先に発表された「三本目の矢」こと“成長戦略”の内容をみると、安倍晋三首相は経済のことを理解していないのではないかと大前研一氏は疑っている。その疑惑は深まるばかりで、このままでは来年4月に消費税を上げることも危ういのではないかと指摘している。その理由を、大前氏が解説する。

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 もし安倍首相の功績があるとすれば、人々の心理を変えれば経済が動くということ、すなわち私が著書『心理経済学』(講談社刊)などで提唱してきたことを立証した点だろう。ただし、これまでは一時的に株で儲けた個人投資家が高級品を買っているだけで、実需ベースの消費にはほとんどつながっていない。

 このままでは、おそらく来年4月から消費税を上げることはできないだろう。消費税を上げれば当然、その反動が出て消費が減退するからで、すでに浜田宏一エール大学名誉教授や高橋洋一嘉悦大学教授ら安倍ブレーンのリフレ派学者たちも、消費税増税の延期に言及している。

 だが、消費税増税が延期となれば、増税前の駆け込み需要が消えるので、来年4月を待たずに経済が失速する可能性が高い。つまり、今や消費税は「上げても地獄、上げなくても地獄」なのである。ところが先のG8では異次元金融緩和=為替操作に対する批判が強く、安倍首相は2本目の矢、すなわち財政規律のために消費税を上げると確約させられてしまった。

 玩具のレゴのように、何の定義も脈絡もなく、あちこちから出てきたアイデアをつなげただけの「日本再興戦略」を見ると、やはり安倍首相は経済オンチだと思う。私が知る歴代首相の多くも経済を理解していなかったが、いよいよ安倍政権で日本は進退窮まるかもしれない。

※週刊ポスト2013年7月12日号