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電子書籍のレンタルサイト「Renta!」が、電子コミックの分野で新たな挑戦をスタートした。

単に漫画のページをそのまま表示するのではなく、画面を触ることでコマやセリフが次々に表示され、アニメーションや色、視差効果などのデジタルならではの演出が付加されるという「ReComic」だ。現在、公式サイトで対応作品の第1話が無料配信されているので、さっそく触ってみることにした。

「ReComic」は通常のRenta!と同じく、PCでもスマホでもタブレットでも、デバイスを問わず楽しむことができる。筆者は普段電子書籍をiPad miniやKindle Fire HDで読むことが多いので、今回もタブレットで試してみることにしよう。

現在、公式サイトで無料公開されている作品の中から『ブラックジャックによろしく』をチョイス。言わずと知れた佐藤秀峰の代表作であり、TVドラマ化もされた大ヒット漫画だ。作品自体はかなり以前に読んだことがあるが、それが「ReComic」でどう変わるのだろうか。

作品を「ReComic」で開くと、さっそく従来の電子書籍との違いが表れた。通常の電子書籍であれば、ページは右から左へと進んでいくことが多い。これはもちろん紙の本を意識しているのだが、「ReComic」は上から下へと進めていくのだ。iPad miniで読む場合は指で画面の適当な場所をタップしてやれば、ページが上へと送られ、下から新たなコマが出現するという感じである。紙の本の読み方に慣れているので最初は若干の違和感があったが、そういうものだと割り切れば問題はないだろう。

驚いたのは、その演出の多彩さだ。たとえばページにしても、一気に1ページまるごと表示されるわけではなく、コマ単位で分割されて順番に表示されたり、絵がまず表示されて、そこに後から吹き出しが乗っかったりしてくるのだ。まさにデジタルならではの手法である。

もっとも、こうした手法は「ReComic」が初めてというわけではない。ガラケーが主流だった頃から、携帯電話の小さい画面でどう漫画を読みやすく見せるかを突き詰めた末のテクニックとして、デジタルコミックの分野では広く用いられていたやり方であった。しかし、「ReComic」のデジタル演出は、そうした従来のデジタルコミックをもう一歩先に進めたものとなっている。

こちらのページをご覧いただきたい。キャラクターが「2時間しか寝てない!」と告げるシーンだが、2つのページで口元が違っていることがわかるだろうか。実はこれ、口元が動いている――つまり、アニメーションしているのだ。紙の本では不可能な、デジタルならではの表現といえる。

また、驚くべきは、わざわざ口を動かした後の絵を「ReComic」用に描き下ろしたという事実だ。このコマだけでなく、「ReComic」にはこうしたアニメ演出が随所に施されている。一つの作品だけでも相当な手間がかかっており、「ReComic」という新たな表現に対する相当な気合いと自

「ReComic」のこだわりは「色」にも表れている。こちらの2ページを見ると、ページの特定の部分にだけ色がついていることがわかるだろう。食事中の蕎麦と、救急車のサイレンだ。特定の箇所に色がついていると、読者の目線は自然とそこに誘導される。これにより、「こう読んでほしい。ここに注目してほしい」といった書き手の意図が、よりストレートに作品に反映される効果があるのではないかと感じた。

吹き出しや描き文字を自在に操れるのも、デジタルコミックならではだ。このページ、キャプチャだとよくわからないと思うが、大怪我をして運ばれている女性の吹き出しが、「ReComic」で読むと大きくなったり小さくなったりと、激しく動いているのだ。もともと迫力あるシーンだが、コマが動くことでより臨場感とスピード感が増している。元絵が持つパワーを増幅させるのが、「ReComic」ならではの強みだろう。

では「ReComic」のメリットをまとめてみよう。

・コマ送りやセリフの表示に順序ができたことで、描き手の意図がより反映させられる

・アニメーション効果により臨場感が増す

・映画的な演出が可能になり、ストーリーに没入できる

これらの特徴から、「ReComic」に向いているジャンルを考えてみよう。

まずは「アクション」や「スポーツ」などの動きがある作品。そして、「ホラー」や「サスペンス」など、"次に何がくるのかドキドキさせられる"ジャンルの作品とも好相性だろう。『ブラックジャックによろしく』などのような、じっくりと物語の世界にトリップしたい重厚なストーリーのヒューマンドラマも悪くない。

ということで、デジタル時代ならではの新たな表現へのチャレンジとして高く評価したい「ReComic」だが、最後にいくつかの懸念事項も記しておきたい。

まずは、アニメーション効果やコマ送りなど、相当な手間をかけて一つの作品を仕上げていることから、ラインナップの強化に時間がかかるのではないかという点だ。ここは「ReComic」の完成度とトレードオフなので難しいところだが、やはり読者としてはたくさんの作品を読みたいもの。面白い試みだけに、ぜひラインナップの充実を図ってほしい。

もう一つは、1ページごとに読み込みが発生するせいで、読書のテンポが少し悪くなってしまうことだ。せっかく臨場感とスピード感が増しているのだから、これはもったいない。もちろん、これはユーザー側の回線速度に依存する部分が大きいので、いかんともしがたい部分ではあるだろうが、「ReComic」側でも改善されるとうれしいところだ。

アニメでも漫画でもない、デジタル時代ならではの「ReComic」という新たな表現。今後の電子書籍市場にどれだけのインパクトと存在感を示せるか。引き続き注目していきたい。

(c)佐藤秀峰

(山田井ユウキ)