「人生90年」時代が近づいている。定年後を安泰に過ごせるかどうかのカギを握るのは、ズバリお金の備えだ。「老後は年金があるから安心」という神話が崩れ、インフレの足音も近づきつつあるなかで、定年前から資産設計を考えておくことが肝心だ。現役時代にどれだけ蓄えをつくっておけば安心なのだろうか。

『老後難民 50代夫婦の生き残り術』の著者で、フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏はこう語る。「退職金をある程度望めるとしても、それ以外に3千万円程度の金融資産が用意できないと、老後の生活費をまかなうことは難しいかもしれません」。

 研究所では、総務省の家計調査をもとに、世帯主が55〜59歳の世帯と65歳以上の世帯の支出を比較した。その結果、年金暮らしになっても、生活費は現役時代の68%程度かかるという。それを前提にすると、老後は公的年金以外に約5600万円ものお金が必要という計算になるが、退職金収入に加えて老後も資産運用をしていれば、その額は小さくなる。結果として、3千万円が目安になるという。「必要額3千万円」というのは、多くのサラリーマンが実感している額と、そう異なってはいないようだ。

 今年4月、研究所ではサラリーマン約1万人を対象に「退職準備の度合いと資産運用」というアンケートを実施した。それによると、「年金以外に退職後に必要となる資金」の回答額の平均は3016万円だった。

「1千万円では足りなそうだが、5千万円も用意できないだろう、という感覚が、3千万円という額に収束しているのではないかと思われます」(野尻氏)

週刊朝日 2013年8月2日号