泳ぎがヘタ過ぎる魚がいるって知ってた?「曲がれないマンボウ」

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ようやく夏らしさを実感できる時期になった。海やプールで楽しいバカンスを過ごす方も少なくないだろう。

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夏休み限定の人間ならいざ知らず、水の中で一生過ごしながらも泳ぎがヘタ過ぎる魚がいる。普段は海底を歩き回り、危険が迫るとロケット噴射で逃げるカエルアンコウや、ペンギンと同じ仕組みで泳ぐマンボウなど、海中には奇妙な生物がいるのだ。

■カエルのロケット噴射?

カエルアンコウはアンコウらしい丸みをおびた体格と、カエルのような顔立ちをしたユーモラスな風ぼうで、魚でありながら泳ぎが苦手で海底を歩くように移動する。短い腹ビレで海底に立ち、長い胸ビレで手をつくように支え、大きく揺れながらヨロヨロと進むのだ。15cmほどの黄色やオレンジの派手なボディ、あどけない表情、水の流れで大きくバランスを崩しながら歩き回る姿は、海底の癒やし系と言えるかわいさだ。

食事になると、ユルい見ためからは想像できない豹変ぶりを見せる。アンコウのお約束通り、おでこにエスカと呼ばれる提灯(ちょうちん)状の器官を持ち、これをエサに見立てて魚をおびき寄せる。そして近づいた魚にかぶりつくのだが、強力な歯を持たないカエルアンコウはからだを膨らませて負圧を作り出し、掃除機のように水ごと相手を吸い込んでしまうのだ。

この瞬間、口は普段の12倍にも広がり、自分ほどの魚さえまる飲みにしてしまう。しかもわずか0.007秒の早業だから、何が起きたのか気づいた時は魚はすでに胃の中だ。

かわいい顔して大食いの早食いでは、合コンでドン引かれる。

普段は悠々(ゆうゆう)自適に海底を歩き回るカエルアンコウも、緊急時には意外な俊足をみせる。わきの下から噴き出すロケット噴射で逃げるのだ。

魚は口から水を取り込み、酸素を取り出した後の不要な水がエラから出ていくのが一般的だが、カエルアンコウは胸ビレの付け根にある鰓孔(さいこう)から吐き出す構造になっている。身の危険を感じたり遠くに移動したい時は、この鰓孔から水をブシューと吹き出すロケット噴射で、上がって登って海を貫いて、スクランブル発進するのだ。

ヒレを使わないので身をくねらせることもなく、そのままの姿勢で滑るように水中を泳ぐ。推進剤である水を取り込むために、ときどき口をパクパクさせるだけで、動きもなく進む様子はさながら魚雷だ。ただし抵抗が多い丸型ボディのせいか着地は苦手なようで、顔面強打のシーンも少なくない。

器用なのか不器用なのかよく分からないが、食事シーン以外は癒やされるので不問としよう。

■曲がれないマンボウ

水族館で人気のマンボウも、実は泳ぎが大変ヘタだ。魚は尾びれの推進力で泳ぐのが一般的なのに対し、マンボウは尾びれを持たない。最後部のひれは舵(かじ)びれと呼ばれ、その名の通り向きを変える役目しか果たしていないのだ。

それではどうやって泳ぐの?と思うのは当然で、上下対照に高く突き出した背びれと尻びれで推進力を生み出す。ちょうど羽根をバタつかせて水中を泳ぎまわるペンギンと同じ要領だ。これで全長3m、縦4m、体重2トンほどの巨体を、時速2kmと歩くよりも遅く移動させる。せっかく舵びれを持ちながらも急な方向転換ができず、水槽に激突して死んでしまうため、水族館では内側にクッションやフェンスが必要アイテムだ。舵を持ち、ゆっくり泳ぎ、それでも曲がり切れずに激突死と、ため息が出るほどマヌケな一面は、まさに癒やし系の鑑(かがみ)だ。

緩慢な動作に似合わず、海面から3mも飛び上がるシーンも目撃されている。これはからだを水面にたたきつけて寄生虫を払いのけるためで、軽自動車2台分ほどの体重を海面に跳ね上げる瞬発力も持っている。

ただし水槽と同じように、着水時の衝撃で激突死することもあるから穏やかでない。いくら健康のためでもむちゃは止めなさい、と言いたい。

■まとめ

鳥のはばたきに近いマンボウは、エイのような水平の身体が理にかなっているように思えるし、カエルアンコウもロケット水流で思う存分狩りをすれば良さそうなものだが、事実は小説よりも奇なりだ。

海中には不思議な生物がまだまだ存在する。水圧に阻まれた海こそ、人類に残された最後の開拓地かもしれない。

(関口 寿/ガリレオワークス)