米ツアーでも勝利のニオイを感じさせる松山に求められるものとは(撮影:米山聡明)

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 全米オープン、全英オープンで続けざまにトップ10入りを果たした松山英樹が、今度は米ツアーのカナディアンオープンで16位になった。いずれにおいても共通して見て取れたのは、彼の回復力だった。
カナディアンオープン最終結果
 全米オープンでは3日目にやや沈んで最終日にカンバック。全英オープンでは3日目にスロープレーの1打罰を受けるショッキングな出来事に遭遇しながら最終日は見事にカンバックした。
 そして今週のカナディアンオープンでは3日目も最終日もラウンド前半あるいは半ばにスコアを落としながら、終盤にイーグルやバーディを奪い返すカンバックを見せた。
 「(一時は)40位前後から、よく戻って来れたかな。トップ20に入れたので、最後まで諦めずにやって良かった」
 最終日。ショットが不調で4番ではボギー、8番では第2打を木の下の茂みの中に打ち込んでアンプレアブルとしてダブルボギー。「前半は苦労した」。だが、パー5の13番では2オンに成功してイーグル。15番、16番は2連続バーディと盛り返した。
 「13番で狙っていったことで気持ちが乗ってきた。気持ちが乗ってきたことで、最後までうまく打てた」
 悪い流れの中でじっと耐え、きっかけを待って一気に好転させる。松山のそんな回復力は、ここ3試合すべてにおいても見事だった。そして、復活のきっかけとなったのは、ある一打、ある一瞬であり、しかも技術的なことではなく、そのときの「気持ち」だった。
 メンタル面で流れを変えられるということは、すでに技術面の完成度がかなり高いことを意味するわけで、気持ちで流れを変えることができる松山の技術は、すでに米ツアーでもメジャーでも十分に通用するレベルであることが実証されたと言っていい。
 こうなってくると、ついつい次なる期待を膨らませ、回復力ばかりではなく維持力もあるのだろうかという興味を抱いてしまう。落ちても這い上がる力があることはわかった。けれど、リードや上位を維持する力は、現状では世界のどのあたりに位置しているのだろうか、と。
 メジャーや米ツアーにおけるトップ20、トップ10は立派な成績だ。だが、勝利の二文字を嫌でも感じる激しい優勝争いになったとき、ゴルファーの精神状態は様変わりする。そうなったときの「気持ち」が、どう技術や流れに影響を与えるのか。それが勝利に辿り着けるかどうかの最後の関門になる。
 ブラント・スネデカーは最後には余裕の笑顔さえ見せながら通算6勝目を挙げたけれど、彼だって勝利を意識した途端、すっかり崩れてしまう苦い経験を過去に何度も味わってきた。その典型は08年のマスターズ。3日目に首位に立ちながら最終日は連続ボギーが止まらなくなり、大崩れ。悔しくて悔しくて、大勢のメディアの前で号泣した彼は「あの経験があったからこそ僕は強くなれた」と常々言っている。
 松山は今週、2日目終了時点では優勝の可能性を本気で感じていた。だが、勝利を意識しながらスタートした3日目、巻き返して少しでも順位を上げたかった最終日は思うようにスコアが伸ばせなかった。それは、なぜだったのか。
 松山自身は技術面の原因こそがすべてだと感じていた。「ショットがあそこまで悪いと何やっても……」「アプローチも全然足りない」。3日目は悪天候による悪コンディションも一因になっていた。が、本人も気づかぬうちに「勝利への意識」が悪戯をしていた可能性は高い。
 米ツアーに漂う勝利のオーラは格別だ。そのオーラにどこまで影響されずにいられるかがカギになる。日本では「いい意味で鈍感」なんて呼ばれた松山だが、米ツアーでは、上位に行けば行くほど、勝利に近づけば近づくほど、もっともっと鈍感になることが必要なのだろう。精神面は図太く、技術面は繊細に。松山のそんな変貌変化は、今、すでに始まりつつある。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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