投資環境が変わっても乗り換えは不可
上場株式等の売却益や配当金に対する課税が10%に軽減されてきた証券税制の優遇措置が今年末で期限切れとなり、年明けから20%に引き上げられることが株式市場に少なからぬインパクトを及ぼすことが懸念されている。しかし、それとは入れ違いに投資家にとって朗報ももたらされる。日本版ISA「少額投資非課税制度」がついに導入されるのだ。同制度は金融商品のあり方や投資家の運用スタイルに大きな影響を及ぼす可能性がある一方で、問題点や注意点も少なからず存在しているようだ。そこで、本誌は今回から短期集中連載として日本版ISAについて徹底的に掘り下げてみたい。


最長10年の非課税枠が得られるとはいえ、相場が最高潮に達したと感じれば、リターン追求派は途中で利益を確定させるはず。だが、保守層にも投資家の裾野が拡大すれば、投信保有の長期化が進む可能性もある。英国でも、ISA口座を通じた投信保有は長期化の傾向だ。

ならば、保守層が気軽に手を伸ばしやすい投信としては、どういった選択肢が考えられるのか?

この問いに、藤原さんは次のように答える。「おそらく中心となるのは、?既存の毎月分配型ファンドで分配の金額が少なめの商品、もしくは分配金の支払いが頻繁でない商品?為替ヘッジを行なっている外債ファンド、?リスクをコントロールしつつ、情勢に応じて機動的に資産配分の見直しを図るバランス型ファンドでしょう」

最初に選んだ金融機関を4年間は変更できない!

株式と債券をミックスするバランス型ファンドは、すでに選択肢が豊富。だが、臨機応変な資産配分見直しをセールスポイントとする新商品の設定が相次いでいる。昨年3月設定の国際投信の「トレンド・アロケーション・オープン」もそのひとつだ。「足元のトレンドが良好な資産の組み入れを高くする一方で、定性判断でトレンドの転換点を捉えて配分比率を微調整。また、下落率が所定基準に達した資産を売却してリスクをコントロールしています」(吉田さん)

一方、大和投資信託商品戦略部長の松下敦司さんは以下のようなコメントを寄せる。「バランス型においても、お客様によってニーズは違ってくるもの。特に長期運用では、下落リスクの抑制については意識する必要があります。当社は、NISAを意識して複数のバランスファンドをスマートシリーズとして設定していきます」

具体的には、内外の株式・債券に投資しつつ、下落リスクを抑制するDガード戦略を採用した「スマート・ミックス・Dガード」に続き、資産配分を機動的に変更するタイプの設定も準備している。

ドイチェ・アセット・マネジメントについては、当面ヘッジ付き外債ファンドを中心としたは既存の商品で対応するという。「早ければ、夏にもヘッジ付き外債で運用する新商品を設定したいと思っています。」(藤原さん)

ただ、リスクコントロール型に関しては、ファンドの世界をウオッチしてきた『投資信託事情』編集長の島田知保さんが、こう疑問を投げかける。「損益通算ができないデメリットを配慮してリスクコントロール型という発想になったのでしょうが、その分だけ信託報酬や販売手数料などコストが割高になる可能性もあります」

さらに島田さんは制度についても次のような注意をうながす。「いったん専用口座を作ってしまうと、4年間は別の金融機関に口座は開けない。提供される商品や積み立てに対応しているかなど不明な段階で口座開設を急ぐ必要はありません」

しかも、この制約が口座獲得競争を増長しがち。さすがに金融庁も改善を検討しているもようだが……。来年が導入元年となるNISAにはほかにも注意すべきポイントがあるし、投資家のタイプ別のベストな活用法も異なる。次回以降は、さらに核心に迫りたい。

松下敦司(ATSUSHI MATUSHITA)
大和投資信託 商品戦略部長



島田知保(CHIHO SHIMADA)
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン 『投信信託事情』編集長



吉田研一(KENICHI YOSHIDA)
国際投信投資顧問 ISA推進室長



藤原延介(NOBUYUKI FUJIWARA)
ドイチェ・アセット・マネジメント企画部 ファイナンシャルストラテジスト




この記事は「WEBネットマネー2013年8月号」に掲載されたものです。