株式会社ユーザベースの共同創業者である梅田優祐さん(左)と新野良介さん(右)

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 前回、株式会社ユーザベースのシンガポール進出検討の経緯と、シンガポール政府からの優遇策について説明しました。今回は、彼らがシンガポールを中心として今後のグローバル展開をどのように考えているのかを紹介していきます。

*前回の記事
なぜ急成長を遂げる日本のIT企業はシンガポール進出を決めたのか?

シンガポールだけでなく香港にも進出

 ユーザベースの最初の海外拠点は上海でしたが、この上海拠点は企業情報の収集が目的で、現地の顧客に本格的に営業していく拠点としては、今年8月の設立を予定しているシンガポールと香港が初となります。

 金融機関やシンクタンク、コンサルティングファーム、弁護士・会計事務所など、企業情報を日常的に利用する法人が顧客の中心であるため、ユーザベースでは海外進出を国単位ではなく、前述した法人が多数集積している都市単位で計画しています。今年のシンガポール・香港での事業展開がうまくいけば、来年以降にはニューヨークやロンドンなど欧米の金融都市への進出を計画しているようです。

 今のところ、香港政府からは進出に際しての優遇策の提示などはなく、シンガポール政府のアグレッシブなベンチャーサポート体制は、日本と比較した場合はもちろん、グローバルの中でも際立っているようです。

 また、シンガポール拠点は営業だけではなく、データの収集においても重要です。ユーザベースのような企業情報の配信サービスの場合、カバーしている企業数や企業情報の正確さは競争力の根幹にかかわりますが、ASEANの新興国ではローカル企業に企業情報が点在しています。ASEANのそれぞれの国を訪れて、ローカル企業の中から信頼性が高い会社を選びだし提携を結んでいかなければなりませんが、こうしたアライアンス先の開拓を行う上でも、ASEAN全域のアクセスに優れるシンガポールは最適な拠点のようです。

日本とシンガポールのマーケット特性の違い

 ただ、新野良介さん(共同創業者のひとり)が出張ベースでシンガポールを訪れている現時点でも、いくつか日本のマーケットとの違いが明らかになってきているようです。日本では、大手の会計事務所であれば、ほぼすべてのファームがブルームバーグやロイターなどの金融情報配信サービスや、ファクトセットやSPEEDAなどの企業情報配信サービスを多用していますが、シンガポールでは日本ほどはこうしたサービスを利用していないようです。

 その理由として、シンガポールではM&Aの提案の実現性が、オーナ企業へのアクセスがあるかどうかといった人脈に依存するところが多く、企業情報を深く分析した上での提案力はあまり重視されていないからではないかと新野さんは推測しています。

 創業から5年で上場も視野に入ってきている中、2人の創業者の内1人が海外に行くことは大きな決断ですが、マーケットの特性の違いを素早く分析した上で、シンガポールでの成長戦略を迅速に練り上げていくには必須であると考えているようです。

 もちろん、シンガポールでの事業の立ち上がり方にもよりますが、3〜5年の中期的には経営など高度な機能も徐々に日本からシンガポールに移すことも検討していきたいと話しています。また、マレーシアが人材の質、給与レベル、社員の生活環境を総合的に考えて、エンジニアチームの拠点をおくには適した場所の一つであると考えており、マレーシアに開発拠点を設立する時にも、シンガポールに経営陣が居ることのメリットが大きいと見ています。

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