6月29日に開幕した、世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」(以下、ツール)。7月21日の最終第21ステージに向けて、レースも中盤に入った。

今年が記念すべき第100回大会ということで盛り上がりを見せるツールだが、ヨーロッパのお祭りに騒ぎに比べると日本での報道はイマイチ控えめ。だが、唯一出場している日本人選手の名前をニュースなどで目にした人もいるだろう。チーム ユーロップカー所属の新城幸也(あらしろ・ゆきや)選手、28歳だ。

今年でツール4度目の参戦となる新城選手は、3日に行なわれた第5ステージ(カーニュ・シュル・メール〜マルセイユ/228.5km)で、レース開始直後から、6人で先頭集団を形成。一時はプロトン(メイン集団)に約13分差をつけ、一躍脚光を浴びた(結果、65位)。

1チーム9名で戦うツールは、エース選手を勝たせるためにほかの選手がさまざまな戦略でアシストをする。そのひとつが、プロトンから飛び出す「アタック」で、新城選手は昨年のツールでも第4ステージでアタックを仕掛け、敢闘賞を獲得、日本人初の表彰台に上っている。

今年の全日本自転車競技選手権大会で優勝を飾るなど、日本の自転車レースの第一人者である新城選手とは、いったいどんな選手なのか。現在、国内のJプロツアーに参戦するプロロードレースチーム・宇都宮ブリッツェンの監督で、スポーツ専門番組J−SPORTSのロードレースを解説している栗村修さんに聞いた。

「石垣島出身ということもあるのか、おおらかですね。自転車レースはアクシデントも多いですし、思いどおりにいかないのが普通なので、くよくよしてたらとてもやっていけない。彼のメンタルはすごくプラスに働いています。

あと、持って生まれたフィジカルの強さ。普通の人は、死ぬほど練習したら次の日は動けませんが、彼はひと晩寝たら元に戻ってしまうほど回復が早い。つまり、レースを走りながら調子を上げられるんです」

今年のツールで、新城選手がステージ優勝する可能性はあるのだろうか?

「チームとしてはエースのピエール・ローラン選手の総合優勝狙いをアシストしなければならないし、もうひとり、トマ・ヴォクレール選手のステージ優勝をサポートするのも新城選手の仕事なので、自分の好き勝手には動けません。プロレーサーは、自分の仕事を成し遂げることも、ある意味、価値のあることですからね。おそらく、自由が許されるのは3週間のうち1日か2日あるかどうか。その日に逃げが決まって、逃げ切れるかを考えると、なかなか……」

やはり、厳しいのか。

「ただ、ユーロップカーというチームは今年でスポンサー契約が切れるんです。エースのピエール・ローラン選手も移籍を考えているかもしれないし、新城選手も来年のことは頭にあるだろうから、今年はチームワークが乱れるというか、みんなが個人プレーに走る可能性があります。今チームに尽くしても、変な話、別のチームとの契約を考えれば、『あいつはダメだ』という烙印(らくいん)を押されない範囲で自分の走りをする可能性もありますからね」

これから終盤戦に入り、ますます盛り上がりを見せるツール。日本が誇るアタッカー、新城選手の“逃げ”に注目だ。

(取材・文/頓所直人[GREEN HOUSE])