映画『31年目の夫婦げんか』デヴィッド・フランケル監督にインタビュー/“冷めた恋心を燃え上がらせる方法”【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、メリル・ストリープ、トミー・リー・ジョーンズの共演作『31年目の夫婦げんか』です。熟年カップルのラブストーリーですが、みんなにもオススメ! この映画は、あなたとパートナーのウン年後の姿かもしれないのです。

結婚して31年目を迎えた夫婦。妻ケイ(メリル・ストリープ)は、長年連れ添った夫アーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)との関係に不満を募らせています。食事の時間も会話はなく、夜はダブルベッドなのに別々に寝ているようなよそよそしさ。いわゆるセックスレスであり、毎日同じような日々の繰り返しにケイはうんざりしているのです。アーノルドと昔のように……と思うものの、夫はそっけない。ふたりの関係を改善すべく、ケイはアーノルドを誘ってカウセリングを受けることになりますが……。

監督は、あの『プラダを着た悪魔』や人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のデヴィッド・フランケル監督。女性心をしっかり掴んだ演出は、この映画でも生きています。そのフランケル監督が来日。記者は監督にインタビューすることができました。

会話のないケイとアーノルドの姿は「え、アメリカの夫婦もこんな風にスキンシップしなくなっちゃうの?」と意外で「日本的な夫婦ですね」とフランケル監督に話しました。すると監督は「それは大いなる誤解だね(笑)」と。

「アメリカの夫婦の間でも、長い沈黙が家庭に流れるなんてよくあることさ。アメリカにはね“壊れていない物は直す必要がない “という言葉がある。あえて問題を明らかにしなくてもいいじゃないかということ。アーノルドはまさにそれさ。“文句をいうな、だまっていろ!” というタイプなんだ」

アメリカの夫婦は何でも言い合うというのは思い込みだったようです。でもなぜこんなに冷め切っちゃったのでしょうか?

「特別な理由はないと思う。子供を育てたり、仕事を一生懸命したりしているうちに、愛情より現実が上回ってしまい、夫婦だけで楽しむことがなくなり、距離が離れていったんだろう。

でも、こうなると元の関係に戻るのは実に難しいんだ。だからケイはカウセリングを受けようと夫を誘ったんだね。カウンセラーに “寝るときにベッドで抱きしめあうように” と指示されたアーノルドが “そんなこと強制するな。猿のしつけじゃあるまいし!” と怒るけれど、関係を修復するためには、自然発生的にそういう気持ちになるのを待っていてはダメなんだ、きっかけを作らないと。そうすれば、そこから動き始めることもあるんだよ」

なるほど〜。セックスレスな熟年夫婦だけでなく、倦怠期の恋人同士にも効き目のあるアドバイス。「彼とちょっとマンネリっぽい……」と思ったら、手を繋いだり、腕を組んだり、初心に戻ってスキンシップすれば、新鮮な気持ちが蘇るかも。さすが監督、わかってらっしゃる!

そのフランケル監督、女性の仕事と人生のバランスに大いに興味を持っているんだそうです。

「セックス・アンド・ザ・シティ」はまさにそれを描いた物語だったね。テーマは女性の愛情、セクシャリティ、友情だ。『プラダを着た悪魔』は女性の野心がテーマだった。ボスに復讐するヒロインの映画だと思っている人がいるかもしれないけど、僕にとってあの映画のヒーローは、メリル・ストリープが演じた編集長ミランダだ。常に高みを目指して仕事をしていると、その対価として何かを失うこともある。『プラダ〜』ではそれを描いたんだよ」

「セックス・アンド・ザ・シティ」のキャリーは愛を求め、『プラダを着た悪魔』のアンドレアは一人前の編集者を目指し、ミランダはより高みを見据えていました。そして『31年目の夫婦げんか』のケイは「夫ともう一度結婚して、幸福になりたい」と夫の愛を求めています。

そして、自ら行動を起こし、努力して願望を手に入れるヒロインたち。フランケル監督作のヒロインには、そんなアクティブな女性が多く、彼女たちに共感できるのは、手に入れるまでのプロセスにリアルなドラマがあるからです。

『31年目の夫婦げんか』も、熟年とはいえ、女性ならケイの気持ちがわかるはず。止まった愛を再び動かす方法が、この映画にはつまっているのです。
(映画ライター=斎藤 香)

『31年目の夫婦げんか』
2013年7月26日公開
監督:デヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、トミー・リー・ジョーンズ、アーノルド・ソームズ、スティーヴ・カレル、ミミ・ロジャース、エリザベス・シュー、ジーン・スマートほか
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