「女性の活用」について、安倍政権が成長戦略で目玉の一つとして育児休暇を3年とれるようにするようだが、日本企業では現実問題として無理ではないかと大前研一氏は言う。では、どのような方法ならば日本企業でも女性の活用になるのか、大前氏が提言する。

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 日本企業が女性を活用するためには、どうすればよいのか? とにかく女性を多く採用し、給料の面でも昇進の面でも男性と差別しないことが大原則だ。そういう場を与えれば、優秀な女性は男性以上に育つのだが、問題はむしろ女性のほうから「家庭の事情」で仕事を減らそうとするケースが多いことだ。

 私自身、マッキンゼー時代に2〜3人の優秀な女性社員から「大前さん、私は夫の5倍の給料をもらっているので、もうこれ以上、昇進させていただかなくてけっこうです。その代わり、長く勤めさせてください」と頼まれたことがある。

 だが私は、若い人を毎年数多く採用していくマッキンゼーは「UP or OUT」だから、昇進しなければ会社を去るしかない、と宣告した。非情なようだが、女性を差別しないというのは、そういうことである。

 男女を平等に扱うと、会社も個人もけっこうしんどい。マッキンゼーの場合、家庭の事情に関係なく突然、世界のどこかに出張しなければならなくなることがままある。私がいた当時は韓国や台湾への出張が多く、1年の8割は現地にいて日本には毎週末しか帰ってこられないというケースもあった。そうなると家庭を持つ女性社員は、たいてい弱音を吐いてしまう。

 女性に対するグラスシーリング(ガラスの天井)が全くなくても、女性のほうからシーリングを求めてくるというのが私の経験なのだ。結局、いくら会社が男女を差別しない制度やシステムを作っても、女性を長く活用するのは難しいのである。

 だが、国内企業には合わなくても、海外で活躍している日本人女性は山ほどいる。また、最近の、とくに独身の女性たちは「自立」志向が強く、男性以上にスキルを重視する傾向もみられる。

 ということは、これから政府と企業が取り組むべきは、女性の雇用形態に契約社員やクラウドソーシングによる“サイバー外注”などの多様な働き方を積極的に導入し、女性が自分のスキルをフルに生かしながら自分にとって快適なライフスタイルを実現できる機会を増やすことだと思う。

 さらに今の日本は、男性社員でも前述のマッキンゼーの女性社員と同様に「昇進しなくてもいい」と思う人が増えているアンビションなき時代である。そういうダイバーシティ(多様性)を、どう“活力”に変換していくのか──それが今後の日本企業にとっては極めて大きな課題なのである。

※週刊ポスト2013年8月9日号