「日本映画週間」では、12本の日本映画が上映された【撮影/大橋史彦】

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2006年に中国移住。蘇州、北京、広州、そして08年からは上海に在住。情報誌の編集長を務める大橋さんの中国レポート。今回は、政治的な軋轢で上映機会が急激に減った日本映画が「第16回上海国際映画祭」に登場。中国の若者たちは日本映画を、そして日本をどう見ているのか……。

『あなたへ』の舞台あいさつはほぼ満席

 中国を活動の拠点としている日本人タレントが何人かいるが、昨年の尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題以降、テレビ出演が取りやめになるなど、芸能関係への影響は小さくない。なかには、中国を離れたタレントもいる。

 テレビで日本のドラマが放送されなくなり、映画館から日本映画が消えてから久しい。そんななか、約1週間という期間限定ではあるものの、日本映画が上映された。6月に「第16回上海国際映画祭」が開催されたからだ。

『爆心 長崎の空』がコンペティション部門に出品されたほか、映画祭に合わせ、「日本映画週間」が例年どおりに実施された。同イベントは昨年、一昨年は北京でも行なわれたが、今年は日中関係悪化の影響か、上海のみの実施となった。

 12本の日本映画が、上海市内の15の映画館で上映された。上映初日には各作品で舞台あいさつが行なわれたので、筆者は『あなたへ』が上映された人民広場近くの映画館に足を運んでみた。

 チケットは完売で、会場はほぼ満席だった。主演の高倉健は中国でも知名度が高く、中国の検索エンジン「百度(Baidu)」が提供する「百度百科」の解説によると、主演作品『君よ憤怒の河を渉れ(中国名:追捕)』は、文化大革命後に中国で公開された初めての外国映画だという。

 舞台あいさつには来ないものの、高倉健を目当てにこの映画を見にきている古いファンも多いのではないかと思っていたのだが、客層を見ると意外に若者が多かった。

高校時代に見た黒澤明作品がきっかけで日本映画のとりこに

 開場前、たまたま目の前にいたカップルに声をかけてみた(実際には高校時代の同級生で、ただの友だち同士とのこと)。レオと名乗る男性(24歳)のほうがとくにこの映画に興味があったそうだが、目当ては高倉健ではなく降旗康男監督だった。

 降旗監督の作品はよく観ていて、なかでも『あ・うん』が好きだという。女性のニックネームはロビンで、日本の恋愛映画のファンだ。

 レオさんは降旗監督作品だけでなく、普段から日本映画をよく観ている。きっかけは、高校時代に観た黒澤明監督の作品。戦国時代に興味があったからだ。日本人が『三国志』にはまるような感覚だろうか。

  以来、日本映画のファンになり、昨年の日本映画週間にも足を運び、『ALWAYS 三丁目の夕日'64』を鑑賞したそうだ。私も当時会場にいて、日本の60年代の物語を中国人が観てはたして面白いのだろうかと疑問に思っていたのだが、それなりに受けていたのが意外だった。

 今年の上海映画祭では、生誕110年である小津安二郎監督の作品も上映された。あいにくチケットは完売で取れなかったが、ふたりが観に行くというので、後日、話を聞いた。

 会場は満席で、若者も少なくなかったという。半世紀も前に撮られた日本映画を、中国人たちはどんな思いで鑑賞していたのだろうか?

  小津映画の魅力は、「『映画はドラマだ。アクシデントではない』という小津監督のひと言につきる」とレオさんは語る。何気ない日常のなかのドラマが受け入れられる。それは、長年経済成長を追い求めてきた中国が、成熟社会のとば口に立とうとしている表われなのかもしれない。

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