『31年目の夫婦げんか』のデイヴィッド・フランケル監督にインタビュー

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メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズというハリウッドきっての名優ふたりが、結婚31年目の熟年夫婦役を演じた『31年目の夫婦げんか』(7月26日公開)。メガホンをとったのは、メリル出演の大ヒット作『プラダを着た悪魔』(06)のデイヴィッド・フランケル監督だ。来日した監督にインタビューし、メリルとトミーとの共演秘話や爆笑シーンの撮影エピソードについて聞いた。

【写真を見る】メリルがバナナでHのテクニックを研究する爆笑シーン

ケイ(メリル・ストリープ)とアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は、子供たちも独立し、毎日代わり映えのしない生活を送っている。ある日、夫婦の絆を取り戻したいと思ったケイは、結婚生活のカウンセリング本に触発され、アーノルドに“カップル集中カウンセリング”を受けたいと申し出る。メリルとトミーが扮する熟年夫婦がいろんな試練を乗り越えて大奮闘する姿には、時に失笑しつつも、リアルで切実なやりとりに心を揺さぶられる。

フランケル監督は、脚本を読んだ時の感想について「居心地の悪いコメディ」だと思ったそうだ。「あるカップルの秘密を、我々が見る。まるでホテルの部屋に穴があって、それを見ているような感覚の話かなと。でも、いくつかすごく心に響くセリフがあったので、面白いなあと思ったよ」。

監督は、大物スターであるメリルとトミーに対して「ふたりのようにレベルの高い役者さんと仕事をする時は、なるべくいろんなことを言わないようにしている」と語った。「もちろん、前もって自分の考えていることは説明するけど、撮影中は彼らのオーディエンスになることが大事だ。すなわち、彼らの演技を見て、面白ければ笑い、悲しければ悲しい表情になること。あとは、ペースをゆっくりとか、速くとか、声の大小とかは、違うと思った時にだけ発言する。それが一番的確な演出方法だ」。

『プラダを着た悪魔』とはまったく異なるメリルのコメディエンヌとしての才能に、監督は毎日驚かされたそうだ。「最初にセラピーのシーンから始めたんだけど、いきなり5分くらいの長回しを撮ったら、そのまま全てを使えるくらい、素晴らしい出来だった。そこから30テークくらい撮ったけど、それぞれ少しずつ変わっていくのがすごく楽しかった。全然退屈しないし、ビックリしっぱなしだった」。

ケイが久しぶりのHに備え、セックスのハウツー本とバナナを手に、トイレにこもるシーンは爆笑ものだ。「あのシーンは、さすがのメリルもナーバスになっていた。狙っていたのは、笑いを取れるけどリアルなシーン。セリフが特にあるわけではないから、バスター・キートンのサイレント映画の1シーンのように撮りたいと思った。あのシーンもメリルのコメディエンヌとしての才能がいかんなく発揮されたシーンだ。彼女は役になり切ったら、バカバカしく見えたり、もろさを露呈したりしても構わないという勇気を持っている。本当に怖いもの知らずだからこそ、他の役者ではできない演技ができるんだ」。

メリルとトミーが絡むベッドシーンも、どこかぎこちなさがあって微笑ましい。「ふたりが体の位置をどうするかと言い合っていて、ようやく落ち着いたかと思うと、突然シーツの下から腕が一本ニョキッと出てくる。そこはすごく笑えたね。そういうやりとりをまるごと見せたかったので、長回しで撮り続けたんだ。あのシーンを見ても、さすがだなあと感服した。メリルとトミーは、現場で互いにリスペクトし合っていたと思う。だから、本当に長年の夫婦のような雰囲気を出すことができたんだ」。

メリルとトミーが織りなす熟年夫婦の悲喜こもごもに、笑ったり、共感したり、涙腺を刺激されたりする『31年目の夫婦げんか』。見終わった後、温かいものがこみ上げるハートフルな作品なので、是非、大切な人と見てほしい。【取材・文/山崎伸子】