くすぶり続けるユーロの債務危機の中、ユーロを牽引してきたドイツでは秋に総選挙が予定されている。為替相場にも大きな影響を与えるだけに、個人投資家としては、その行方が気になるところ。キャリア30年の元外銀ディーラーでFXプロフェッサーの異名を持つ鈴川克哉氏が、選挙の行方について解説する。

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 この秋、事実上ユーロを引っ張ってきたドイツの総選挙が実施されます。これまで懸命にユーロを守ってきたメルケル首相率いる連立政権にとって正念場となります。

  ドイツ国民にとっては、これまでギリシャ、アイルランド、ポルトガル、キプロスなどの国々に注ぎ込んできた数十億ユーロはほとんどがドイツ人の税金であり、自分たちが必死に働いて稼いできたお金です。イソップ寓話にあるように勤勉なアリが遊び呆けてきたキリギリスに、果たしてこれからも手を差し伸べるべきなのか、国民の審判が下ります。そしてドイツ国民の中には不満がたまってきているのも事実です。
 
 ドイツの指導者、あるいは産業界にとってはユーロ圏の覇者に留まり、ドイツマルク時代よりも大幅に安いユーロを武器にして自国の経済の成長を図ることは、輸出大国ドイツとしては十分理にかなったことではあったのですが、一般の国民感情はまた違った側面を持ちます。ドイツの景気状況もお世辞にも改善しているとはいえません。

 もちろんユーロ圏の中では一人勝ちではあり、2013 年も何とかプラス成長は維持できそうな予想にはなっていますが、それはドイツ国民の類稀なる勤勉さからきているものであり、国民自身の中に真にユーロ圏に留まっていることからくる豊かさの実感はあまりないのです。

 ドイツにおいても既成政党の政策に見切りをつけて、反ユーロ、ドイツマルク復活を掲げた新しい政党の動きが出てきており、まだ少ないとしながらも支持者がでてきているようです。

 今のところ、メルケル首相に対するドイツ国民の信任は厚く、人気も衰えてはいません。しかし、ここにきて、ドイツ主導の緊縮財政策への批判がIMF(国際通貨基金)、欧州委員会等からもでてきており、メルケル首相に対する風向きも変わりつつあります。今後、緊縮財政を続けることが本当に経済回復につながってゆくのか、欧州の国々のみならず世界中で議論がなされてゆくことと思います。

※マネーポスト2013年夏号