ決勝
(オグマナオト)