「プレゼンテーション」が世界的なブームで、NHKでもプレゼンから英語を学ぶ番組「スーパープレゼンテーション」がスタートして人気が高まっている。プレゼンが上手くなりたい人へ、大前研一氏が過去のプレゼン経験からうまくいくコツを解説する。

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 かつてマッキンゼー時代に私は、創業者社長や国家指導者にプレゼンを行なっていた。その場合は大半が当該問題に対する相手の知識が全くない場合に有効な、プロブレム・ソルビング・アプローチ(問題解決手法)やロジカル・シンキング(論理思考)によって基礎的な情報を積み上げ、理解を植え付けながら一つの結論に導くピラミッド・ストラクチャーを用いていた。

 これはかなり時間がかかるやり方で、マレーシアのマハティール首相(当時)と全閣僚を相手にマルチメディア・スーパーコリダー建設計画の最終プレゼンをした時は、私1人で休憩なしに6時間も話し続けたほどである。

 しかし、最近の経営者は自分の任期を過怠なく務め上げればそれでいいという部課長のようなメンタリティのサラリーマン社長が多い。そうなると、ピラミッド・ストラクチャーとは違うプレゼン手法が必要になる。

 つまり、彼らは不安や疑問を解消するための言葉を求めているので、一から説明するのではなく、まず相手の疑問や質問を引き出して、「社長が懸念されている問題は、この対策で解決できるから大丈夫です」と不安を払拭し、意思決定を促さねばならないのだ。

 これは相手が多数の場合も同じである。たとえば、聴衆が初歩的な知識を共有していない場合は、基礎的な情報を積み上げて理解を重ねていく前述のピラミッド・ストラクチャーを使えばよい。

 だが、聴衆にそれなりの知識がある場合は、共通理解の植え付けを最初の2割に抑え、次の4割で「一般にはこういわれていますが、実は……」と自分の視点で新しい知識を提供しなければならない。相手が知っていることを長々としゃべっていると、「何だ、俺の知識と大差ないな」と見下されてしまうからだ。

 もう一つのコツは、残りの4割を「Q&A」に充てることだ。聴衆の疑問や質問に答えることで、満足度は一気にアップする。

 ただし、Q&Aでは一定のテクニックが必要になる。自分が得意な領域を質問された場合は「ザッツ・ア・グッド・クエスチョン」「ディフィカルト・トゥ・アンサー」と、質問者を褒めてから答える。そうすると相手は「いい質問をしたぞ」と思って気分が良くなる。

 一方、自分がよく知らない領域の質問が出たら、正直に「アイ・ドント・ノー」と答えたほうがいい。生半可な知識で答えてはいけない。答えざるを得ない時は、自分が答えられる質問にリデファイン(再定義)してから答えるのがポイントだ。

※週刊ポスト2013年8月2日号