『王様達のヴァイキング』ストーリー協力:深見真(ビッグ・コミックス/小学館刊)
特設サイトでは第1話と第8話を試し読みができます。
(http://www.spi-shogakukan.com/viking/)

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面白い漫画を読みたいけれど、たくさん出てるのはちょっと手を出しにくいもの。1巻からガッツリ面白くて2巻が待ちどおしい! でもまだ2巻がでていない。そんなブレイク直前、最新の話題作5作を紹介します。

◆ 『王様達のヴァイキング』さだやす/ストーリー協力:深見真(ビッグ・コミックス/小学館刊)
“ハッカー”ってコンピューターで悪いことする人でしょと思っている人でもスッと入っていける(違うんだって!)。クラッカー(破壊者)と呼ばれる犯罪者と異なり、コードを書きプログラミングを構築するハッカーは「創造者」だ。
創造者と破壊者、今まさにその分水嶺にいる孤独な天才・是枝。自らを「欠陥品」と呼ぶ彼の腕に目をつけたエンジェル投資家・坂井は「俺は世界征服がしたい、お前の手を使って。さあ、お前はその手で本当は何をしたいんだ?」と手をさしだす。
今作が初連載となるさだやすは単行本発売に際し、担当編集者のTwitterアカウントを通してこうつぶやいている。「単行本1集の中に出てくる『僕は何者でもありません、でもせめて是枝一希になりたいんです』 是枝のこの台詞は、自分の今の気持ちと重なります。読者の皆様、書店員の皆様、自分を『さだやす』にしてくださった沢山の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」 
古いラップトップだけを携え、坂井の元へむかう是枝。彼は人と仕事をすることで自分と向き合うことになる。“世界征服”へ舵をきった2人の冒険物語は今始まったばかりだ。

◆ 『さよならソルシエ』穂積(flowersコミックスα/小学館刊)
“格式”、“品格”、そして決まりきった方法も彼には不要。慎重、時に大胆、そして最後は鮮やかな方法で保守的な画壇に挑む天才画商テオドルス。
テオは歴史上では炎の画家ゴッホを献身的に支えた弟として知られる。しかしゴッホ兄弟の伝記物語と謳われた今作がただ歴史をなぞってすむはずがない。なぜなら、あの『式の前日』の穂積が描く初連載作品だからだ。
『式の前日』は意表をつく展開が話題を呼んでじわじわと人気をのばし、ついに「このマンガすごい!2013」のオンナ編2位になった作品。新人の初単行本でしかも短編集としては異例の40万部を突破している。既存の少女漫画の定石にとらわれない巧みなストーリー展開が1番の魅力だ。
テオは開催が危ぶまれた新進画家たちの展覧会を驚きの方法で成功に導く。穂積が描くテオはゴッホの付属品として語られる弟ではない。2巻は今年の冬に発売予定。気持ちよく驚かされたいという人はこちらへどうぞ。

◆ 『イノサン』坂本眞一(ヤングジャンプ・コミックス/集英社刊)
「生きろーー。」ルイ16世をはじめとし、3,000人近い人間を処刑した死刑執行人シャルルーアンリ・サンソンの本の帯になぜこんな言葉が?
安藤正勝著『死刑執行人サンソン』を坂本眞一が独自の解釈を加えて漫画化。『孤高の人』でK2を目指す登山家の極限の生を繊細かつ精緻な画力で描ききった坂本が、“イノサン(無垢)な死神”を描く。
これによるとシャルル-アンリは死刑廃止論者で、彼が4代目を継いだサンソン家は医者を副業としていたという。死刑執行人とのギャップの大きさは、そのまま彼の苦悩の深さを物語る。そして敬虔なカトリック教徒だった彼が若き日に抱いた「罪人を殺すことは罪ではないのか」という思いと終生闘い続けることになる。フランス革命の自由と平等の影に隠れた1人の男の物語。
ちなみにシャルル-アンリは『スティール・ボール・ラン』の主人公ジャイロ・ツェペリのモデルでもあるので、ジョジョ好きも要チェックだ。

◆ 『γーガンマー』荻野純(ジャンプ・コミックス/集英社刊)
この漫画、ヒーローものなのに攻めてくる敵がびっくりするくらい地味! そしてヒーローたちはいつも悩んでいる。
つまるところヒーローだって人間。5人組の戦隊に後から加入すれば人間関係の悩みもあるし、いくら敵が悪い奴だといっても殺すことには抵抗感がぬぐえなかったりする。
そんなヒーローの相談にのるのが「地球防衛軍相談課」のミユキ(爆乳)とユリ(薄乳)の美人姉妹。「ユリちゃんのためなら地球を滅ぼす」とか言っちゃうミユキと、ツンデレで口が悪いがヒーローを愛するユリがへたれヒーローを叱咤激励しながら闘う姿はかわいくてカッコいい。第3話で登場する猫っぽいボディスーツの女の子ヒーロー・ライトブライトもレギュラーになってますます華やかに。
ヒーローものなのにちょっと百合っぽかったりしてちょっとお得感もある本作。闘うヒーローとか、内股立ちの女の子とか、女の子にしかられるのが好きな方は必見!

◆ 『花鬼扉の境目屋さん』オイカワマコ(ゼノンコミックス/徳間書店
失敗した人がいたら、あきるくらい「大丈夫」っていってあげたくなる漫画だ。
花鬼扉と呼ばれる襖を通って人間界にやってくる妖怪たちはそれぞれ不安を抱えてやってくる。馬鹿力で人に怪我させてしまわないかと怯える者、人間に変身することができない者。そんな彼らを優しく迎え、できるまで練習に付き合い独立させるのが境目屋・花房の仕事。
妖怪たちがどんなに失敗しても花房はニッコリ笑って「大丈夫」と口にする。人間界で生きる妖怪たちは人の姿に化けなければならない。花房はその一言でありのままの姿で生きられない妖怪たちの元の姿も失敗も丸ごと肯定する。
心優しい妖怪たちとのふれあいを描いたほっこりストーリー。『夏目友人帳』や『ディア マイン』などの高尾滋作品が好きな人にオススメ!

今回オススメした5作のうち、『王様達のヴァイキング』、『さよならソルシエ』、『γーガンマー』、『花鬼扉の境目屋さん』の4作は初連載作です。一方デビュー23年のベテランが描く『イノサン』。どれもまだ第1巻。スタートしたばかりの今が狙い目!
(松澤夏織)