ディズニー/ピクサーのアニメーション映画は、大人が見てもストーリーが面白く、キャラクターも個性的で親しみがあり、どの作品も間違いなく楽しめる、と見る度に思います。自分が大人だから感じるのか、時々「これ、子どもが見て分かるのかな」なんて思ったりすることがあるくらい、物語に入り込んでしまいます。きっと子どもは深く考えず、単純に楽しんでいるんですよね。

 世界中で大ヒットした2001年の「モンスターズ・インク」の前日譚として作られた最新作「モンスターズ・ユニバーシティ」は、主人公たちがモンスターであるにもかかわらず、夢を追い求めて大学生活に奮闘し、やがて就職するというストーリーに、とても感情移入しながら楽しみました! モンスターたちの物語には、もちろん大笑いするところがたくさんあり、そして思わずグッとくるところも。

 「モンスターズ・ユニバーシティ」の日本公開に合わせ、プロデューサーであるコーリー・レイさんが、ダン・スキャンロン監督と共にPRで来日。インタビューに応じてくれました。コーリーさんは、世界的に有名なピクサー・アニメーション・スタジオで活躍する女性。そんなコーリーさんに、映画について、そしてピクサーに就職した経緯や、女性職員の育成などについて、お話を伺ってきました。


「モンスターズ・ユニバーシティ」
 まずは、「モンスターズ・ユニバーシティ」を紹介しますね。

 エネルギー会社“モンスターズ・インク”で活躍する“最恐コンビの”マイク(声:ビリー・クリスタル/田中裕二<日本語吹き替え版>)とサリー(声:ジョン・グッドマン/石塚英彦<同>)の出会いは、エリート・モンスターを育てる名門大学“モンスターズ・ユニバーシティ”でした。ともに“怖がらせ屋”を目指す2人は、怖がらせ学部の新入生の同期。でも、サリーはエリート名門一族出身ですが、マイクは小さくてかわいいから怖くないという理由で、学長から学部を出て行くように言い渡されてしまいます。

 それでも絶対に夢を諦めたくない賢いマイクは、伝統の“怖がらせ大会”で優勝すれば、怖がらせ学部に復帰させてほしいと学長に頼み、取引は成立。育った環境も性格も正反対のサリー、そして落ちこぼれの仲間たちとチームを組んだマイクは、奇跡を起こして怖がらせ屋になる道を突き進むことができるのでしょうか……?


 「モンスターズ・インク」には「モンスターズ・ユニバーシティ」の続きが描かれているので、マイクとサリーの未来は分かっていても、マイクを応援せずにはいられないほど、次から次へとやって来る試練に立ち向かったり、落ち込んだりする姿にはハラハラドキドキさせられます。面白いのは、マイクもサリーも大学生時代と大人になってからでは性格がかなり違うこと。特に心優しいサリーが、超“俺様”キャラだったなんて驚きです。さらに、大人になってからは悪人(?)のランドール(ランディ)も、大学入学当時はオドオドしていたんですね。なぜ悪人になったのかも、本作を見れば分かります。

 また、1作目のCGも素晴らしいと思いましたが、本作の緻密で豊かな映像世界には目を見張ります。サリーのふさふさした毛の動き。キャンパスを埋め尽くす、400を超えるさまざまなモンスターたち。そして、1つしか目がないマイクの細かい表情。ずっと見ていたくなります!

 夢を実現させるためには、できることは全部やってみる。ちょっと危険だとしても、あえて挑戦する。「モンスターズ・ユニバーシティ」は、そういう気持ちを思い出させてくれる素敵な映画です。


コーリー・レイ
ピクサー・アニメーション・スタジオで、1998年「バグズ・ライフ」、1999年「トイ・ストーリー2」のアニメーション・マネジャーを担当し、2001年「モンスターズ・インク」でアソシエイト・プロデューサーに。2004年「Mr.インクレディブル」でアソシエイト・プロデューサーを、2009年「カールじいさんの空飛ぶ家」でプリプロダクション・プロデューサーを務める。そのほか、TVシリーズ「カーズ トゥーン/メーターの世界つくり話」(2008〜2010年)ではプロデューサーおよびエグゼクティブ・プロデューサーを担当。

——「モンスターズ・ユニバーシティ」は、大学生時代や就職するまでの過程が描かれており、大人が見て楽しめる要素がたくさんあると思いました。コーリーさんは、この映画の特にどんな部分を気に入っていますか?

 「あなたと同じで、18歳から22歳くらいまでの頃、どんな気持ちだっただろう、と思い出せるところが私も気に入っています。別に大学に行くことが大事だというわけではなく、行った人も行かなかった人もいると思うのですが、そんな中で、あの時代に自分が何を考えていて、どのようにして自分というものを知っていったのか、自己発見と言うか、若き日を感じさせる作品になっています。自分の若い頃を思い出して、この映画のストーリーに生かしました」

——本作には、大学のフラタニティとソロリティ(友愛クラブ/サークル)というものが登場します。日本ではあまりなじみがないのですが、アメリカの学生にとって、これらはどのような存在なのか、本作で題材にしたことと合わせて教えてください。

 「本作で描かれるフラタニティとソロリティは、アメリカ特有のシステムですね。マイクたちは怖がらせ大会で戦いますが、チームで一丸となって挑むとき、母体となるのが“ウーズマ・カッパ”というフラタニティです。何となく同じ意識を持った人たちが集まって、楽しくやるグループだと思ってもらえれば、フラタニティというものが分からなくても、映画を楽しむことができるように、普遍性を持たせて描いたつもりです」

——コーリーさんも、そういったサークルに所属していたのですか?

 「いいえ、私は入っていませんでした。あくまでも新しい人と出会うための、社交クラブのようなものなので、全員が所属するわけじゃないんですね」

——映画の中で、マイクやサリー、そしてランディ(ランドール)は、学生時代と大人になってからでは、ずいぶん性格が変わっていることに気づいたのですが、18〜19歳くらいに経験することは、その後の人生において、大きな影響を与えると思いますか?


 「そう思います。本作で一番大切にしているのは、彼らがどのようにして自分自身を成長させていき、どのようにして変わっていったのかということなんです。それが一番描きたかったことなので、彼らの性格が変わったことに気づいてもらえたのは良かったです。」

——コーリーさんも、その頃にした経験によって、何か影響を与えられましたか?

 「まさにマイクのように、私も影響を受けました。実は、私は体操選手になろうと思っていて、大学にもそれで入ったんです。ほかのことは何も目指してなかったんですよ。だけど、けがをしてしまって、何をしたらいいのか分からなくなって、『私の人生、これからどうなるの?』と不安だったのですが、今はこんなに素晴らしいピクサーの映画のプロデューサーになっています(笑)。人には何が起こるか分かりませんよね」

——体操選手を目指していたのですね!? どういうきっかけで、ピクサーに入ることになったのですか?

 「本当に運命としか言いようがないのですが、20年前に友人が『なんか人探ししてるわよ。そこの会社、ちょっと受けてみない?』と教えてくれたので、深く考えずに出かけて行ったんですね。そうしたら、『これこそが私にピッタリ』と思える仕事に出合えた、という感じです」

——そこがピクサーだったのですね。最初のお仕事は、どういうものだったのですか?

 「『トイ・ストーリー』を作る前、ピクサーではCMを作っていて、CMの監督のアシスタントを探していました。私が応募したのは、そのアシスタントの仕事だったんです」

——特に、アニメーションがお好きだったわけではなかったんですか?

 「ノー(笑)。私はアニメーターではなく、製作側の人間なので、アニメーションに関する知識や経歴は必要なかったんです」

——間違っていたらご指摘いただきたいのですが、ピクサーの上層部は女性よりも男性の方が多いように思うのですが、実際にそうでしょうか?


 「プロデューサーは、男性より女性の方が多いんですよ。監督は、映画業界全般がそうだと思うのですが、男性の方が多いですね。監督というのは、ストーリーを考えたり、アニメーターをしたりしながら育っていって、そこからなる人が多いので、今は積極的に女性監督が生まれるように、女性のアニメーターや、ストーリーを書く担当を育成しているところです」

——具体的には、どんなことを行っていますか?

 「ピクサーには学校組織というものがあって、その中でできるだけCGアニメーターを増やしたり、そこから苦労して育てていこうとしたりしています。全体的にアーティスティックな人材であったり、テクニカル・ディレクターであったり、アニメーターであったりするところから監督が育っていくので、女性の人材を中心に、より力を注ぎ、一生懸命に教育を行っています。特にCGアニメーターに、もっと女性を増やしたいですね」

——コーリーさんはプロデューサーですが、女性プロデューサーと男性プロデューサーの違いを感じることはありますか?

 「基本的にプロデューサーというのは、人の面倒を見る職業なので、そういう観点から考えると、女性と男性で差があるとは思いません。特にピクサーの場合は、みんなアシスタントのポジションから、1つ1つ積み上げてきて、それぞれの今のキャリアを手にしたので、男女の差はあまりない気がしますね」

——では最後に、読者に向けて、「モンスターズ・ユニバーシティ」の見どころコメントをお願いします。

 「本作で描いているのは、ずっと情熱を持ち続けて、努力を続けるということ。その中で大事なのは、常に心を開いて、もしも1つのことでうまくいかなかったとしても、次に何かまた情熱を注げるものを見つけて、努力するという気持ちだけは持ち続ける。何に夢を抱くかということではなくて、その気持ちだけは持ち続けるということが、とても大事だということを教えてくれる映画です」