『ベルリンファイル』のリュ・スンワン監督にインタビュー

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韓国映画のエポックメイキングな大ヒット作『シュリ』(99)から14年、また、アドレナリン噴出もののスパイ映画の快作『ベルリンファイル』(7月13日公開)が韓国から到着!メガホンを取ったのは、『生き残るための3つの取引』(10)など、キレのあるアクションと深みのある人間ドラマを紡いできたリュ・スンワン。本国で700万人以上を動員したこの大ヒット作を引っさげ、来日したスンワン監督にインタビュー!

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舞台はベルリンで、北朝鮮の諜報員と、韓国人エージェントの気迫あふれるスパイ合戦を描く本作。とにかくプロットが緻密で、北朝鮮と韓国だけではなく、アメリカ、イスラエル、アラブ組織をも巻き込んだ壮大な陰謀劇が繰り広げられる。脚本も手掛けたスンワン監督が、丁寧な取材で拾った情報を物語に反映させたから、実に説得力がある。「僕は3つのルートで情報を得た。ひとつは北朝鮮が専門の記者、もうひとつは韓国にいて北朝鮮に関するいろんな情報を持っている国家情報院の人たち、それと脱北者の方たちだ。でも、ここ数年間、南北関係が良くなくて、もらえる情報が限定されていたので大変だったよ」。

リアルに描き込まれたスパイ合戦には息を呑む。しょっぱなから緊迫感あふれる駆け引きや怒涛のようなアクションが展開され、見るものの度肝を抜くという演出も憎い!「文字通り、オープニングとはドアを開けるという意味だ。映画のバックグラウンドを語り、全体の雰囲気を伝える上でとても重要な部分だと思う。だから本作の舞台はベルリンで、これからスパイ映画が始まるというのを数分でつかめる作りにしたんだ」。

主人公の北朝鮮の諜報員ピョ・ジョンソン役に『チェイサー』(08)のハ・ジョンウ、韓国のエージェント、チョン・ジンス役に『シュリ』のハン・ソッキュ、ジョンソンの妻ジョンヒ役に『10人の泥棒たち』(公開中)のチョン・ジヒョンが扮する。3人のキャスティングについては太鼓判を押すスンワン監督。「ハ・ジョンウは、良い意味で熱演しないところが素晴らしい。彼の演技は本当に自然で、たとえ小さく演じても、伝わる感情はものすごく大きいんだ。ハン・ソッキュの実力は言うまでもないが、今回改めて、プロというのはこういう人を指すんだと感心したね。チョン・ジヒョンは、吸収力が速く、例えて言うなら水のような感じだ。水は入れる器によって自由自在に形を変えられるから」。

今回、『シュリ』を超えたいという思いはあったか?とスンワン監督に聞くと「何か記録で競争したいとは思わなかった。僕自身もカン・ジェギュ監督作は好きでよく見るけど、僕の作品とは好みや趣向が違うから」と即答。でも、やはり『シュリ』の功績は大きかったようだ。「韓国人はハリウッド映画や大作に対するコンプレックスを持っていたけど、『シュリ』はそれを解消してくれた。韓国映画界では起爆剤となった作品だと言える。また、本作は、『シュリ』でハン・ソッキュが演じた諜報員の10年後を描いているという見方も考えられるなあと、完成してから思ったよ」。

最後に、ハリウッド進出に興味はないか?という質問をぶつけてみた。なぜなら彼と親交のある『イノセント・ガーデン』(公開中)のパク・チャヌク監督や、『ラストスタンド』(公開中)のキム・ジウン監督など、昨今ハリウッドで、韓国人監督の活躍が目覚ましいからだ。スンワン監督は「今のところ感心はない」とキッパリ。「実は、ひっきりなしにオファーをいただいているけど、僕が作りたいと思うプロジェクトや台本がなくて。もちろん、他にも理由がある。韓国では脚本、監督から映画製作の行程全てをコントロールできるけど、ハリウッドではそうはいかないから。言葉の問題もあるし、生活文化圏が違うので、たとえ僕がアメリカの話を撮ることになっても、他人事みたいな位置づけになってしまう。やっぱり納得した上で映画を作りたいんだ」。

『ベルリンファイル』で、また名を上げたリュ・スンワン監督。でも決して浮き足立つことなく、自分が撮りたい題材に真摯に向き合う姿勢はずっと一貫している。世界を股にかけて活躍してほしい気もするが、フィルムメーカーとしてのポリシーは今後も貫き、さらに新たなステージを駆け上がっていってほしい。【取材・文/山崎伸子】