プロとして歩みだしてまだ約4か月、松山は多くのものを吸収しながら成長し続けている(Photo by Sam GreenwoodGetty Images)

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 ブリヂストン招待の最終日。スタート前のウォーミングアップを終えた松山英樹は練習場を見回しながら、こう言った。「見てくださいよ。打席にいるのはミケルソン、マキロイ、カイマー……メジャーチャンプばっかり」。
松山英樹が米ツアーシード獲得圏内に突入
 なるほど。練習グリーンを見渡してみたら、そこにいたのはジム・フューリクとババ・ワトソン。「両方にいる選手の中でメジャータイトルがないのは、イアン・ポールターと松山くんだけだね」と言うと、松山は「やっべえ……」と苦笑い。
 そうこうしていたら、同組で回るアンヘル・カブレラが後方からやってきて、横をすり抜けていった。松山は「でっけえ。子供とお相撲さんの勝負だなあ」。
 「やっべえ」の苦笑は、メジャーで優勝することに現実味を感じているからこその苦笑。「でっけえ」という驚きは「でも負けないぞ」という対抗意識の表われだったように思う。
 先の全英オープンではフィル・ミケルソンと予選2日間を回り、「パットを入れにいく姿勢がすごい」と痛感したら、そのミケルソンが優勝した。今大会ではタイガー・ウッズと同組になり、2日目は米ツアー最少スコアの「59」をマークしそうなゾーン状態のウッズを間近で眺めた。
 世界のスーパースターたちの存在も、彼らのスーパーなプレーぶりも、何もかもが少し前まではテレビでしか見たことのない単なる「すっげえ」だったのに、今では自分の目前で起こる現実と化している。
 嵐のように押し寄せる現実。その多くは厳しい現実だ。全英オープンで科せられたスロープレーの1打罰もその1つ。そして今大会の3日目にもスロープレーの注意を受けた。が、松山は「オレは遅くないっすよ。計られてもペナルティにはならないはず」と、きっぱり。そうやって厳しい現実を受け入れ、自分の中で咀嚼して、身に付けたり、かわし方を覚えたり。そうやって松山は猛スピードで成長している。
 好調だったショットが先週のカナディアンオープンから乱れ始め、今週は「ショットがひどい4日間でした」と振り返る結果になった。が、松山は「あーあ、溜め息しか出ない」と本音を漏らしながらも、ショットが乱れた原因は何だったのかを考え、英国、カナダ、そして広大な米国大陸を移動しながらメジャーやビッグ大会を連戦している疲労が「体に影響しているのかな」と分析しつつある。
 ショットの乱れを補いつつ、今週は21位。「アプローチが良くなってきているのは救い」と、ショットが不調の中でスコアを作るプロらしさも身に付けつつある。阿部監督は「日本とアメリカの芝の違いは、ほんのちょっとの差なんだろうけど、それが大きく影響することもある。そこに慣れてくれば……」と語り、経験と時間が松山の成長を加速すると信じている。
 その経験は、単なる「いい勉強になった」「楽しかった」で済ませるわけにはいかない。「アメリカに行くという目標はプロ転向するときに英樹が立てた目標です。こうしてアメリカで試合に出ているのは、米ツアー出場権を取るという現実の目標をクリアするため。そのために使えるチャンスは全部有効に使えと英樹には言ってある」(阿部監督)。
 監督の指令を心に刻んでいる松山は21位に終わった最終ラウンド後、「ここで決めたかったけど……」と残念がりながらも、すぐさま現実に視線を戻した。
 「また来週もあって、そこでシードを決めちゃわなければ大変な状況なので、来週、しっかり予選通過して、また優勝争いができるようなプレーに持って行かないといけない。来週からが、また大変です」
 素顔の松山が思わず口にするのは「すっげえ」「やっべえ」「でっけえ」といった単純な感嘆の言葉が多いけれど、彼は人一倍、冷静に現実を見つめ、受け入れ、噛み砕き、それを糧にして成長している。しかも、猛スピードで――。
 だからこそ、彼が来季の米ツアー出場権を獲得するであろうことが現実として感じられる。彼がいつしかメジャーチャンプの仲間入りをするであろうことも現実として感じられる。きっと、ミケルソンもウッズもカブレラも、そう感じたはずだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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