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乗り鉄、撮り鉄、録り鉄、模型鉄……。鉄道趣味もいろいろなジャンルがある。当連載では、その中でも「乗り鉄」の楽しみ方を紹介したい。これから「乗り鉄」を始める人への手ほどきや、「乗り鉄」を楽しく便利にするアイデアも盛りだくさんでお届けする予定だ。

○「乗り鉄」は鉄道趣味の元祖!?

さて、「乗り鉄」について筆者なりにまとめると、たとえばこんな人たちだ。

・完乗タイプ: 旅客列車が運行される路線のすべてに乗りたい

・完駅タイプ: 旅客列車が停車するすべての駅で乗降りしたい

・車両タイプ: 現役の鉄道車両のすべての系列に乗りたい

・特急タイプ: 現役の特急列車・優等列車のすべてに乗りたい

・海外タイプ: 入国できるすべての国の主要列車に乗りたい

上記に当てはまる人は、「乗り鉄」の中でも「濃いほう」だ。ちなみに筆者は「完乗タイプ」になる。「完駅タイプ」は「完乗」を達成した人に多く、「完乗」を達成した後の目標として、「完駅」の他に「海外」へ向かう人もいる。もちろん、当初から「海外」を志向する人もいる。時間もお金もたくさんかかるほうへ発展していく。

「乗り鉄」とは何か? これに対する筆者の答えは、「列車に乗る行為自体を目的とする趣味」となる。文豪・内田百(ひゃっけん)は随筆『阿房列車』の中で、「なんにも用事がないけれど、汽車で大阪に行ってみよう」と、特急「はと」で旅をする。「用事がない」と書いているけれど、用事は列車に乗る旅そのものだ。

その意味では、明治5(1872)年に新橋〜横浜間で日本初の鉄道が開業したとき、「陸蒸気」の珍しさで列車に乗った人たちは皆「乗り鉄」だったといえる。当時の利用者のほとんどが「乗り鉄」だったとすれば、鉄道趣味で最も古い分野は「乗り鉄」かもしれない。

○「乗り鉄」の扉はいつも開かれている

列車に乗っている人は大きくふたつに分類できると思う。「用事があって列車に乗る人」と「列車に乗ること自体が目的の人」だ。普段、通勤・通学や買い物、旅行などで列車に乗る人を「乗り鉄」とは呼ばない。

でも、たとえば通勤・通学の途中、「いつもと逆方向の列車に乗ったら、どんな景色が見られるだろうか?」とか、「途中の駅から発車する支線の行先が気になるな」と思ったなら、あなたにも「乗り鉄」の素質があるはずだ。

そして会社の帰り、「定期券とは違う電車で帰ってみようか」と思い、実行に移したら、それはもう旅の始まり。帰宅という用事で乗るのではなく、「いつもと違う電車に乗ること」が目的になった。つまり「乗り鉄」だ。

帰省や観光旅行で目的地に向かうときも、「飛行機やバスもいいけれど、駅弁を食べつつ列車に乗ってみよう」となったら、その時点で列車に乗ることが目的に加わっている。その旅を終え、「『乗り鉄』をやってみたよ」と言えば、「たしかに『乗り鉄』だね」と、先輩「乗り鉄」たちも認めてくれるかもしれない。

○乗り鉄の魅力は「好奇心」と「コレクション」

冒頭で紹介した「乗り鉄」各タイプの中で、主流といえば「完乗タイプ」「完駅タイプ」だろう。ただし「完駅」のほうが難易度は高い。最初から「完駅」をめざす人もいて、達成すれば同時に「完乗」となる。それとは逆に、「完乗」を達成してから「完駅」を始める人もいる。そして「完乗タイプ」「完駅タイプ」どちらにも共通の要素がある。「好奇心を満たすこと」と「コレクション」だ。

「好奇心を満たす」とは、まず「行ったことがない場所に行ってみたい」という気持ちから始まる。未踏の路線に乗れば、見たことがない景色に出会える。地図を見て、「この路線はどんな車窓なのだろう?」と思い、それを確かめに行く。これって、家の近所を散歩しながら徐々に行動範囲を広げていったり、ロールプレイングゲームで隅々を探検したりするのと同じ「冒険」の要素があるのではないかと思う。「見知らぬ場所に行けばいいことがあるかも」と考えるのも、人間なら誰もが持ちうる「狩猟本能」から来るものではないか?

一方、「乗り鉄」の「コレクション」とはどういう意味だろうか? 「コレクション」もまた、人間の「採集本能」に起源があるように思う。鉄道の「コレクション」といえば、きっぷを集めたり、車両の部品を棚に並べたり、模型を集めたり……というように、「物集め」を指すことが多い。「乗り鉄」のついでにグッズを集める人もいる。

乗り鉄の「完乗タイプ」「完駅タイプ」のキーワードは、「すべての……」だ。すべての路線・すべての駅を訪問するため、乗った路線や訪れた駅を記録しておく人も多い。これでまだ訪れていない路線や駅が明らかになるので、次の目的地も決めやすくなる。

じつはこの記録こそが、「経験のコレクション」となる。何も買わなくても、グッズでバッグを膨らませなくても、記憶の中に乗車・訪問という体験をコレクションしているわけだ。思うに「乗り鉄」とは、「体験をコレクションする趣味」といえるのでは? トレーディングカードが増えるとうれしいように、列車への乗車・駅への訪問という体験が増えていくのがうれしい。そう置き換えると、「乗り鉄」の魅力も理解しやすくなるだろう。

さあ、あなたの「好奇心」を満たすため、新たな体験を「コレクション」しよう!

(杉山淳一)