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アンチエイジングという考え方が、すっかり定着した昨今。美しさを保つために、日々、化粧品やサプリメントに気を使っている。だが、美は健康にこそ裏打ちされたもの。美を保ちつづけるためには、健康であることが大事なのだ。

どんなにアンチエイジングに良いと言われることをしても、身体のベースが整っていなければ、その効果は半減してしまう。人は40歳ぐらいになると、身体の衰えを意識し始める。だが、身体は急に衰えるわけではない。30歳までにどのように過ごしてきたかで、身体が持っている本来の力がどれほど発揮できるかが違ってくるし、老化の進み具合も違ってくる。人は30歳ぐらいまでには、生活習慣というものもだいたい決まってくるため、30代で良い生活習慣を身につければ、それを40代、50代と続けていけば、老化しにくい身体になっていく。反対に、30代までに乱れた生活習慣が身についてしまっていると、身体本来の力も低下することになり、老化しやすい状態になるのだ。

20代では分からない、生活習慣と病気の関係

20代というのは、ホルモンも潤沢に分泌されていて、体外から入ってくるものが栄養としてスムーズに反映されやすいため、徹夜など多少無理をしたとしてもすぐに回復できる。ところが30代になり、無理がきかないと感じ始める人も増えるのは、ダメージを修復するためにもともと身体に備わっている再生力が徐々に低下し、生活の乱れがそのまま身体に跳ね返ってきやすくなるためだ。さらに、40代になって体のホルモン分泌量が下がってきたとき生活スタイルが乱れていると、それに対抗する力も修復する力も低下するため、一気に病気になったり、老化したりしやすくなるという。実際に、40代、50代で病気になる人が増えてくるのはそのせいだ。つまり、ホルモン分泌量が低下する年齢を迎える前に、将来へ向けての準備をするという意味でも正しい生活習慣をなるべく早く確立することが大切なのだ。

昨今、日本はもちろん、世界各国で健康への意識がよりいっそう高まりを見せている。その背景には、高度医療の発達により、多くの病を克服することができる時代になってもなお、高額な医療費負担への不安、病を克服した後の生活への不安などから、病気を未然に防ぐ医療、つまり予防医療への関心が高くなってきたためだ。2011年の日本人の平均寿命は、女性で85.90歳、男性79.44歳(厚生労働省発表)。年金制度や健康保険制度が不安定な時代に、いつまでも美しく、自由に、より快適な人生を全うするためには、健康であることが不可欠となっているのだ。

このような時代背景もあり、健康なうちから身体に気を配ることが、ブームの粋を超え日常に定着してきたことは当然の流れ。日本でも、いろいろな健康本、様々な健康法が溢れており、「○○だけで○○になる」という謳い文句のものも多くみられる。「○○だけ」という言葉からは簡単にできそうな印象を受け、つい飛びつきたくなるもの。ただ、ある一点だけを集中して改善してみても実は効果がない場合がほとんどで、多くの健康法が出回ってはすぐに消えていことの理由のひとつにそういった部分があることは否めない。結局のところ、身体の仕組みは、「○○だけ」で改善できるほど単純なものではないのだ。

健康長寿のための“本当の話”とは

そこで、健康長寿のための“本当の話”を集めたのが、7月に発売された『長生きの健康常識はウソばかり 最高のアンチエイジング入門』。ハーバード大学医学部客員教授である根来秀行氏によるものだ。

私たち人間は、何万年にもわたり地球上で生き抜いてきた生物。500から700万年とも言われる人類の歴史の中で蓄積されてきた遺伝子情報には、生きるための知恵が埋め込まれている。そしてそれを基に、身体に備わっている本来の力が発揮されるようにプログラムされているのだ。私たちの身体はこの遺伝子情報を基にした様々なメカニズムによって動いているが、なかでも健康に生きることを司っているのが、自律神経とホルモン。この二つはいわば健康な身体の土台となるもので、身体の“2大制御機構”とも呼ばれている。この機構の働きを最大限に高めることは、人間が本来生まれ持っている再生力、ひいては免疫力を最大限に引き出すことに繋がるのだ。

『長生きの健康常識はウソばかり 最高のアンチエイジング入門』では、基礎編として身体の仕組みを解説したうえで、実際にどうすれば身体の二大制御機能を正しく機能させることができるのかを指南している。

身体の仕組み(特に身体の2大制御機構である自律神経とホルモン、そして免疫の仕組み)を知っておけば自分なりの健康的な生活を志すことが簡単になる。基本を知っておけば、応用が効くというわけだ。現在はカスタマイズ医療+予防医学の時代。ライフスタイルが多様化する今、誰もが同じやり方で健康を維持できるわけではない。例えば、マラソンを趣味としている人やシフトワーカーは、それ以外の人よりも老化が早いとのデータがある。では、自分がそこに該当する場合、何に気をつければいいのか。そんなことが、わかり易く書いてあるのだ。10年後も美しく、若くありたい方には必読の書といえる。

ストレスを抱えずに実行できる、健康への秘訣

また、この本がユニークなのは、理想的な生活習慣の提案とともに、そのすべてを実行できない人のために健康への秘訣もたくさんご紹介していることだ。本書では、「人は健康に悪いと知っていることでも、やってしまう(やらなければならない)生き物である」ということを前提にした解決策も披露してくれている。健康には悪いことでも、それを制限しストイックに生きることで、ストレスという別のトラブルを抱えることになっては本末転倒だという考えからだ。また、健康的な毎日を送りたくても、仕事やライフスタイルの関係でどうしてもそれができない方がいることも無視できない事実だからだ。

きっと、この本を読み終えるときには、自分の身体がどのように機能しているかを知り、その知識を土台に健康長寿のためにご自身には何が必要かを知ることができるはず。もし今この時点で不得意分野があると自認しているなら、そこを補っていく方法を、自分だけのアンチエイジング方法を、ぜひこの本で見つけて欲しい。

(text / june makiguchi)

長生きの健康常識はウソばかり 最高のアンチエイジング入門

著者:根来秀行
 出版社:エクスナレッジ
 1470円(税込)

<根来秀行プロフィール>
日本の医師、医学博士。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、遺伝子治療、長寿遺伝子、時計遺伝子、睡眠医学など多岐にわたる。ハーバード大学医学部客員教授、ブリュッセル自由大学医学部客員教授、ミラノ大学客員教授、パリ大学医学部客員教授を歴任。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。著書多数。