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「光」は生理的にも心理的にも、人間の体に非常に影響を与えやすいもの。だから、照明次第で、お部屋を心休まるリラックス空間にも活動的な空間にも変えることができるといいます。照明デザイナーの松下進さんに、照明が体に及ぼす影響や、お部屋での効果的な照明の選び方について教えていただきましょう。

■青白い光は、心も体も休まらない

「日本では最近まで、住空間の照明は昼に近づけることを重視し、蛍光灯の『明るく青白い光』が好まれてきました。しかし、青白い光はエネルギー量も大きく、生理的にも心理的にも体が休まらないのです」と、松下さんは「明るすぎる部屋」の弊害を指摘します。

そもそも、体内の生体リズムを24時間に修正しリセットするのが、「光」。太陽の強い光を浴びると睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が抑制され、夜暗くなるとメラトニンが分泌されて眠気を促すしくみになっています。ですから、強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、夜であっても覚醒してしまうといいます。また、就寝前に蛍光灯の青白い光の下で過ごした人よりも、電球色の光で過ごした人のほうがメラトニンの分泌が増え、深い眠りの時間が長くなるともいわれています。

「スマートフォンやパソコンのブルーライトが睡眠障害を引き起こすなどといわれていますが、『昼白色』の青白い光も同じこと。明るくないと目が悪くなるといった強迫観念が根強くありますが、通常の生活をするには、室内の照明器具の合計ワット数が1畳あたり10ワット程度、10畳なら90ワット程度で十分。日本の住まいの照明は明るすぎることが多く、エネルギーの浪費にもなっています」と、松下さんは指摘します。

■「多灯分散」がオススメ

では、おすすめのお部屋の照明は? 「明るく青白い光は活動的な雰囲気を作り、暗めで暖かみのある光は落ち着いた空間を作りだします。生理的にはメラトニンの分泌に影響しますし、心理的にも人間がそう感じることはさまざまな実験などでも証明されています。ですから、リラックスしたいお部屋では電球色の照明がいいでしょう」と松下さん。さらに、「その違いを生み出すのは、照明の明るさと色だけではありません。照明の位置も重要なポイントで、照明の位置が高い場所にあるほど人は活動的に、低い位置にあるほど落ち着いた気分になるのです」。

日本では、天井につけるシーリングライトで一部屋全体を照らす「一室一灯」が主流ですが、松下さんがおすすめするのは、「多灯分散」。トータルの明るさを決めて、それを天井につける照明だけでなく、ダウンライトやスタンドライトなどで分散させる方法です。

「分散させると、生活のシーンに合わせて、点けておく照明と消すことのできる照明が選択でき、明るさの調整ができます。例えば、音楽を聴くときは低い位置のライトだけにしたり、来客時には全部を点灯して明るくしたり。リラックスしてテレビを見たいときには、テレビの背面の壁を明るくすれば、部屋が暗くても目の疲れは軽減できます。照明を分散して、機能的に使ってみてください」

青白い光は味覚を鋭くし、逆に電球色は唾液の分泌を活発にするともいわれます。生理的にも心身的にも影響が大きい照明ですが、心地よいと感じる明るさは人それぞれ。照明を上手に活用することで、自分にとっての快適なお部屋づくりをしてみませんか?

文・桜糀はな(エフスタイル)

取材協力/松下進さん

松下進建築・照明設計室代表。京都大学大学院工学研究科建築学第二専攻修了後、東芝ライテック(株)に入社し、エンジニアリングセンターチーフデザイナーとして照明デザインに従事。2000年に独立。照明設計を担当した「中尊寺金色堂照明改修プロジェクト」は今年、照明学会の日本照明賞を受賞している。著書に「図解入門 よくわかる 最新 照明の基本と仕組み」(秀和システム)など。ホームページは、