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おとなのための、もう一度ジブリ特集



いよいよ、みんな大好き宮崎駿の最新作が公開されます。

美しい背景、細かく描かれる人の所作。また、優しく強い人間関係と迫りくる環境の圧力。
ジブリ作品の見所は今回もたくさんありそうです。

「風立ちぬ」

零戦を設計した堀越二郎の半生を、同時代の作家・堀辰雄をからめて綴る、ハヤオ御大には珍しく「純粋なファンタジー」ではなく、「ノンフィクションに限りなく近いフィクション」という位置づけの作品です。

この堀越二郎さんは旧日本軍で「零戦」の設計主任として有名で、他にも「雷電」「烈風」という名の知られた戦闘機にも関わっておられます。日本の飛行機技術が世界においつき、零戦でトップをとった。まさに、その瞬間を作った男と言えるでしょう。(調べました)


ところで、アメリカにジェームス・キャメロンという監督がいます。古くは「ターミネーター」「ターミネーター2」、のちに「タイタニック」を作ったあのキャメロンです。
彼が2009年に作ったのが、興行収入世界第一位「アバター」でした。
3Dを存分に味わう映像。練られたストーリー。壮大でど迫力のアクション。勇気、愛、感動、その奥にメッセージ。とても映画らしい映画です。
 
その劇中、主人公が異星の翼竜の背に乗って大きな空を飛翔するシーンがあります。大きな崖から落ちるように滑空し、はばたき、崖を回り込み、ふたたび上昇、そして下降。
 
160分強の上映時間に、異星の自然や異星人の暮らし、地球との関わりや人間関係というあふれるほどの情報、そしてそこに展開する物語を詰め込みまくった映画の中で、まるですべてが止まったように、美しい景色をバックに空を飛ぶ主人公。まさに飛翔。天を翔るようなスピード感、羽ばたきと連動した浮遊感。実写映画とはいえ、ほぼCGで描かれながら、本当に心地良さそうに空を飛ぶ映像でした。映画を見て「あの異星人になりたい」と思った人が続出した、という話がありますが、その大きな理由があの飛翔シーンにある、と思うほどの気持ちのいいシーン。


「今まで、空を飛び回る映画の中で、1番素晴らしい体験だった。ちゃんと空気に乗ってる。ちゃんと飛んでるっていう表現が成立してる。それは抜群に優れている。」

「アバター」の飛行シーンをそう評したのが押井守でした。
アニメ業界、映画業界の中で独特の位置に立ち、「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」で世界からも認められた映画監督、押井守です。
日本のSFやアニメの愛好家でもあるジェームス・キャメロンとは、お互いの才能を認め合う仲だったりします。

その押井守に映画「スカイ・クロラ」という作品があります。永遠に空戦を繰り返す少年兵のパイロットを主人公にした映画です。
そこにはもちろん、空中飛行シーンがありました。プロペラ戦闘機同士の空中戦。レバーのついた棺桶のようなコックピットのパイロット。スピード感、スリル、緊張感。そこにあったのも一種の心地良さでした。雲と水平線。滑るように旋回、なめらかに宙返り。スロットルを引きレバーを倒す、そんな作業ではなく、心で思い描いていた通りに、まるで空気の分子のすきまを縫うように飛ぶ。空を飛ぶ、ということをここまで美しく描いた映画もそうないのではないでしょうか。

そして、押井守といえば、宮崎駿とは「アニメ界の重鎮版トムとジェリー」と言われるほどの、会えば5分で喧嘩になる“仲の良さ”で知られます。


ここでようやく話が戻ってきます。
宮崎駿の戦闘機映画といえば「紅の豚」。真っ青で静かな海と空の間を、まっ赤なプロペラの飛行機が飛んでいくシーンが印象的。飛行機映画と広げると「風の谷のナウシカ」、空を飛ぶ映画とまで広げれば「天空の城ラピュタ」が浮かびます。
「紅の豚」はプロペラ戦闘機。「ナウシカ」はグライダーのような風にのる飛行機。ラピュタは薄い羽根が高速で羽ばたく飛行機(劇中では「フラップター」と呼ばれていました)。それぞれに空を飛ぶ原理や方法が違うので、それぞれに違う飛行シーンが描かれています。

「紅の豚」では、エンジンの大きな音、馬力、そして匂いまで感じられるような描写から、エンジンや機体の重さまで表現しつつ、それを利用しながら飛ぶ、技術的な飛行が。
「ナウシカ」では、まさに空を滑るように、大きな鳥が羽ばたかずに大きく回るような旋回は優雅で美しい飛行が。
「ラピュタ」では、虫やハチドリのようにつねに羽ばたき時に停空し時に猛ダッシュ。空想の飛行機がリアリティをもって飛ぶ飛行が。


空を飛ぶ、ということは、子供のころに誰もが思い描くことで、人類ある限りのロマンといえるでしょう。
ダ・ヴィンチは歴史上初のプロペラ機を夢想し、ライト兄弟は夢を現実にし、藤子不二雄はタケコプターを“発明”し、桂文珍は飛行機の操縦免許をとりました。
同様に、「空を飛ぶ」というモチーフが宮崎駿にとって特別であることは、疑いようもないでしょう。そして「空を飛ぶ」を表現することも。
ジェームス・キャメロンも押井守も、特別なフェチズムをもって「空を飛ぶ」シーンを作り上げ、ほんの少しそれに酔っているように思えます。だからこそ、あんなにも美しい。

そして、「風立ちぬ」
宮崎駿が、好きすぎる趣味の世界として書き留めていたものの、映画化には不適として自らしまっていた作品とも言われています。その世界をどう表現するか。どんな飛行シーンを描くのか。
「空を飛ぶ」快楽を、心地良さを、恐ろしさを、どう見せてくれるのか。


宮崎駿に最も近しい押井守、宮崎作品のファンを公言し世界最高収益をあげるジェームス・キャメロン。
表面上はさておき、この二人の映画は巨匠の心のどこかにはひっかかってると思いたい。
外堀の埋まった宮崎駿の描く「空を飛ぶ」シーンが楽しみで仕方ありません。



 ◆執筆  ヴィレッジヴァンガードイオンタウン千種店 西村店長
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