あまちゃん挿入歌「暦の上ではディセンバー」が頭から離れない理由

 連続テレビ小説『あまちゃん』が大ヒット驀進中! その勢いは物語だけに留まらず、サントラがオリコンランキングでトップ10入りしたことも記憶に新しいところです。

 他にも挿入歌「潮騒のメモリー」のCD化が発表されたり、同じく挿入歌「暦の上ではディセンバー」がネット配信ランキング1位を獲得するなど、音楽面にも話題が集まっています。

『あまちゃん』の挿入歌って、妙に耳に残っちゃうんですよね。特にドラマ内で活躍する架空のアイドルグループ・アメ横女学院の代表曲「暦の上ではディセンバー」は中毒性が高いようで、ネット上でも“頭から離れない”“ずっとループしてる”といった報告が多数あがっていました。

『あまちゃん』の音楽を作っている大友良英さん(1959年生まれ)は、ディープな音楽的バックボーンを持ち30余年も活躍し続けている人ですから、さすが!と言うほかありません。

 こんなにもみんなが「暦の上ではディセンバー」に惹かれる理由は何なのか。その理由を、様々なアーティストの伴奏や作編曲・プロデュースを務め漫画家としても活動するヒロヒロヤさんに、私たち素人にもわかるように解説してもらいました。

◆思わず中毒になる数々の仕掛け

――「暦の上ではディセンバー」は2009年にミリオンセラーになったアイドルソング、という設定ですよね。

「全体的にはアイドルポップスの定番といえる曲調ですね。メジャーコードでアップテンポだと“楽しく健康的”な雰囲気が出て、名刺代わりとなる最初の曲としては最適だと思います。さらに全部が明るさ一辺倒ではなく、冒頭ではサビのメロディをしっとりと歌うことで、深みのある展開にもなっています。

 それからこの曲、ちょっと変わった転調をしているんですよ」

――それは興味深いですね。具体的に教えていただけますか?

「全体的にも冒頭のサビ部分も明るい曲調なのに、イントロの間奏と後奏だけはシュールな雰囲気を醸し出していますよね。この明るさとシュールさの急な変化により、それぞれの部分のインパクトが相互に高められていると思います。

 専門的な話をすると、これはキーがF(へ長調)からEm(ホ短調)へと転調しているということなのですが、一般的な歌謡曲でこのような転調が聴かれることはめったにないんです」

――珍しいコード進行というのは評価が分かれそうに思えるのに、年代問わず、幅広い層に人気がありますよね。

「若者だけでなく年配の方にまで受け入れられているのは、例えばイントロでどこか懐かしいシンセサイザーの音色と、宇宙っぽい効果音をあえて盛り込むなどしているからではないでしょうか。70〜80年代初頭によく聴いた感じの音ですから」

――若者には懐かしさが新鮮で、年配の方は安心感を覚えるのかもしれませんね。他にも印象に残る理由はありますか?

「一曲のなかで“既聴感”が生まれる構成になっているところも一役買っていると思います。“繰り返し聴くうちに段々と癖になってきた”という経験はみなさんあるでしょう。冒頭でサビが少しだけかかりますが、それが記憶に根付くので、本編のサビが聴こえた時さらに良く感じるんです。

 また、作詞の面でも“ディセンバー/サバイバー”“慌ただしい/デリカシー”など韻を踏んでいて、歌詞の内容以前に音として耳に残るんですよね」

 よくわかりました! それだけの仕掛けがあるから耳に残るんですね。

 作曲は大友良英さんの他、Sachiko Mさん、江藤直子さん、高井康生さんと4人体制だというこの曲。数々のヒットを生み出すべくして生み出している『あまちゃん』音楽チーム、おそるべし! <TEXT/志賀むつみ>