朝井リョウの直木賞受賞後第一作『世界地図の下書き』が刊行されました。14日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、他の作家とは少し違った朝井さんの執筆風景を紹介しました。

 朝井さんは、現在、一般企業でサラリーマンとして働いています。執筆にあてる時間はそう多く確保できないため、出社前後は執筆にあてる貴重な時間。朝7時台、ハンバーガーショップを訪れた朝井さんは、ノートパソコンを広げて、出社予定時刻の9時まで執筆に集中しています。

「作家らしい作家にはなりたくない」

 こう語る朝井さん。サラリーマンとしての生活や、レストランでの執筆活動は、他の作家とは一線を画すスタイル。それは、普通の感覚を保ち続けたいという朝井さん独自の考え方があるからです。

 直木賞受賞作『何者』の登場人物たちは、就職活動中の大学生。ツイッターのつぶやきがこの世代の若者に大きな影響を与える様子を表現しました。同作執筆中の朝井さんは社会人一年生。自らも就職活動を体験したことから、説得力のある作品となりました。

 映画化された『桐島、部活やめるってよ』は、早稲田大学在学中の作品。高校のバレー部の頼れるキャプテン・桐島が突然退部したことで、心がゆれ動いた高校生5人の姿を描いています。「高校生って日常そのものが結構事件の連続だったというか、毎日生きることに精いっぱいだった」と、高校時代を語る朝井さんにとって、こちらの作品も自身の経験が執筆の題材となったことでしょう。

 『世界地図の下書き』は、養護施設「青葉おひさまの家」で暮らす子どもたちの物語。取材のために、施設の職員から話を聞いたというものの、「僕は継続的にこの問題に携っていく専門家ではないので、無責任な気がしてそれはできませんでした」という理由から、子どもたちへの取材は行わなかったとのことです。

 小学生の大輔は、突然の事故で両親を亡くしてしまい同施設に入ることに。悲しみで心を閉ざしていた大輔ですが、同じ部屋の仲間の支えもあり、徐々に打ち解けていきます。そのなかでも母親のように優しい高校生の佐緒里は、みんなにとって特別な存在。そんな彼女が施設を卒業する時、4人の子どもたちは、ランタンに願いを込めて空に飛ばす「蛍祭り」を復活させようと、作戦をたてはじめるのです......。

 同作でのカバーイラストは、スタジオジブリの近藤勝也さんによる特別描きおろし。読んで楽しい、眺めても楽しい一冊となっています。



『世界地図の下書き』
 著者:朝井 リョウ
 出版社:集英社
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