[其ノ二 FX プロディーラーの視点!]ドル高時代復活⁉ 経済指標に注目!
5月初旬、1ドル=100円突破の原動力なったのは米国雇用統計の改善だった。相場の主役が「円売り」から「ドル高」に変化した今、プロが教えるFXの投資戦略とは?


夏場に向けて米国の経済指標が相場を動かす原動力に

為替市場には必ず?主役〞が存在します。これまでも、ユーロ危機に端を発した「リスクオン・オフ」、アベノミクスによる「円売り」などが相場を動かすテーマになってきましたが、最近の主役といえば「米ドル高、米国経済の復活」以外にありません。

米ドル/円は、日銀による金融緩和期待などで昨年11月の79円台から一時103円まで急上昇しました。このときのテーマは「円売り」でした。

しかし、米ドル/円が5月初旬に1ドル=100円を超える原動力になったのは米国雇用統計の改善。今後も米国経済の回復度合いを示す経済指標が米ドル/円を動かす強力な起爆剤になるでしょう。

最も重要なのは米国の雇用統計や、米国内の景況感を指数化した「センチメント系」と呼ばれる指標。こうした経済指標のよしあしが為替相場に強い影響を与える「ファンダメンタルズ相場」が続く可能性が高いとみています。

特にこの先、6〜8月の経済指標はとても重要です。というのも、米国では悪天候や工場休止などの季節要因で、夏場に経済指標が悪化する傾向が強く、過去3〜4年はまさにそのパターンにはまって、米ドル/円が大きく崩れる展開が続きました。

しかし、「今年は違う」という期待感や「FRB(連邦準備制度理事会)がQE(量的緩和)を縮小するのではないか」という思惑が米ドル/円を下支えしています。

年内に米国の失業率が6%台まで改善するかどうか、その勝負の分かれ目が6月末から8月の経済指標だと考えられます。力強い数字が相次いで発表されれば、夏場に向けて1ドル=108円台到達もありうるとにらんでいます。

反対に、米ドル/円の下値は非常に堅いはず。米ドルを買いそびれている日本の輸入業者など実需筋はまだたくさんいます。また、外債投資を行なう機関投資家の多くは、いまだに円高による損失拡大を恐れてヘッジをかけたうえで米ドルを買っています。

しかし、それでは円安・ドル高が進行しても為替差益が得られません。今後はヘッジがついていない?裸の円売り〞を志向するはずです。そして、多くの投資家が「米ドルが下がったら買いたい」と思っている状況では、なかなか思うレベルまで下がる展開にはならないものです。





ドルに比べて上昇率が鈍い豪ドルも押し目は買い

相場の主役が米ドル高になったことで、豪ドルやNZドル、カナダドルなど高金利通貨の上昇が鈍くなっています。中国経済の減速の影響もあり、豪州が利下げ、ニュージーランドが為替介入を行なうなど、世界的な?緩和競争・通貨安戦争〞に巻き込まれていると考えるべきでしょう。

その影響もあり、豪ドル/米ドルは1豪ドル=1米ドルの大台を割り込んで推移しています。しかし、豪ドルが下げる理由の大半は「米ドル高」です。ただ、豪ドルが売られるときは円も売られやすいとき。つまり、豪ドルが対米ドルで下げても、豪ドル/円は円安に動く可能性が高いと考えられます。

FXで長期投資する場合、スワップポイントという金利収入を得られる高金利通貨に投資するのが王道です。そう考えると、上昇の勢いは米ドル/円に比べて鈍いものの、豪ドル買いのスタンスは変更なしでいいと思います。

相場の主役は米ドルですが、現象面では円安が続くことに変わりはありません。今年1年は円を売って外貨を買うというスタイルを堅持すべき。そして、高金利通貨はまだ魅力のある投資対象です。



【今月のカリスマ軍師】
上田眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム 取締役

東京銀行、モルガン銀行、ドレスナー銀行などで為替ディーラーや外国為替部長を歴任後、現職。



この記事は「WEBネットマネー2013年8月号」に掲載されたものです。