【今回の質問】

 前号で株式投資は「売却ルール」が重要だとおっしゃいました。一方で、最後に少し触れられた「買いのルール」が気になって仕方ありません。初心者にもわかりやすい方法があれば教えてください。(会社員・29歳)

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」 まず、株式投資で儲けるための大原則を挙げるならば「安く買って、高く売る」ことです。当たり前のように聞こえますが、割安で将来性のある銘柄を見つけ出し、いかにタイミング良く買うことができるか。売りから入るという専門的なテクニックもありますが、とりあえずこの大原則を頭に入れてください。

 そのうえで、決算書を読む知識があれば、割安さや将来性を測る目安となります。また、独自に決算書を読むに至らずとも、決算書をもとに「投資情報」として様々な指標が公開されています。これらもヒントに投資していくのが、「安く買って、高く売る」ことへの近道だと言えるでしょう。

 PBRやPER、EPS、ROEなど、株式投資の世界には様々な指標があります。その中で、私が最初に注目するのはPBR(株価純資産倍率)です。具体的には株価を1株当たりの純資産で割って導き出すもの。(PBR=株価÷1株当たり純資産)

 この数字が低ければ低いほど株価は割安で、1倍以下はお買い得です。しかし、こういう数式が苦手なんだよなあという方も多いと思いますので、この指標の重要性を別の形で説明したいと思います。

◎有望な企業でもPBR15倍なら……

 まずは皆さん、高校や大学受験の時の志望校の合格倍率のことを思い出してみてください。

 例えるなら、PBR1倍は合格倍率1倍ということ。100人の合格枠に100人の応募しかないなら、よほど壊滅的な点数となるか、ほかの要因でもない限り、合格しますよね。

 株でも原則は同じで、PBRが1倍以下なら、その時点で買えば格安であるという目安になります。逆に、PBRが10倍以上なら、合格倍率も10倍以上の難関だと考えてください。それでも儲けを狙おうというのは、相当のリスクを覚悟して、倍率10倍の試験に挑むようなものなのです。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

 例えば、IT業界で存在感を増し続けているクックパッドやカカクコム。いずれも成長性はあるかもしれませんが、現実的なPBRは15倍を超えています。これは純資産という会社のポテンシャルに対して、かなり株価が高くなっている状態。投資のベテランならともかく、初心者がこの?難関?に挑むことを私はお勧めできません。

 ですから、投資を検討する際は、PBRのチェックから始めてほしいと思います。

 その方法もごく簡単で、自ら計算する必要はありません。ネットの投資情報サイトやたいていの証券会社の銘柄紹介サイトなどに最新の数値が掲載されますし、PBRの低い銘柄を順に並べる「PBR低位ランキング」などの情報も、ネット上にはよく公開されています。

◎助っ人だらけのチームの将来性

 でも、公開情報であるPBRを見るだけで、儲かるかどうかの判断ができるなら、みんな儲かってしまいますよね。PBRが低い要因として、企業の先行きに問題があるケースも少なくないのです。だとすれば、いつまで経っても株価の上昇は見込めません。そこで、私が次に注目するのが自己資本比率です。

 これは企業の資産のうち、自己資本がどの程度あるかを示す指標です。自己資本は、純資産や株主資本などの用語で紹介されることもありますが、ほぼ同じ意味だとご理解ください。

 この重要性も、あえて別の事例に置き換えて紹介してみましょうか。例えば、皆さんが応援するプロ野球チームのレギュラーの中に、どれぐらい?生え抜き選手?がいるかを思い浮かべてみてください。クリーンアップもエースも助っ人外国人や他球団からの移籍組というチームと、新人の頃からていねいに育成された選手が主力となっているチーム……。どちらのチームが長期的に安定した好成績を残せると思いますか。

 当然、後者のほうが先行きは有望だと言えますよね。毎年のように違う助っ人がやってきているようなチームの成績は不安定ですし、コストもかかります。一方、生え抜き選手は安定した成績を残しますし、ファンの支持も高いことでしょう。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

 企業の場合も同じく、資産が多くとも負債が大半を占めているというのは?助っ人だらけ?のチームみたいなもの。自己資本比率は、自己資本(純資産、株主資本)÷資産×100という計算で導き出します。これも計算後の数値がPBR同様、すぐに入手できます。

 会計士的な視点で言えば、その数値が50%を超えていれば優良。30%以上あれば合格点と見ていいでしょう。

 株式投資に際しては、まず、PBRで企業の人気と価値を見極め、次に自己資本比率で財務の安定性をチェックしてみてはいかがでしょうか。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

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山田真哉

一般財団法人芸能文化会計財団理事長・公認会計士・税理士。160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』ほか著書多数。最新刊『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』(小学館刊、1365円)も5万部突破!