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「江ノ電」こと江ノ島電鉄といえば、神奈川県の藤沢駅と鎌倉駅を結ぶかわいい電車。途中、江ノ島をはじめ、あじさいで有名な長谷寺や、七里ヶ浜など観光スポットが多い。生活手段であることはもちろん、湘南への観光の足としても活躍している。

その江ノ電の沿線を舞台とした映画が『江ノ島プリズム』だ。幼なじみの男女3人の別れ、青春と恋が描かれる。スクリーンかららつなさがあふれる一方で、タイムスリップストーリーとしてのコミカルな場面が絶妙なバランスを保つ。この映画において、「江ノ電」が大事な役割を持っている。

主人公・修太役の福士蒼汰は、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で、「ずぶん……」が口癖の種市先輩を演じている。朔(さく)役の野村周平は、昨年放映された『梅ちゃん先生』で、主人公の実家に下宿する工員を演じた。ミチル役の本田翼は、現在放映中のフジテレビ系ドラマ『ショムニ2013』で頑張り屋さんのOLを演じ、注目されている。『江ノ島プリズム』は旬の若手俳優3人がそろい、江ノ電とともに時を巡る物語だ。

○親友の死。取り返しのつかない過去へ「江ノ電」で旅立つ……

やや天然ボケ気味で優しい修太、病弱な朔、活発な女の子のミチルの3人は幼なじみ。江ノ電の沿線に住み、同じ高校に通っていた。しかしある日、朔に突然の死が訪れ、ミチルは海外へ留学。浪人の修太はふたつの別れを心に残して暮らしていた。

朔の3回忌で、修太は形見として、『君もタイムトラベラー』という本をもらう。付録の時計を身につけて念じれば、行きたい時間に行けるという。まさか……、という気分で時計を腕に巻き、江ノ電の車中で念じてみた。電車がトンネルを通り抜けると、なんと、向かいの席に死んだはずの朔がいた。タイムスリップに成功してしまった!?

しかも日付は朔の死の前日。それはミチルが2人に内緒で海外留学に旅立つ日でもあった。明日は3人にとって最後の日。修太は朔の死を防ぎ、ミチルに留学を告白させようと決めた。ただ、このタイムスリップはあるきっかけで現代に戻ってしまう性質がある。修太は朔を救うため、何度も江ノ電に乗り、タイムスリップを繰り返す。そのたびに少しずつ現代の様子が変わっていく。未来を知らない朔とミチル、修太や朔の母親など、「変わる前の過去を知らない現在の人々」と、すべてを知っている修太の掛け合いがおもしろい。

だが、タイムスリップにはタイムパラドックスがつきもの。修太は時の流れに縛られた女の子(未来穂香)から、「過去を変えたりしたら、きっと残酷な目にあう」と告げられてしまう。それでも迷わず運命に挑もうとする修太。はたして、修太は朔を救えるか? ミチルから2人への思いは伝わるのか……?

○鉄道ファンに挑戦? スタッフロールのナゾ

同作品の脚本を担当した小林弘利氏は、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』にも参加している。そのせいか、江ノ電が走る場面で、他の作品にはないこだわりがあるように感じた。「『江ノ島』と付くタイトルの映画だから、ちょっとくらいは江ノ電が出るだろう」程度に思っていたら、江ノ電が物語のカギとなる重要な場面で登場する。

3人が通う高校の最寄り駅のロケ地は、江ノ電の鎌倉高校前駅。ホームから海が見え、駅周辺は江ノ電を象徴する風景でもある。同駅は後半の重要な場面にも登場する。海と道路に隣接した立地ならではの演出がある。実際に江ノ電に乗ってみると、確かに高校生の乗降が多い。筆者はその風景を見るたびに、「いいなあ、ここの生徒たちはどんな青春を過ごしているんだろう?」と思っていた。まさにこの映画が教えてくれたように思う。

朔の自宅の最寄り駅は、江ノ電の極楽寺駅。3回忌の帰り、修太はここで鎌倉行の電車に乗る。この先には、江ノ電で唯一のトンネルがある。全長250mの極楽寺トンネルだ。このトンネルを通過することが、タイムスリップの出発点になっている。ただし、同作品でのタイムマシンは、正確には「付録の時計」の機能。トンネルはきっかけの場所にすぎない。

時間旅行に旅立つ電車は500形502号。江ノ電の最新型車両で、初のVVVFインバータ搭載車。オールステンレス製ながら全塗装という珍しい車両だ。車内には沿線の名所を映すモニターを搭載している。ここに将来、『江ノ島プリズム』のロケ地も紹介されるだろうか? その他、ちらりと映る車両も含めて、江ノ電のほぼ全形式が出演しているようだ。ただし、2000形は広告ラッピング車両のためか、4両編成の後部にさりげなく映っているのみ。

江ノ電が主役の映画ではないので、併用軌道の区間や信号場(駅間のすれ違い場所)、住宅の軒先を電車が走る風景など、江ノ電名物は残念ながら出てこない。しかし、鉄道ファンにとって隠れた見所がもうひとつある。スタッフロールだ。協力会社として、意外な場所の鉄道会社名がある。なぜこの映画でこの会社が協力したのだろうか?

筆者は江ノ電も、スタッフロールに出てきたその鉄道にも乗ったのでピンときた。でもここでは答えは内緒にしておこう。ぜひ劇場で、謎解きにチャレンジしてほしい。江ノ電に詳しい人なら、劇中の江ノ電関連のある描写で違和感があるはず。そこがヒントだ。

なお、江ノ電では9月1日まで、同作品の公開を記念した『江ノ島プリズム&江ノ島電鉄スタンプラリー』を開催中だ。指定の台紙に5つのスタンプを集めて映画館に持っていくと、特別価格の1,000円で鑑賞できる。非売品の特製シールもプレゼントされるとのこと(数量限定)。スタンプ設置駅は藤沢駅、江ノ島駅、長谷駅、鎌倉駅、「えのでんはうす」(江ノ電江ノ島駅から徒歩3分)。「えのでんはうす」ではスタンプラリー開催期間中の9月1日まで、『江ノ島プリズム』の企画展も開催しているそうだ。

○映画『江ノ島プリズム』に登場する鉄道風景

(杉山淳一)