世界に例を見ない速度で、高齢化社会へ移行している日本。そのシニア市場をターゲットとした新規ビジネスを創出すべく、小売業界などでは「シニアシフト」が進行中です。

 書籍『シニアシフトの衝撃』では、ゲームセンターやカラオケボックスなど、かつては若者向けとされていた娯楽施設が、シニア世代の憩いの場となっている現状を報告しています。ゲームセンターは、今ではシニア世代の遊び場。ゲームで貯めたメダルを、孫に自慢するシニアも多いのだとか。カラオケに至っては、平日昼間のカラオケ客の6割がシニア層。ロングセラーの「らくらくフォン」など、シニア向け商品も次々と開発されています。

 この動きは、意外なところにも波及していると本書は指摘します。それは1967年の発売以降、女児用のおもちゃの代名詞ともなっている「リカちゃん人形」です。リカちゃんの家族と言えば、長い間、小学5年生の香山リカちゃんを中心に、お父さん、お母さん、妹、弟、ペットという家族構成でした。しかしここにきて、リカちゃん一家にも変化があったと言うのです。

「2012年4月、このリカちゃんファミリーに『おばあちゃん』が登場した。おばあちゃん、香山洋子はカフェ併設の花屋さんのオーナーで年齢は56歳。11歳のリカちゃんの母、33歳の織江(ファッションデザイナー)の母という設定だ。実は過去に父方のフランス人の祖父母の人形が発売されたことがあったが、日本人の『おばあちゃん』人形は初めてだ」

そしてこの「おばあちゃん登場」には、シニアシフトの影響があるというのです。

「『おばあちゃん』の年齢を56歳に設定したのは、リカちゃんを発売した1967年当時、メインターゲットだった11歳の女の子が2012年に56歳になるためだ。共働き世帯の増加で母方の祖母が孫の世話をするケースが増えており、発売元のタカラトミーには、リカちゃんシリーズの購入者から『孫と遊ぶ時に自分(つまり、おばあちゃん)役の人形があるといい』などとの声が寄せられていた」

 「おばあちゃん」の登場は、企業がシニアのマインドに対し、より敏感に反応するようになった結果と言えるでしょう。

 シニア向け宿泊予約サービスを提供する「ゆこゆこ」がアベノミクスと消費に関する調査を行ったところ、年齢が上がるにつれて購買意欲も高まる、という傾向が明らかになっています。

 「アベノミクスによる消費意欲の高まり」について質問したところ、全体の15.1%が「高まっている」と回答。さらに年代別にみていくと、40代以下の11.5%、50 代の13.9%、60 代の17.4%、70 代以上の17.7%が「消費意欲が高まっている」と答えているのです。

 具体的に何を購入するのかをたずねると、金融商品(株式・投資信託など)、自動車、テレビ、パソコン、ゴルフクラブなどの高額商品が多く見受けられました。

 消費への意欲は、金品だけに向けられているわけではないようです。アベノミクスによる「旅行意欲」への変化についてたずねたところ、全体の16.4%が「旅行意欲が高まっている」と回答。そして、こちらもやはり40代以下の14.8%、50代の13.4%に比べ、60代が18.0%、70代以上が21.6%と、シニア層の方が旅行に対し、意欲的になっていることが明らかになりました。

 金融商品や自動車、そして旅行と、消費への意欲が高まっているシニア層。市場が敏感になるのも分かる気がします。「シニアシフト」は、これからの消費経済を考えるうえで、決して無視出来ない流れと言えそうです。

【関連リンク】
シニア世代へのアベノミクス影響に関する調査(ゆこゆこ)
http://www.yukoyuko.co.jp/wp-content/uploads/2013/07/130717.pdf



『シニアシフトの衝撃』
 著者:村田 裕之
 出版社:ダイヤモンド社
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