民主党が政権交代を果たしたとき、コンクリートから人へという言葉が使われた。参院選で自民党が圧勝し、衆参のねじれが解消されて、自民党政権は盤石となったことで、再びコンクリートへと税金が費やされる「国土強靭化計画」が実行される。自民党総務会長代行・二階俊博衆議院議員のおひざ元である和歌山県新宮市の、コンクリートにお金を費やしている現場へ作家の山藤章一郎氏が赴き、報告する。

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 タテ棒、ヨコ棒を交互に引き、「正」の字にして勘定する。海ぎわの旧道に向かった乗用車は264台、バス3台。新しくできたバイパス新道には、176台、バス5台。旧道が、86台多い。午後3時から30分、交通の分岐点になるガソリンスタンド脇の空き地でかぞえた車の量である。

 新道は〈国土強靭化総合調査会〉会長〈二階俊博〉元・経産大臣肝煎りの道で、「二階バイパス」「エルメス道」と呼ばれている。〈エルメス〉ほどカネのかかる高価な道だと、誰かがいいだした。

 民主から自民になって列島は建設ラッシュに沸き、参院選自民圧勝で、更に、トンネル、橋、ハコもの、道路の改修、新設事業が加速し始めた。

「やっぱり人からコンクリートへ」

 国交省は今後50年間で200兆円のインフラ整備費を試算している。200兆円とは、45兆円を借金=国債で埋めているいまの国家予算93兆円の倍額である。しかも二階は「そんなんじゃ足りんだろ」といっている。

 無料の自動車専用道路の〈二階バイパス〉。現在は8.9キロ。全部完成すると15.2キロになる。あとで走るが、「あっ」という間に行きすぎる。信号の停車などを含めて昼間で、下は18分かかる。バイパスは7分40秒。その差、10分20秒の「あっ」。しかも交通量そのものが旧道より少ない。

 本州の南端、和歌山県新宮市、海沿いの国道42号線の渋滞を解消する名目のバイパスだった。だが目的はもっと先にある。

 地元で「メシア」(救世主)と呼ばれる二階はここを起爆点に、いずれは〈紀伊半島一周高速道路〉をと、悲願している。ところがたとえば、神社前で地元観光社の営業所を任されている田中さんに、あまり夢はない。

「陸の孤島に何千億もひっぱってきてくれてありがたいわな。しかし、バイパスのおかげで通り過ぎる人ばっかりで商売あがったりです。大先生に申し訳ないが、少子高齢化、ますますこの孤島に人がおらんようになる。それでも、新しい高速道路が要りますのか。市の財政も火の車やいいますし」

 新宮市の長期借入金=市債は、累積226億円。

※週刊ポスト2013年8月9日号