[其ノ三 投信ファンダ編]資金の「大転換」が投信界にも波及
世界的に投資資金が債券から株式へ移動する「グレート・ローテーション(大転換)」が始まろうとしている。投信業界も株式型の日本株に資金が流入中だ。


債券から株へ資金流入増リーマン・ショック前の過去最高高水準が目前

安倍政権の誕生から約半年が経過し、国内の株式市場はいったん乱高下に見舞われましたが、投資環境は以前と比べて大幅に改善しています。追加型株式投信へは年初から月平均で5000億円を超える資金が流入。純資産総額も今年4月末時点で62兆円を回復し、今年中にはリーマン・ショック前につけた過去最高額の67兆円を上回るとの見方も出てきました。

世界的な株高傾向を受け、債券から株式への資金シフトを意味する「グレート・ローテーション(大転換)」が話題となっています。

実は投信の世界でも、この大転換が純資産総額の増加に大きく貢献しています。

4月の月間純設定額(投信の設定額から解約額を引いた額)を、ベストとワーストそれぞれについてリッパー分類別に集計したところ、「ベスト」では約3000億円を集めた「株式型 日本株」を筆頭に、カナダ、アセアン、米国と、株式に特化した分類が名を連ねました。いずれも3月、4月の新規設定が人気の中心ではありますが、投資家の関心が株式に向かっていることは確かなようです。

同時に、ここ数年加速していた高分配偏重の傾向にはやや落ち着きが見られます。



前述の新規設定投信も、株式に特化したタイプの大部分は年1回または年2回決算の「非定期分配型」。毎月分配型が多く含まれる債券型はというと、4月のリッパー分類別純設定額ランキングで「ワースト」1位から5位までを占めている状態です。

なかでも、米ドル建ての新興国債券に投資する「債券型エマージンググローバルHC」などは、昨年の今ごろ人気を博していたカテゴリーですが、4月に2年ぶりとなる純流出に転じました。

J ―REIT(日本版不動産投信)に投資する9位の「不動産型 日本」を含め、これら分配重視型のタイプは決して成績が悪化しているというわけではありません。むしろ、昨今の円安進行は外貨建て資産が主流の分配重視型投信にとって追い風です。

債券型やJ ―REIT型から、利益確定の動きも大きいとみられます。つまり、利益を確定させたうえで、次の投信へシフトしている投資家がいるということです。

分配重視型の投信で多く見られる失敗のひとつが、解約のタイミングを見誤ることです。特に毎月分配型の場合は、月々の分配金に満足してしまうあまり、部分的に解約して利益を確定させたり、ポートフォリオのリバランスを考えたりという点が後回しになりがち。市場環境が上向くと、含み益が出ていることに安心して、ついつい新しい投資先ばかりが気になってしまいますが、現在保有している投信の現状を把握することもまた重要です。

ご自身が保有する投信のポートフォリオは、債券やJ―REITなどの分配重視型投信に偏っていませんか。今回の「グレート・ローテーション」をきっかけに、ポートフォリオをいま一度見直してみてはいかがでしょう。





【今月の投信師匠】
篠田尚子(SHOKO SHINODA)
トムソン・ロイター・マーケッツ

慶応義塾大学法学部卒業。リッパー・ジャパンに所属するファンドアナリスト。情報量の多さと分析の鋭さは天下一品!



この記事は「WEBネットマネー2013年8月号」に掲載されたものです。