ソニーやシャープなど、業績不振に喘ぐ家電大手で“再生の切り札”として抜擢されたのが50代の若手新社長たちである。しかし、それぞれ思うような結果を得られていない。

 パナソニックの津賀一宏社長(56歳)も例外ではない。プラズマパネル製造からの撤退など、聖域なき津賀改革は順調に進んでいるかにみえるが、「抵抗勢力も大きい」(経済紙記者)という。そこで、大改革にあたって頼みとしたのが創業者・松下幸之助の威光である。

「あるインタビューで、テレビ全盛時代の終焉したパナソニックをどう立て直すか、と聞かれた際に『これからうちは松下幸之助がやってきたようにドブ板で泥臭く生活に密着したものを売っていく』と答えた」(前出の記者)

 津賀社長は就任以降、松下幸之助の著作を読み漁っているという。今年1月、米国で開かれた家電見本市の講演でもこう述べた。

「パナソニックが予想外の姿に形を変えても、創業者のDNA、お客様大事の心は変わらない」

 松下幸之助翁もやっていたんだから皆も従え──そう言わんばかりの津賀社長には、技術畑出身で社内人脈を十分に築けないままトップの座に収まることになった50代社長の苦渋が感じ取れる。岡山商科大学教授の長田貴仁氏がいう。

「最近まで、終身雇用、年功序列がまかり通ってきた企業において、50代経営者がリーダーシップを発揮するのは難しい。57歳の豊田章男社長が世界的大企業トヨタをうまくマネジメントしているのは、はっきりいえば創業家の血を引くから。

 皆が反対しているなか社長ひとりが経営判断を下したとしても、『しょうがないな、豊田家の出身だから』で周りは納得する。でも『しょうがないな』がサラリーマン社長には通じない」

 サラリーマン社長にとって創業家の支持を得ることが何よりのバックアップになる。カリスマ経営者・森稔氏の後を継ぎ森ビルを率いる辻慎吾社長(52)も、「自分と創業家は一体なんだ」とアピールすることによってマネジメントを振るう下地を作ったという。長田氏が続ける。

「ただし、創業家の後ろ盾がないと50代社長が輝けないようではあまりに日本経済の展望は暗すぎる。めまぐるしく経済状況が移り変わる現代、60代の経験値よりも、若い人間の決断力や判断力が必要とされているのは間違いない」

 既に金融業界では三井住友銀行の国部毅頭取(59)、大和証券グループの日比野隆司社長(57)、野村HDの永井浩二グループCEO(54)など次々に50代社長が誕生し、それぞれ手腕を発揮している。

 家電業界も50代経営者の力を生かせないようなら未来はない。

※週刊ポスト2013年8月2日号