上海・浦東にある中国銀行上海本行ビル。浦東のシンボル東方明珠塔の隣 (Photo:©Alt Invest Com)

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 2008年のリーマンショックの直後、中国は「内需拡大による経済成長促進」のため4兆元(約60兆円)の大規模な景気対策事業を敢行し、世界じゅうから高い評価を得た。世界金融危機をアメリカを中心とする「グローバル資本主義の終わり」だと囃し立てたひとたちは、国家が市場を管理する“赤い資本主義”の方が優れているとして、これを(アメリカ中心のワシントンコンセンサスならぬ)“北京コンセンサス”と呼んだ。

 その中国で、金融市場の混乱が続いている。いったいなにが起きているのだろう。

外国人でも簡単に開ける人民元預金口座

 私が中国で銀行口座を開設してみたのは10年ほど前のことだ。その当時の中国経済は破竹の勢いで、多くの専門家は「2008年の北京オリンピックか、遅くとも2010年の上海万博までには人民元は自由化されるだろう」と予想していた。

 周知のように人民元は管理通貨で、アメリカなどから「人為的に為替を安くすることで輸出を不当に有利にしている」ときびしく批判されていた。そのため中国政府は、為替の変動幅を管理しつつも、人民元高を容認せざるを得なくなっていた。すなわち、人民元を持っているだけでドルベースでは必ず儲かることになる。

 そのうえ中国のインフレ率は日本よりもはるかに高いから、当然、預金金利も高くなるはずだ。そう考えると、人民元預金は(ドルベースでは)為替リスクがなく、日本円より金利も高いという、経済学ではあり得ないフリーランチが成立していることになる。投資においてこれほど有利な機会はめったにないから、とりあえず試してみようと思ったのだ。

 オフショア(タックスヘイヴン)を除き、先進国の多くは居住ビザを持たない外国人の銀行口座開設を原則として認めていない(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど移民国家は敷居が低い)。新興国でも同様の規制をするところは多いが、中国は株式市場を外貨(米ドル、香港ドル)建てと人民元建てに分離し、外国人投資家の人民元建て株式取引を認めない一方で、銀行の人民元口座はビザなしでもパスポートのみで自由に開設させている。

 中国の人民元口座の特徴は、アリ地獄型になっていることだ。

 名目上はさまざまな制約がついているものの、外貨から人民元への両替は比較的自由に行なえる。これは中国の経済発展が外資に依存していたためで、外貨の両替ができなければ外資系企業は中国に投資できないし、従業員への賃金も払えない。

 しかしその一方で、人民元を外貨に両替することは原則として禁止されている。貿易などの実需に関しては例外措置が定められているものの、中国国内の人民元をドルや円などの外貨に換えて海外送金するには中央銀行の許可が必要だから、個人には事実上不可能だ(海外送金できない特別な口座で外貨に両替することは可能)。
 こうした規制はおそらくはアジア通貨危機の教訓で、金融不安をきっかけに外国人投資家がいっせいに資金を引き上げ、体制転覆を招いた現実を目の当たりにして、その対策として、中国への投資資金を海外に戻せないようにしてしまえばいい、と考えたのだろう。

 もっとも少額の預金者にとっては、こうした規制はなんら障害にはならない。中国の金融機関は銀聯(Union Pay)という決済システムを使っているが、中国人旅行者の増加にともない、いまでは日本でも銀聯カードで支払ができるし、ATMから現金(日本円)を引き出すことも可能だ。あるいは、香港に行ったついでに深センまで足を延ばし、銀行窓口で人民元を下ろして香港に持ち帰り、銀行や町の両替商でドルや円に両替することも簡単にできる。

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