マンションやアパートなどの集合住宅に「音漏れ」はつきものだ。テレビや洗濯機、ドアの開け閉めなど、隣室の音が響いてくることは多い。「もう少し、静かにしてくれないかな」と不満に思った経験がある人も少なくないだろう。

一方で、自分が出した音が隣室に響いてしまい、クレームを受けたことがある人もいるかもしれない。クレームの方法は、面と向かって言われる場合もあれば、手紙がポストに入っている場合もあるだろう。だが、そういう直接的な方法でないときもある。それが「壁ドン」だ。

壁ドン」とは、その名の通り壁を突いてドンと音を立てることだ。特に、隣室の騒音に対して抗議する意味合いで使われることが多い。壁から突然大きな物音が聞こえれば、相当のプレッシャーにはなる。

しかし、自分自身がうるさく騒いでいたのならばともかく、心当たりがなければどうしようもない。こんな意味不明な「壁ドン」をされたときは、どう対応したらいいのか。目には目をということで、「壁ドン」をやり返したらいいのか。また、そもそも「壁ドン」は抗議の方法として有効なのか。集合住宅での騒音トラブルの対処法を村頭秀人弁護士に聞いた。

●第三者を交えて「冷静な話し合い」を

「隣室の騒音に対して『壁ドン』をするのは、非常に不適切な対処方法です」

村頭弁護士は、こう断言する。その一番の理由は、『壁ドン』の意図が相手に正確に伝わるとは限らないからだという。

「『壁ドン』をされた人からしてみたら、単なるいたずら嫌がらせなのか、あるいは騒音への抗議の意味なのか、全く判別がつきません。もし抗議だと受け取ったとしても、自分が具体的に何を要求されているのかはわかりません」

確かに、万が一いたずら嫌がらせだと受け止められたら、逆にトラブルを呼び起こす結果になりかねない。では、もし自分が「壁ドン」をされた側だったら、どうすれば良いのか。村頭弁護士は冷静な対処が必要だとして、こう指摘する。

「自分も同じことをして対抗しても、話がこじれるだけです。『壁ドン』をされた側としては、まず相手とコンタクトをとって、冷静に話し合いをするのがよいでしょう」

しかし、壁を殴ってくるような相手と直接会うのは、怖い気もする。村頭弁護士も「できるだけ、第三者に立ち会ってもらうほうがよい」とアドバイスをする。「相手が激昂して暴力をふるうということもあり得なくはない」「どんな話し合いになるとしても、その内容についての証人がいたほうがいい」というのがその理由だ。

そうはいっても、そんなに都合良く「第三者」が現れるものだろうか。村頭弁護士によると、こういう場合は、まず賃貸住宅であれば大家、区分所有住宅であれば管理組合の理事など、関係者に連絡をとるべきだという。そしてもし、そのような人が立ち会ってくれなければ、「住んでいる自治体の公害苦情処理相談担当者」に頼るという手もあるということだ。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力弁護士】
村頭 秀人(むらかみ・ひでと)弁護士
平成12年弁護士登録、平成21年〜24年東京弁護士会公害・環境特別委員会委員長、平成25年4月より東京都環境審議会委員。著書「騒音・低周波音・振動の紛争解決ガイドブック」(慧文社、平成23年)
事務所名:畑・植松法律事務所
事務所URL:http://www.kougai-law.jp/