写真左よりカトキハジメ監督、安藤裕章監督、 森田修平監督

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大友克洋の『スチームボーイ』(04)以来約9年ぶりとなる新作『火要鎮(ひのようじん)』を筆頭に、気鋭のクリエイターたちが集結したオムニバス・アニメーション映画『SHORT PEACE』(公開中)。“日本”を舞台にした4つのショートストーリーからなる、今夏注目の作品だ。今回、『九十九』の森田修平監督、『GAMBO』の安藤裕章監督、『武器よさらば』のカトキハジメ監督のインタビューが実現!各々が手がけた作品について、そして、巨匠・大友克洋についても話を聞いた。

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CMでも話題を呼んだ「FREEDOM」で、CGを駆使した映像表現を追究した森田監督。『九十九』は、山中の祠で“付喪神(つくもがみ)”と出会う男を独特の映像で描いた、味わい深い作品になっている。「自分の劇場企画などがなかなか通らなくて、もやもやしている時に声をかけていただいたので、二つ返事で『やりたい!』と参加しました。10分という枠組みだけ決まっていたので、あとは好きなことをやってみようと。“妖怪もの”というとバトルみたいな描かれ方が多いのですが、実際に調べてみると人の陰に隠れているとか、部屋の隅っこにいたりとか、エロかったりとか…(笑)、そんなキャラクターを描きたいと考えていました。淡々とした滑稽さやおかしさのような、じわじわくるおもしろさがうまく出せたんじゃないかと思います」。

『鉄コン筋クリート』(06)の演出を務めた安藤監督は、「一番最初に関わったアニメの仕事がオムニバス(大友克洋総監督の『MEMORIES』(95))だったなぁと思い出しながら、奇しくもまた同じような企画に参加させてもらえ、うれしい限りです」と振り返る。『GAMBO』は、原案・脚本・クリエイティブディレクターを石井克人が手がけ、キャラクターデザイン原案に貞本義行が参加した作品。巨大な鬼と熊が戦う、インパクト大なバイオレンス作に仕上がっている。「企画書の段階で、石井さんのイラスト入りのものになっていて、それが熊VS鬼というプロレス的な感じの内容で。石井さんの持ち味であるバイオレンスかつポップな感じを極力活かせるように、3Dアニメの利点を使いながら、色々と考えてやってみました」。

「ガンダム」シリーズなどのメカニックデザイナーとして知られるカトキハジメは今回、『武器よさらば』で初監督に挑戦。1981年の「ヤングマガジン」に掲載された大友克洋の短編漫画が原作の本作は、近未来の東京を舞台に、プロテクションスーツで武装した小隊が戦車型の無人兵器と戦うアクションだ。カトキ監督は、まず原作における革新性について熱っぽく語った。「掲載時にリアルタイムで読んでいたのですが、当時の世代にとっては忘れられないインパクトのある漫画だったんです。“パワードスーツもの”は今でこそありがちなジャンルになっていますが、当時は海外SFのファンの間では話題になったものの、日本で娯楽作品に仕立てた人はいなかった。20代の天才・大友さんはそれを、いきなり漫画表現として完成させてしまって、後は全部その影響下の表現なんです。そんな奇跡の作品であることを、若い人たちにも知ってほしいと思いますね」。

3人の監督たちが自作について語る言葉の端々からも、“天才”大友克洋の存在感が伝わってくるのが興味深い。例えば森田監督は、制作時に大友克洋の存在を“気にしない”ようにしていたそうで、「大友さんを気にしていると、作品が作れないんですよ。コピー機から大友さんのすごいコンテが出てくるのを見て、これはどうしよう、と(笑)。だから、あまり気にしないようにやりましたね」。また今回、3DCGの技術もふんだんに使用されているが、「手で描くには画力がないと描きにくい角度やアングルってあるんですが、大友さんはそれがサクっと描けてしまう人(笑)。また、『MEMORIES』のときは実写と同様なドリーアップをしたいと言われたのですが、それ以前のアニメにおいてはありえないカメラワークです。そんな、画にカメラの意識があるところが大友さんの魅力なので、それを再現するために3DCGの力を借りたりしました」と安藤監督。

今回の大友監督の作品『火要鎮』は、江戸を舞台に、火消しの男と商家の娘の姿を描いた物語。火に包まれる街並みや群集の動き、そして着物の描き込みに至るまで、情報がこれでもかと詰め込まれている圧巻の1本で、森田監督も「カメラのリアリティや絵の緻密さ、そして細かいセリフに至るまで、すべて裏をとって調べているところがすごい」と語る。ちなみに、95年に発表した自作の漫画「火之要鎮」とはガラっと内容も変わっており、「同じものを作りたがらないし、昔の作品は昔のこととしてあまり振り返らない」(安藤監督)という大友監督の姿勢が見えてくる。カトキ監督が「昔のこと、それこそ『AKIRA2』を…なんて話をするのはもってのほかだよね(笑)」と言うと、森田監督も「みんな初対面で大友さんのことを知らないときに、それ絶対言っちゃうんですよね。『作ってくださいよ!』って。それで『やだ』って返される(笑)」と明かしていた。

そんな“天才”“巨匠”というイメージの一方で、実際には「気さくな人」と3監督は口をそろえる。森田監督が「イメージでは巨匠ですごく固い人を想像していたのですが、会ってみたら全然違った。『FREEDOM』で初めて一緒にお仕事をしたときに、自分の作ったものをすごく喜んでくれて、資料を持ってきて色々提案してくれるなど、気さくなところに助けられましたね」と語ると、安藤監督も「『MEMORIES』の現場に行ったら細い目をキランと光らせながら、きゃっきゃとエロい話をしている人がいて、それが大友さんだった(笑)」と意外な初対面時のエピソードも明かしてくれた。『SHORT PEACE』への参加が大友監督との初対面だったというカトキ監督も、「好きにやらせてもらえたし、放任というかナチュラルで、大らかで、そこが大友さんの良いところなんですよね」。そして、今回カトキハジメが監督を務めるにあたっては、驚きの裏話も。「本当は、『武器よさらば』のプロテクションスーツのフィギュアを作らせてもらおうと会いに行ったんです。そこで作品の素晴らしさを力説していたら、『君がアニメ作ったら?』って流れになって、帰るときには監督をやる話になっていました(笑)」。

世界に誇るトップクリエイターが、独自の表現で互いにしのぎを削り、まさに日本のアニメーションの最高の姿を楽しむことが出来る映画『SHORT PEACE』。ぜひスクリーンで、名人たちの仕事を体感してみてほしい。【トライワークス】